十一夜 聴き込みしニャイト

 メルルーサの街は広いにゃ。貿易中心の街ということもあり、各国から集まった武具屋や鍛冶屋は多いのだが、クリスに合った武器がにゃかにゃか見つからにゃい。

 クリスの手は子どもと言うこともあるが、普通よりも少し小さくて細いに。かと言って、オーダーメイドで作るほどの時間はにゃい。用が済んだら出立してスカラベ山へ向かわねばにゃらにゃい。


 そろそろ、妥協も必要にゃろうか。


「とりあえず昼飯でも食うにゃ」

「そうですね。お腹すきましたにゃ」


 ここは港街。とにゃれば食うべきは⋯⋯魚にゃ。とにゃれば入る店は必然的に。


「『順風満腹亭』ここの魚定食は絶品にゃ」

「テンテが食べ物にお金を使うにゃんて、よっぽどですにゃ?」

「おいおい、俺をケチみたいに言うにゃ」


 店の入口をくぐると店内は活気であふれているにゃ。相変わらずの繁盛っぷりにゃ。


「おや、珍しい顔にゃ」

「まあ!? ノックスじゃないの、いつメルルーサに?」


 店の看板猫のメリノさんと女将のケイトさんにゃ。


「今朝にゃ」

「今回はどれくらい居るんにゃい?」

「用が済んだら明日には出たいにゃ」

「もっとゆっくりしていけばいいのにゃ」

「そうゆうわけにもいかにゃいにゃ」

「そうかい。ところでそっちのちっこいのはアンタの子どもかい?」

「クリスって言うにゃ。ワケあってノックスさんに同行してますにゃ」

「女将さん、この子可愛いにゃ!」

「か、からかわにゃいでほしいにゃ!」

「あはは! アンタたち、お腹空いてんにゃろ? 今日はノックスの好きにゃキンキとさっき届いたばかりのガッチョがおすすめにゃ。にゃにか要望はあるかい?」


 女将はそう言うとまるっと脂ののっていそうにゃキンキを持ち上げて見せてくるにゃ。キンキは値がはるんにゃが、見せられては食欲に抗えにゃいにゃ。


「にゃあ、キンキは煮付けで、ガッチョは揚げてくれにゃ」

「まいどあり! 煮付けは少し時間がかかるにゃ。先にガッチョを揚げるからゆっくり食べるといいにゃ」


 注文が済むと俺たちはメリノさんの案内で席についた。


「飲み物はいつものでいいにゃ?」

「ああ、ミルクふたつにゃ」

「ガハハハ! おいみんな聴いたか? ミルクにゃってよ!?」

「ワハハ! 家に帰ってママのミルクでも飲んで寝かしつけてもらいなにゃよ!」

「ちょっ! ブッチさん、ザックさん!? 飲み過ぎですにゃ!」

「るせーにゃメリノ、てめぇがコイツにミルクでもやんのかにゃ!」

「こんなヤツにやるくらいにゃら俺が直飲みしてぇくれぇにゃ!」

「そいつぁ良いにゃ! おいメリノこっち来いにゃ!」

「きゃあ!」


 こいつぁいけねぇにゃ。やるしかにゃーか⋯⋯。


 ドッカ─────ン!!


「うちの看板猫に手を出すんにゃねーにゃ! ブッ殺すよ!?」


 ああ、そうにゃった。俺の出る幕はにゃーにゃ。


「ちょっ、ちょい待て、お、女将!? にゃんで戦斧にゃんて持ってるにゃ!?」

「ここは食堂にゃ。料理するために決まってるにゃ! テメェら皮剥いで三枚におろしてやるから覚悟しにゃ!? それともぶつ切りが良いにゃ!?」

「ひ、ひいい!! 勘弁してくれにゃ!」

「今後うちの店に出入りしたきゃノックスに謝るんにゃ!!」

「「すいやせんした────にゃっ!」」


 最近土下座される頻度が高いにゃ。


「別にそんにゃのいらにゃいにゃ。ここの美味しい魚が気分よく食べれたらそれでいいにゃ。硬いことは抜きにして、皆が楽しければそれでいいにゃよ」

「なんだいノックス、嬉しいこと言ってくれんじゃにゃーの!」


 バン! そんにゃに強く背中を叩くと痛いにゃ。


「ほら、ガッチョが揚がったよ!」

「待ってましたにゃ!」


 カリッと揚がったガッチョの唐揚げは塩は振ってあるのでレモンをギュッと絞っていただくにゃ。


「ん〜みゃいっ!!」

「ノックスさん、めちゃくちゃ美味しいにゃ! けど、ガッチョってどんにゃ魚にゃんです? ウルメじゃ見かけにゃかったにゃ」

「ウルメでもいるにゃが市場に出回ってにゃいだけにゃ」


 トン。⋯⋯ん?


「これは?」

「メヒカリで出汁をとったラーメンにゃ。ブッチとザックからのお詫びにゃよ」

「よう、若いの。さっきは悪かった! この店の隠れ名物にゃ。俺たちもここが好きで通ってんだ。出禁にされちゃかなわねぇかんな?これで許してくれにゃ⋯⋯面目ねえ」


 匙で一口すすってみる。


「こりゃうみゃい! 俺もこんなことで目くじら立てるつもりはにゃーにゃ。そんにゃことより良い武器屋か鍛冶師を知らにゃーか?」

「にゃんにゃ、あんたらも冒険者にゃか。言っちゃ悪いが軽装だもんで分かんにゃーぜ」

「元々冒険者にゃんて柄じゃにゃーもんで」

「まあ、事情は聞かねぇにゃ。この店の少し先に『ジオジオ』ってパン屋があるにゃ。そこの店主に当たってみにゃ?」

「ジオジオ? わかったにゃ。情報感謝するにゃ」


 その後俺たちはキンキの煮付けに舌鼓をうった。


「女将! このキンキくそうめ──にゃ!」

「バカ! くそは余計にゃよ!」


 そう言って過剰サービスが過ぎる女将は男前にゃ。




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