アキ

白川津 中々

◾️

 クソ暑い。


 初霜月の夜長になんだこの暑さはと、つい愚痴る21時。さっさと寝たいが眠れない。止まらぬ汗のハイウェイスターである。


「やむを得ぬ」

 手にしたリモコン、温度を下げてスイッチオン。設定、18度。やり過ぎな気もするが半分ヤケクソ。怒りに身を任せて温暖化に八つ当たり。おかげで風がとても冷たい。これで眠れるぞと思い目を閉じてみると、なんという事だろう。寒い。寒過ぎる。まるでシベリアの極寒が部屋に到来ようだ。いったいなんだこの両極端はとリモコンをみると-71度設定。何故。そんな疑問が吹き飛ぶほどの極寒地獄。いつしか風口からはブリザードが放たれワンルームにオーロラが出現している。これは堪らないとスイッチオフにしようとしたが思い止まる。エアコンを切れば今度はあの暑さが再び到来しクソバカサマーナイトが始まってしまうからである。暑いよりは寒い方がまし。寒さは質量で緩和できる。俺はありったけの布をかき集め着膨れに着膨れ寒さに耐えた。乾燥しきった室内は息をする僅かな動作で唇が切れるような局地でありとても快適に暮らせる状態ではない。しかし寝返り打つたびにうんうん唸るような熱帯夜の中過ごす事を考えると、この異常寒波が大変幸福なように思た。悴む手を掴みながら団子のように丸まり震えるも、「いや、これくらいの方が返って快適」と誰にいうでもなく独りごちる。何時間経ったか、スマートフォンのアラーム。起床時間だ。凍死する前に朝がきてよかった。


 俺は勢いよく飛び出し、凍りついた部屋の中に投げ出されたリモコンを手に取って即座に停止。窓を開けると爽やかな風が吹き込む、見事な秋晴れだった。スマートフォンの天気予報は1日快晴。気温も落ち着くとの事である。


 あぁ、夏は終わったんだな。


 そんな実感に感傷しながら、着替えて出勤、帰宅。その日の夜はもう涼しかった。さようなら夏。さようならあの極寒。さようなら、シベリアン温度の電気代で消えた58万円。短い秋が、貧困と共に始まる。

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アキ 白川津 中々 @taka1212384

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