祭りと忍びよる黒い影

 天授の儀で魔法適性が無いと言われてから、八年の歳月が経った。


 俺はあの日から、ますます剣舞の鍛錬に熱を注いだ。

 そして今日は、この地に村を作ってくれた先祖と、豊穣の神に祈りの剣舞を捧げる祭りが行われている。


 村の広場では、村人たちが狩りで獲った肉なんかを焼いて販売していたり、

 その肉を肴に酒を飲んでいる人たちがいる。

 そんな集まりを松明の明かりが包み、あたりを温かく照らしていた。

 その中心で、俺は剣を握っている。


「ねぇ、レー君。緊張してるでしょ?」

「してないよ」

「うそだね。だって普段より肩に力が入って動きがぎこちない」

「アイラは凄いな。隠し事が出来ないや」

「違うよ。レー君が分かりやすいだけだよ。

それにしてもレー君、いよいよだね。剣舞祭の御役目。

十の頃から“俺も舞える”って言ってたもんね。それから八年経ったね。

けど良かったね!夢叶って」

「うん。ありがとう、アイラ。 十の時から今年は俺がやるってお願いする度に『お前にはまだ早い。もう少し身体が出来てからだ』って言われ続けてきたけど、今年は俺が舞うんだから。ちゃんと見ててよね」

「もちろんよ。レーちゃん」


 今年は、俺が豊穣の神に祈りの剣舞を捧げることになった。


 あたりが暗くなり始め、松明の灯りで周囲が照らされる中、 いざ剣舞を始めようとしたその時——

 轟音と共に、一つの黒い影が現れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る