遊び人連続殺人事件
第11話 遊び人連続殺人事件①
小手川進は警部である。エリートとして現場に入り、将来を嘱望される警察内の大物として、あまねく難事件の陣頭指揮を執る。それが彼に与えられた職務である。
そんな彼は夜に町の中心部、白洋町の白洋公園で起きた殺人事件の捜査をすることになった。
夜は静かな公園だが、その中でもとりわけ人通りのなく、隅にひっそりたたずんでいるベンチの上に金髪で、派手な洋服を着て、色眼鏡までかけている。どう見ても常人とは思えない格好をした死体が横たわっている。
「えー、被害者は金野康夫で、無職ですね。死亡推定時刻は今日の午後8時から9時。腹を刃物で刺されたことによる失血死ですね」
京極晃巡査部長が死体の状況を説明する。
「うむ、で、凶器の刃物は犯人が持ち去ったと。第一発見者は」
「ええ、今そこのベンチで待たせています」
京極は後ろを振り返り、人を紹介し、小手川は現場の反対側のベンチに座っている第一発見者に会いに行った。
発見者もリーゼントで派手な紫の服を着ていた。被害者と同類なのだろうか。うつむいて小手川が来るのを待っていた。
「えー、貴方のお名前は」
「俺か、俺は豊島洋一郎と言います。近くの工場で働いています」
「被害者との関係は」
「出身高校が一緒の先輩後輩ですよ。金野さんが俺の1つ上で、まあ、高校時代はいろいろ派手にやらかしましたよ。今はさすがに足を洗いましたけどね」
やはり、格好の通り不良であったことに、小手川は自分の勘が当たっていたことを喜びつつ、次の質問をした。
「なぜ、この時間にこんな公園にいたんですか」
「金野さんが金を貸してくれって言うんですよ。また、パチンコで有り金全部溶かして帰りのタクシー代すらないらしいので」
「その割にはそんなにお金を所持していないようですが」
「断る気だったんすよ。俺は足を洗って今はかろうじて定職についているけど。金野さんは未だ無職なんすよ。それなのに、パチンコやら競馬やらで金ばかり借りていて、さすがに俺も自分の生活があるんで断ろうと思って。」
やはり、定職につかない遊び人だったか。しかし、何でこんな公園に呼んだのだろう。カプルも多い公園だが今回の事件で人っ子一人いなくなってしまった。
「はあ、では恨んでいそうな人間は居ますか」
「いやあ、それは分からないですね」
「ほう、そんなにいないんですか」
「いえ、多すぎて絞るのが難しいということです。なんせ、あの人色んなところで嫌われていたから」
被害者はそんなに嫌われるような人だったのか、まああの様子じゃそうかもしれないが、かといって初見で人を判断してしまうほど小手川はおろかではない。
「ほかに被害者に関して何か気になることはありませんか」
「あの人最近臨時収入が入ったらしいんですよ。先輩のことだから何か危ないことに手を出してなければいいんですが」
「臨時収入?どのようなものですか」
「新しい仕事のめどが立ったらしいです。でも、どんなものなのか全く教えてくれなくて」
「まあでも、あいつ親兄弟に絶縁されていますからね。さすがに愛想付かされたらしいです。まあ、手に職着けて帰れば面倒見てくれると踏んだんでしょう」
絶縁されていたのか。それでは相当恨まれていたのだろう。でも、さすがに殺人まで侵されるだろうか。
「まあ、明日彼の実家に行ってみるか」
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