レコーディング①

フェスのオーディションステージ出演を目標としている僕たち。

まずは、3月の応募に向けて、音源を録らなければいけなかった。


とは言っても、どうすればいいのか、僕は全く分からなかった。


しかし、ほのちゃんが、


「全部…任せてください…」


と言っていたので、お言葉に甘えた。


するとある日、ほのちゃんからバンドメンバーに招集がかかった。

場所は、都内のレコーディングスタジオ。


なんと、ほのちゃんの知り合いにレコーディングの知識がある人がいるとのこと。


初めてのレコーディングスタジオにドキドキしていると、そこには見覚えのある顔が待ち受けていた。


「皆さん!お久しぶりです!」


「「「マキちゃん!」」」


そこにいたのは、僕らの初ライブを主宰していた、ほのちゃんの友達のマキちゃんだった。


僕はほっと胸をなでおろし、言った。


「レコーディングの知識がある知り合いってマキちゃんだったのか!」


なんか怖い人だったらどうしようとか思っていたのは秘密だ。

そんなこんなで、再開の挨拶を交わすと、早速レコーディングは始まった。


ボーカル&ギターのほのちゃんは、いつもと全く様子が変わらなかった。


「ふ~…ありがとうございました…」


ギターのあっちゃんは、初めての体験にいつもよりテンションが高かった。


「これ、楽しい~!!」


菜奈さんは冷静かつ、真剣に演奏をしていた。


「どうかしら?」


そして僕だが…


「なんかいつもと違くない?」


菜奈さんが言う。


「ですね~…おーい!ビジン聞こえる~?」


ブース内にあっちゃんの声が響く。

僕は手を挙げ、聞こえてる合図を出す。


「もっと力抜いて、いつも通り!」


そう、僕はめちゃくちゃ緊張していた。

なんだかんだで、かなりのテイク数をかけてしまった。


一度、休憩をすることとなったのだが…


「先輩…どうしたんですか…いつもの良さが出てないですよ?」


ほのちゃんが話しかけてくれた。

良さ…か…


「俺のドラムの良さ…?」


独り言の様に呟いたのだったが、ほのちゃんが答えてくれた。


「先輩のドラムの良さは…他のパートをちゃんと聴いて…寄り添ってくれるところです…」


他のパートか…なるほど!


「ありがとう!」


そうだ…他のパートと合わせた時の、完成形を意識しなければ…!


ほのちゃんのアドバイスもあって、無事、レコーディングは終了したのであった。


「オールOKです!」


マキちゃんの声が響き渡った。


あとは3月の応募が始まり次第、提出するだけだ!

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