最後の観測者
天使猫茶/もぐてぃあす
最後の観測者
大きな、大きな戦争があった。
果たして誰と誰が始め、誰が勝ち、誰が負けたのか。
そんなことも分からぬほどに地上は焼き払われ、赤茶けて死んだ地面が広がるばかりになっていた。
そんな大地の上を、なにか人の形をした鈍色の物体が一つだけ動いている。
それは戦争の終末期に作られたロボットである。かつては輝きを放つ銀色をしていたその体は、いまでは見る影もない。
ロボットは時々立ち止まり、なにかを探すような素振りを見せてはまた動き出すということを繰り返していた。
一体どれだけの間そうしていたのだろう。
数年か、数十年か。
あるとき、ふとロボットは動きを止めた。ついに壊れたのだろうか。いや、そうではない。
ロボットはある一点にじっと視線を向けていた。
その先には、赤く死んだはずの大地には、一本のヒマワリが力強く空に顔を向けていた。
「やはり勝ったのは生命でしたね」
ロボットは呟く。
そうしてロボットは、この戦争の勝者を見極めるという役目を見事に果たし終えた。
最後の観測者 天使猫茶/もぐてぃあす @ACT1055
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