第6話 不良学生殺人事件⑥

「しかし、困りましたね。容疑者全員にアリバイがないなんて」


 小手川もさすがに頭を悩ませるようだ。ただ、この手の場合容疑者に完璧なアリバイがあったほうが疑わしいところだ。その中で疑わしいのを除けばいいのだから、でもこれでは外部からの犯行すら疑わざるを得ない。まあ、外部なら教室に死体を配置することは出来ないのだが。


 そこに斯波が割って入る。


「しかし、もし本多君が考えたようなら、誰でも犯行は可能でしょう。刺殺しておいて、後で死体を運べばいいんですから」


 斯波の意見は正鵠を得ているが、この期に及んであの地獄の取り調べを行うわけにもいかない。それに事件の早期解決を求める声が上からもかかっているらしい。まあ、どんな動機があるにせよ、教師の殺人は文部科学のあたりでは都合が悪いのかもしれない。


「しかし、それでも死体をどこに隠しておくんです?学校ではできるだけ早く死体を隠すべきでしょう。誰に見つかるか分かりませんから」


 小手川がそんなことを言っていると、榊原が息を切らせながら走って来た。


「小手川さん、名虎高校で数年前に起きた失踪事件のファイルを持ってきました。」


 そう言って、小手川に茶色の薄いファイルを手渡す。小手川はそれを取ると読み始めた。


「失踪したのは名虎高校三年の上木智美さん。ある日突然いなくなっているな」


「所轄警察では、受験ノイローゼによる失踪だと考えられているそうです」


 横から覗き込んだ斯波がそう言う。


「まあ、日本で起きている行方不明の数じゃ、そうなるんでしょうが。今回のことと何か関係でもあるんでしょうか。一応頭の片隅に入れておきましょう」


 小手川はそういって榊原の報告文書から目を離した。これとどういう関係があるのだろうか?すると、山名がやって来て。


「皆さんついに事件現場が分かりました。ようやくノミノール反応が出ました」


 山名はそういうと捜査班にそこの画像を見せた。


「あ、ここは……」


 小手川は意外な場所であったことに驚きもせず、そして、


「確かに、違和感があるな」


 その時、小手川の頭にあるひらめきが出た。そのあとすぐに事件のファイルを見てみる。


 そして、


「皆、もう一度全員で名虎高校に行こう。調べたいことがある」


 そうして、小手川一行は名虎高校に向かった。その道中混乱する四人に小手川は自分の推理を話した。その反応は


「まあ、小手川君の言うことならそうだろうが、何より証拠がないだろう」


 という山名の一言に無情にも終わった。


「だから、捜査するんですよ」


 小手川はその事件現場に向かっていった。その途中で旗谷を連れてきて。


「用務員さん。ここってもしかして……」


 小手川の質問に旗谷は驚いたようにうなずき


「ああ、よく気づかれましたね。ここはそうなんですよ。昔の卒業生が作ったんです」


 この瞬間小手川は自分の推理が当たっていたと分かり、少し嬉しくなったが気分を入れ直して、次の捜査に移った。その前に小手川は


「山名さん。あなた科捜研に伝手ありましたよね」


「まあ、一応な」


「少し頼みたいことがあるんですが」


 その後も捜査は進んでいった。そして、遂に真相の直前までたどり着いた。

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