初デート①
段々と暖かくなってきた。
バンドとしては、音源審査の結果がそろそろ出る大事な時期。
ライブ出演を重ねつつ、待つことしか出来ない日々を送っていた。
そんな中、今日はプライベートで物凄く大事な予定がある。
ほのちゃんとの初デートだ。
付き合ってから、バンド活動では頻繁に会っていた。
しかし、ちゃんとしたデートは出来ていなかったのだ。
この間、ようやく誘うことができ、今日がその当日ということだ。
場所は原宿。
服を見たり、甘いものを食べたりと、王道のデートがしたかったから原宿だ。
僕は待ち合わせの15分前に到着した。
ほのちゃんはまだ来ていないみたいだ。よかった。
しばらくすると、駅の改札から一際可愛い女性が現れた。
ほのちゃんだ。
ほのちゃんはお洒落な柄の青いワンピースを着ている。
いつもと少し印象が違ってて…可愛い。
見惚れていると、ほのちゃんはこちらに気づき、小走りで寄ってきた。
「先輩…!おまたせしました!」
「いやいや全然!」
可愛いと伝えるべきか…伝えるべきだろう。
もう照れくさいとか言っていい歳じゃない。
素直に伝えよう。
「今日も可愛いね」
「あっ…えっと…ありがとうございます…」
ほのちゃんの顔が真っ赤になった。
予想以上に照れている。
こっちまで恥ずかしくなってきてしまった。
「じゃ、じゃあ行こうか!まずはお昼を食べよう…!」
「は…はい!」
僕は予約しておいた店の方へ歩き始めた。
すると、ほのちゃんが何か言いたそうに立ち止まっているではないか。
どうしたのだろう。
「ほのちゃん?」
「あ…あの…」
「どうかした?」
「せ、先輩…」
「ん?」
「…」
小声過ぎて聞き取れなかった。
僕は再びほのちゃんの近くまで歩み寄った。
するとほのちゃんは背伸びをして、僕の耳元でこう言った。
「…手繋ぎたいです」
吐息の様な小さな声だが、確かにそう聞こえた。
耳元でささやかれたことで、破壊力は通常の倍はあっただろう。
僕はほのちゃんの小さな手を握り、再び歩き始めた。
心臓がバクバクしている。
女性とデートした経験はあるのに、初めての様に緊張している自分に気が付いた。
すると、なんということだろう。さらに緊張してくるのだ。
何か話さなければ…!
「今日、お昼イタリアンにしちゃったんだけど、大丈夫だった?」
「…あ…はい!好きです…!」
「そっか…!よかった!」
終わってしまった。
何か話題…
「初デート遅くなっちゃってごめんね?」
なんだその話題…!
自分で言っておいて、すぐに後悔した。
「い…いえ…先輩から誘ってもらえて嬉しかった…です…私もそろそろ誘おうと思ってましたし…」
「そっか…!よかった…!」
さっきからよかったしか言ってないぞ僕!
「あ…あの先輩?」
「ん?」
「いつも通りで良いですよ…?」
「なっ…」
ほのちゃんには敵わない…
「ご…ごめん…なんか緊張しちゃって…」
ほのちゃんはくすりと笑った。
笑顔も可愛い。
「…そんな緊張しないで下さい…私も緊張してたんですけど…先輩に会ったら落ち着いてきました…」
「そ…そっか…そうだよね…!いつも通りにするわ!」
ほのちゃんはまたくすりと笑った。
そんなこんなで、昼食のお店に到着したのだった。
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