おわりのうた
kei
第1話 最後のふたり
例のウイルスは瞬く間に地球中にひろまって、脱出船すら全滅した。
いつ出られるかもわからないほどの長期間、シェルターに入るようなお金なんて、僕たちにはなかった。
彼女とふたり、この町でなんとか生き延びている。
もう、彼女以外では、生きた状態の人間の姿などみなくなった。
「不謹慎だけどさ。」
頬を赤くした彼女が振り返る。
「私たち、この世界にふたりっきりみたい。」
「不謹慎すぎ。」
ほんとうは気づいている。
恋のせいにはもうしきれないほど、つなぐ指が熱いこと。
少し歩いただけでも、しばらく座らないといけなくなってきたこと。
もう、僕もだめだっていうこと。
風がつめたくて気持ちいい。
ただでさえ細かったのに、折れそうな彼女の熱いからだを抱きしめる。
「好きだよ。」
「わかってる。」
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ぼくたちが最後のふたり つなぐ指の厚さを恋と誤魔化しながら
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