第9話 不良学生殺人事件⑨
それは白骨だったのだ。事態を聞きつけて集まる教師陣もさすがに驚いている。
「この白骨が誰の物なのかは、あえてここではお話しませんけれど、これで理由が分かりました。校長先生、この体育館の外壁は石膏なんですよね」
「ええ、ここは昔屋敷の蔵だったのを改造したらしいので。それが残っています」
校長はそう小手川に話すそして、
「犯人はこの白骨を隠すために石膏を塗った。この塗跡が新しいことが旗谷さんに違和感を持たせたんです」
「でも、白骨を蔵に埋めたとしていましたが、寅井先生は左官屋ではありませんよ」
「果たしてそうでしょうか。石膏を使うのは左官屋だけではありません」
小手川はスマホから写真を検索して見せた。ここには教会の壁画が映っている。
「これは、フレスコ画という表現法です。石膏を先に塗りながら絵を描いていく方法で、海外の壁画にはよく用いられているようです」
その小手川に続いて、斯波がファイルを見せる。
「あんた、白洋美大のころフレスコ画を専攻していたそうじゃないですか。これなら壁にむらなく石膏を塗ることくらいできるでしょう」
すると、寅井は
「ええ、そうです。私は大学時代フレスコ画を書いていました。でも、それが証拠なのですか?石膏を塗るくらい所詮誰でもできますよ。むしろ私に罪をかぶせるための物では」
寅井はなおしらを斬り続ける。すると、小手川は寅井に意外過ぎる質問をした。
「まあ、そうでしょうね。あまり追求しすぎてすみませんでした。大した証拠もなく、ところで私事ですが今甥っ子が来ていて、工作の宿題を手伝えとうるさいのですよ。今犬小屋を作っているらしくて。私こうしたことに疎いので、ペンキの塗り方にコツはありますか?」
寅井は安心したのか答えた。
「まあ、教員の立場から言えば塗るときの向きですね。そう言ったものを塗りつぶすときペンキは上から下に塗るときれいにむらなく塗れますよ。あと、右から塗ると逆より塗りやすいですよ。まあ、これは人によるんですが、後は隙間をなくすことです」
寅井がそこまで言ったところで、小手川が口を挟む。
「そう、あなた今右から左に塗れと仰いましたね」
「え、まあ利き手の問題ですが」
「つまり左では反対だと言うんですね」
寅井は今で気づいていないようだ。そこに本多が資料を見せる。
「どうやら、この壁の漆喰鑑定によると、左から塗られたものだそうです。つまり左から塗ることが自然。つまり左利きの人物なんですよ」
寅井もようやく小手川の言いたい意味が分かったらしい。
「あなた左利きでしょう。左手でペンを持っているようですから」
寅井は慌て始める。ここまでバレていたとは
「そして、どうして壁をまた塗る必要があったのか。それはあなたがこの白骨の事件の犯人だったからですよ」
小手川は寅井に厳しい指摘を浴びせる。そして、寅井は……
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