バイト先①

ある雨の日、僕は暇だった。


というか、平日はいつも暇だ。

バンド練習は仕事をしている菜奈さんに合わせて、週末が多い。


僕はまだ社会人時代の貯金に余裕があるから、ほのちゃんの様にバイトをしなくても良い。

別に始めても良いのだが、面倒だ。


そんなことを考えていると、ふと、疑問に思った。


「あっちゃんも仕事辞めたって言ってたな…」


あっちゃんがバイトをしているという話を聞いたことがない。

僕と同じ様に貯金を切り崩して生活しているのだろうか…?


すると、まるで僕があっちゃんのことを考えていたことがバレた様に、メッセージが来た。


アオイ「ほのちゃんのバイト先行かない?」


面白そうなイベントだ。

そういえばほのちゃんのバイト先がどこか、聞いたことがない。


僕は即座にYESと答えた。


集合場所は、ほのちゃんのバイト先の最寄り駅だった。


家からわりと近かった。

そういえば前、バイト終わりに家に来たこともあったな…

思い出を振り返っていると、あっちゃんが現れた。


「おまたせ~!」


あっちゃんは相変わらず派手な恰好だった。

金髪に水色のコートを着ており、とてもお洒落だ。


そういえば、僕も赤髪だった…

二人含めて、目立っているんだろうな…


「じゃあ、いこっか!」


あっちゃんについていくと、そこは駅から徒歩5分程の喫茶店だった。

あっちゃんは店を指さし、こう言った。


「ここだよ!」


「おお…随分と雰囲気のある店構えだね…そういえば、ほのちゃんに行くって言ってあるの?」


「言ってないよ!SNSでこれからバイトって言ってたから突撃しようと思って!」


なんと…あっちゃんらしいが…

僕の戸惑いなぞお構いなしに、あっちゃんはドアを開ける!


「いらっしゃいま…えっ…あっちゃんさん…!」


後ろから僕も顔を出す。


「せ、先輩…!」


ほのちゃんのエプロン姿は衝撃的に可愛かった。

普段、カジュアルな格好をしているだけに、ダメージは大きかった。


「…ど、どうしてお二人がここに…」

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