第2章

フェス前①

3月、段々と寒さが和らいできた。


僕達は目標であるフェスのオーディションステージ出場に向け、第一歩となる音源審査に応募をした。

結果は4月の中旬以降に出るらしい。


そして、この音源作成・提出と並行して、僕達はライブに何回か出ていた。

経験を積み、音源審査を突破した後のライブ審査に向けての準備だ。


今、出来ることをやらねば。

僕達は充実していた。


とある、ライブまでは…

そのライブは新宿で行われた。


共演者の中にチェリーズがいたのだ。

当日、出演者はお客さんより早く会場に入り、リハーサルをする。


僕はリハーサルに行きたくなくて堪らなかった。

前日からチェリーズのボーカルからすごい量の連絡が来ていたのだ。


そう、実の姉だ。

姉は頭がおかしい。


内容はこんな感じだ。


「お姉ちゃんは愛する弟と再び共演することが出来て幸せ。今から会いたくてたまらない。もしよければ家に泊って、明日お姉ちゃんと一緒に会場に行かないか。」


これだけで済む内容を物凄い長文で送ってきている。

僕は無視をした。


これで会場に行くのが憂鬱な理由が分かってもらえただろう。


そんなことを考えながら、ずーんとした気持ちで電車に乗り、降り、歩いていたら

会場に着いてしまっていた。


僕はライブハウスの重たいドアを開けた。


姉が走って、こっちへ向かってくる。

その奥に僕のバンドメンバーがいるのも見える。

おそらく、姉と喋っていたのだろう。


「愛する弟よ~!!!!」


会場の注目を独り占めしながら、両手を広げた姉は走ってくる。

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