第二章:剣術島大会編

第9話:剣術島への誘い

 護衛依頼を終えた俺達、チャンバラセイバーズ。

 帰りは特にランダムエンカウントはなく、ルーキーズポートに帰って来れた。

 報酬をパーティーで三等分して、久しぶりに異界の屋敷へと帰れた。


 「さて、ぐ~たらするか? それとも呪術の本でも読むか?」


 それとも座禅でもして霊力を鍛えるか?

 この間使った水龍符、作って発動するだけでも消耗するんだよな。

 消耗に負けぬよう、霊力を上げねば格好が付かない。


 緑の浴衣姿で寝転がりながら考える。


 「できれば、しばらく休みが欲しい」


 もう、一週間ぐらい屋敷でぐ~たらしていたい。


 「ごっ主人~~♪ 稽古の時間っすよ~~♪」


 明るいチカゲの声が戸をパシンと開け、俺の欲望を砕いた。


 「ああ、着替えるから部屋の外で待っていてくれないか?」

 「いやっす♪ ご主人の体付きを見たいのでお着替えを手伝うっす♪」

 「そこまでだらけてないから、待ていてさい!」


 獲物を狙う獣の目になったチカゲに恐怖を感じた。

 スパッと戸を閉じて呪符で封をする。


 「ご主人~~~! 開けて欲しいっす~~!」

 「しばし待て!」


 チカゲとは好き合ってはいるが、色々と早い。


 俺は急ぎクローゼットを開け、白い稽古着と青い袴を取り出し素早く着替える。

 チカゲの悲しげなオーラを感じたので気毛を終え急いで戸を開けた。


 「ご主人、稽古着姿も決まってるっすよ♪」


 チカゲが明るく笑う、よしよしすまんな。


 「ありがとうな、じゃあ行くか」

 「はいっす♪」


 俺はチカゲに手を引かれ、屋敷の中にある剣道場へと向かった。

 神棚に礼をし、チカゲと正座で向き合いお互いに礼。


 「そう言えば、サミダレさんはどうした?」

 「あの人は、二日酔いで寝てるっすね」

 「うん、まあ龍だから仕方ないな」


 ドラゴン、龍、大蛇、爬虫類の妖怪や魔物って酒飲みが多いらしい。

 まあ、寝ている人は置いておいて稽古だ。


 「それじゃあ、まずは素振りからっすね♪」

 「だな、霊力の鍛錬だ」


 俺達は竹刀を取って立ち上がり、向かい合う。


 「行くっすよ、振り上げると同時に足裏から気を汲み上げるっす♪」

 「おう!」


 竹刀を振り上げ地の気を汲み上げ、振り下ろすと同時に気を全身に循環させる。

 地味だが効く鍛錬だ。


 「基礎こそ真髄っすよ、ご主人! 後、百本!」

 「うおっしゃ!」


 チカゲの指導で俺は素振りを行った。

 俺もチカゲも大の字でぶっ倒れる。


 「うう、久しぶりにやると全身にくるっす!」

 「いや、頑張ろうぜ指南役?」


 俺達は頑張って起き上がる、チカゲは俺の剣術指南役でもあるのだ。


 「次は木刀での素振りと型稽古っす」

 「素振りは大事だからな」

 「そうっす、剣士にとって素振りは一生っす」


 剣士たる者、剣を振るえねばならない。

 木刀での素振りも終えたら型稽古だ。


 「マホロバ妖刀流ようとうりゅう一の太刀っす!」

 「おう、一の太刀・打ち下ろし三連!」


 木刀を顔の横で寝かせて霞の構えから、足を進めて籠手を斬る。

 下がりつつ切り上げ上段に構え、また前に出て面から斬り下ろす。

 俺達の流派の基本の連続技だ。


 「次行くっすよ、二の太刀っす!」

 「二の太刀・足切り三連!」


 続いては、木刀を斜め下の脇に下げる脇構えから足を切るように横薙ぎ!

 歩みを進めて中段から胴を横薙ぎ。

 三発目は、霞の構えから首根元を横薙ぎ。


 「まだまだ行くっすよ、三の太刀っす!」

 「三の太刀・切り返し突き!」


 三本目の型は上段に構えてから進み、左右の面を斬り返しての打ち込み。

 締めは中段からの飛び込み突きだ。


 「ふ~~~! 温まって来たっすね、ご主人♪」

 「次は四本目か? 行けるぞ?」

 「ご主人、防具付けて竹刀で勝負しないっすか?」

 「いや、お前は俺の指南役だよな一応!」


 後二本、基本の型は残っている。


 「じゃあ、型が終わったら試合しましょう♪」


 チカゲが仕事を忘れているので軌道修正を図る。

 一緒に稽古をしていて、時折本当に免許があるのか不安になる。


 「よし、四の太刀・八相四連!」


 木刀を顔の横まで上げて脇を締め八相の構え。

 ここから、小手、突き、面、胴と繰り出して行く。


 「ラスト五本目、行くっすよ~♪」

 「いや、ノリが軽い!」


 最後の基本の型、五の太刀・一刀両断。

 上段の構えから踏み込み、全力で振り下ろす。


 「ふう、締めの一本っすね♪」

 「ああ、じゃあ次は防具を着けて試合だな」


 俺としては抜刀の型の稽古もしたいのだが、チカゲとの約束を守る事にした。

 互いに素早く防具を身に着け、竹刀を構えて向き合う。


 「てりゃ~~~~っす!」

 「ぬお!」


 チカゲの打ち込みを上段受けで凌ぎ、鍔迫り合いになる。

 剛で来るなら柔だ、俺は受け流してチカゲの背後を取りに行く。


 「その手は食わないっすよ♪ 転身っす♪」

 「ちい、小手~~っ!」

 「えりゃっす!」


 くるっと回転したチカゲと向き合い真っ向勝負。

 こちらの小手を弾かれたら、再度互いの竹刀の打ち合いになる。


 「今だ、胴っ!」

 「しまったっす!」


 飛び退きながらチカゲの胴を打ち、一本を取ったのであった。


 「悔しいっす~~!」

 「ふう、ギリギリだったぜ♪」


 俺が一本取ったからと、試合を終わらせる。


 「ご主人、また稽古しましょうね♪」

 「ああ、宜しく頼む」


 道具を片付けて礼をして、俺達は稽古を終えたのであった。


 「まあ♪ 楽しそうな事をされてましたわね♪」


 居間の食卓でサミダレさんが微笑む。


 「サミダレさんも、稽古しましょうっす」

 「そうだな、三人でした方がまた変わるだろう」

 「ええ、我が技の冴えをお見せいたしますわ♪」


 うん、彼女の薙刀とか魔法は見たが他の技が気になる。

 三人で付喪神のおかめさんが作ったうどんを食いながら語り合った。


 翌日、冒険者ギルドに顔を出した俺達。

 今日も今日とて依頼を求めて冒険者が集っている。


 「皆さん、ギルドからのお知らせで~~す♪」


 ミカンさんが受付から出て大きなポスターを広げて壁に貼り付けた。


 「お、何かやるんすかねご主人♪」


 チカゲがポスターに興味をしめす。


 「何々? 集え剣士よ、剣術島けんじゅつじまへ! どんな誘い文句だ?」


 西洋の剣と東洋の刀と細剣が三方から突き合う様が描かれたポスター。


 「ご主人、これは大規模な剣術大会みたいっすよ♪」

 「まあまあ、高額な賞金ですわねえ♪」

 「優勝の副賞は、島の神が打つ聖剣から選べ? 豪勢だな」


 他の冒険者達と並びながらポスターを読む俺達。


 「あ、ヨウタローさん達♪ 参加希望ですか~♪」


 ミカンさんが俺達に目を光らせる。


 「はい、参加希望っす~♪」

 「面白そうな剣が手に入るなら欲しいですわ♪」

 「仲間二人が暴走しないようにするのが俺の仕事だからな、行きますよ」


 乗り気なチカゲ達を無視できず、俺も参加する事にする。


 「それでは、エントリーの手続きはこちらでさせていただきますね♪」


 ミカンさんがニコリと微笑む。

 こうして、俺達は新たなイベントに向かうのであった。

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あやかしチャンバラセイバーズ~半妖怪の若殿様、自分を追放した勇者パーティーよりも楽しく冒険して成り上がる~ ムネミツ @yukinosita

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