第4話 不良学生殺人事件④
その後、職員室で新崎を絞っていたという、藤堂重文に聴取することにした。
藤堂は眼鏡をかけた長身の40代ほどの男だった。
「学年主任の藤堂重文です。名虎高校で数学を教えています」
藤堂は額面通りのお辞儀と名刺を渡す。
「事件当時、あなたが新崎さんを居残りさせていたというのは本当ですか?」
「最近成績の悪い生徒を順に呼び出していただけですよ。なんせ来年は受験ですからね」
藤堂にとって事情聴取は時間の無駄なのだろう。藤堂は右手でメモを取りながら答える。
「現場は化学準備室です。鍵を持ちだせる人は」
小手川は椅子の上の藤堂に詰め寄って聞く。
「私は知りませんよ、それなら化学室の主に聞いてみては?根津先生」
すると、後ろから大きな物体が近づいてきた。
「おいおい、藤堂先生、私を疑うんですか?」
小手川が振り返ると、後ろに白衣を着た太った男が立っていた。自分が犯人扱いされていると思ったのか苦笑している。
「化学教師の根津英典です。刑事さん。事件のことは聞きました。新崎君はいい生徒でした」
「事件現場の化学準備室の鍵は貴方が持っているんですよね」
「ええ、一つ持っています」
根津はそう鍵を弄びながら答えたが、あくまでも自分ではないで通そうとしている。
「合鍵ならありませんよ。場所柄そうそう自由に入られては困るので」
化学室という性質上そうそう生徒が入るわけもあるまい。
「じゃあ、あなたが犯人じゃないですか」
本多がそう短絡的に決めつけて言おうとしたのを小手川が止める。
「私が犯人だと言いたいかもしれませんが、私は犯人ではありませんよ。あの時間私は打ち合わせしていましたから」
根津は自信たっぷりに言う。
「本多、裏を取ってくれ」
小手川は本多にそう命ずる。
「では、あの部屋の鍵はどうしていましたか」
すると、根津は小手川を自分の机に案内すると、その側面にネオジム磁石が引っ付いていてそこに鍵がかかっていたことを見せる。
「見てください。鍵は誰でも取り出せました。別に他の先生でも取り出せたんです」
勝手に入られたくないのに、こんな管理体制でいいのかどうかは、喉の奥にしまっておくとして、小手川は根津の発言の妙なところを指摘する。
「先生?生徒ではないんですか?」
「ええ、私は六限の授業の後、すぐにホームルームに向かいました。そのままここにいたので。その間ずっとカギは持っていました。しかも、今の今まで生徒は新沢君の後は来ていないそうですから」
確かに、じゃあ今のところアリバイのない教師が犯人ということか。
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