第14話 遊び人連続殺人事件④

 本多は今アパートの前に立っている。「東海荘」と書かれている家はなんだか若者のわび住まいのような感じがして、本多の昔の時のことを思い出すようだ。


「えーと、203号室ですか」


 本多がチャイムを押すと、中から変な男の声が聞こえてきた。


「はい、何でしょう。家賃の取り立てですか」


「いやあ、そうではなくてですねえ。金野康夫さんが殺されたことについてお話を伺いたいんですよ」


「ふん、あの人のことについてかい。だとしたら聞くことないでしょうに」


 北はそう渋面を作りながら言うと


「あいつはとんでもない人だったよ。いつも金をせびってくるし、正直死んでくれて正解」


 物騒なことを言う北に


「いやいや、さすがにそんなことを仰られることはないでしょう。まあ、いいや。で、昨夜は何をしてらっしゃいましたか」


「ずっと、駅前で清掃するバイトをしていましたよ。仕事仲間が覚えているでしょう」


「そうですかい。では確認しておきます。で、最近金野に変わったことは」


「最近金回りが良くなったらしいですよ。どうも、新しいバイトが功を奏したようで」


「バイトですか?どんなバイトですか」


「いや、それが誰にも教えてくれないんですよ。俺も紹介してもらおうと思ったのに」


「バイトでそんなに金回りが良くなるものと言ったら。まさか、あれはないよな」


 本多は何かにおびえているようだった。


「最近、騒いでましたよ。これを運ぶだけでお前がやってる清掃員より稼げて遊べるって、いったい何をやってるんですかね」


 これはもはや確定事項だ。


 本多は家を飛び出すと、大急ぎで小手川に電話をかけた。


「もしもし、小手川さん。金野の家はもう調べましたか?ああ、所轄が調べてると。少し気になることがあるんですが。もう一度調べさせてください」


「はあ?本多が俺に頼んでくるなんて初めてだな。まあ、お前の観察眼はよく当たる。何だ?」


「それがですね……」


「仮にそうなら大事になる。俺も行くから待っててくれ」


「了解しました」




 金野の自宅に小手川をトップとする10人ほどの捜査官が集まった。


 捜査官たちの前で本多は声を張り上げる。


「いいか、俺たちがやるのは所轄が探してるようなちんけなもんじゃない。隅々までよく探せ。俺が言ったものを見つけたら俺か小手川さんに報告しろ」


 10人ほどの捜査官が部屋のあちこちを探した。すると、捜査員の一人が


「本多巡査部長、このタンスどうやら2重底みたいですよ。奥にスペースがあります」


「そうか、よく見せてみろ」


 本多がこのタンスの奥をよく見てみると。袋のようなものが出てきた。


「ほら、やっぱりあった。小手川さんに報告しよう。大麻が出てきたって」


 そう、本多が捜査員に力強く語ると、その裏で


 「でも俺、あの連中と関わりたくないんだよなあ。」


 本多が弱音を吐く、その脳内にはある末恐ろしい部署があった。

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