星の海に君はいない

 僕の好きな人は、とてもじゃないけど僕の手には届かないような素敵な人。


 笑うと小鼻に少し浮かぶ皺も、風に揺れる栗色の髪も、細くしなやかな指も、全てが僕には輝いて見える。


 僕は遠くで見ているだけ。

 決して届かない距離だけど、僕は君のと縁という糸で繋がっていると信じたい。


 僕の想いを同僚たちら『現実も見えない夢物語』と揶揄する。

 そんなことはわかっている。


 あったこともない。

 声も知らない。

 SNSに載せられていることしか、僕は君のことを知らない。


 でも、好きになった。

 好きになってしまった。

 気持ちを抑えることなんてできやしない。


 僕の恋心を直接言えないのなら、君を想い、夜空を見上げて「月が綺麗ですね」と言葉にする。

 届くかもしれないじゃないか。


 お願いだから好きでいさせて。

 君を好きでいさせてください。



 でも、見上げた夜空には月はなく、ただ星の海が広がるだけ。

 僕の想いは届かない。

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