第15話 遊び人連続殺人事件⑤

 その後、捜査会議で各報告が行われたが、話題はあることでもちきりだった。


「しかし、本多さんが麻薬なんて見つけてくれるとはね。相変わらず運がいいですね」


 珍しく十橋が本多を褒める。


「ええ、私も同じ立場として鼻が高いわ。でも、小手川さん。被害者は麻薬の売人ということでいいんでしょうか」


 榊原が小手川に尋ねると、


「まあな、でもそのことに関しては俺よりあいつの方が詳しいぞ」


 そう、小手川が言う。


 すると、捜査一課にずかずかと大きな足音が聞こえる。


「ああ、これはこれは小手川警部。いやあ、ここに来るのは久しぶりですな」


 そう言って出てきたのは、身長190cmはあろうかという身長の通りがっしりした体に坊主頭の男だった。人相の悪さも相まってやくざ者のような雰囲気を醸し出している。


「捜査4課の田崎良二巡査部長だ。俺の大学のアメフト部の後輩にあたる」


 そう、小手川が紹介した。


「え、警部ってアメフトするんですか」


 大学でエリートと謳われた小手川警部の意外な経歴に大倉が驚いて聞き返す。


「一番体力がつくと思ってな。まあ、俺はさほど活躍できなかったが、彼は大会で優勝する腕前だ」


「いやいや、あんた、アメフト部のレギュラーをしながら、秀峰大学最難関である法学部の席次はいつもトップクラスでした。その上、俺みたいな馬鹿が警察にいるのは小手川さんの紹介のおかげですから。おっと、話が脱線してしまったな。まあ、金野康夫はおそらく大麻の仲買人だ。いつから始めたのかはわからないが、あの量から考えるに末端価格はあれだけで3000万円。報酬は40万はいっているとみていいでしょう」


「つまり、金野はこれに関連して殺されたとみていいんですかい」


 本多の問いに田崎は


「それは、お宅らが調査することでしょう。俺が口を出すところではない。でも、こう殺人と関連しているとなると、合同捜査が必要でしょう。俺は売り買い先も含めてあちらで捜査するので何かわかったら連絡しますよ」


 田崎はそれだけ言うと帰って行ってしまった。


 その後の捜査一課では何をすべきか、会議が重ねられた。


「とりあえず、あの4人の中に売人がいるとみて間違いないでしょう」


 そう、本多が切り出すが、榊原は


「いや、もしかしたら飛ばし携帯で売人とは連絡を取っていた可能性もあるでしょう。通話記録にそんな会話は残っていませんでしたから。恐らく荒川の店に最近よく来る客が怪しいと思います」


 と、別に真犯人がいる可能性を提案した。


「うむ、その方向に関してはあの田崎という人が頻繁に連絡をくれるでしょうから、心配ないと思います」


 そう、一番若手で大学を卒業したてのの大倉が言うと、あたりがしんと静まり返った。


「あの、大倉君。君はここの4課長のことを知っているかい。坂巻光士郎という人でね。正直、4課の組長だ」


「いや、十橋さん。やくざじゃないんですから。組長なんてことないでしょう」


「いえ、県警の捜査4課は暴力団など、危険な人を相手取るため、警察の中でも特に荒くれ物が多いのよ。そして、その中で一番恐ろしいのがその男。そんな人がうちの一課長と仲がいいとでも?」


「榊原さん、聞いた俺が悪かったです」

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