みち

 長年住んでいる地域であっても、今まで一度も通った事の無い道は意外にあるものだ。私の家の近所にある細い路地もそのひとつだ。だが、覗いた事はある。

 ある深夜、通りがけに不意に件の路地の奥から子供の笑う声が聞こえたのだ。覗くと五、六人の子供達が大縄跳びをして遊んでいた。

 子供が遊ぶような時間じゃないし、この狭い路地に縄跳びができるスペースがあるのもおかしい。私は首を傾げた。


 おはいんなさい。

 さあどうぞ。


 子供達は歌って飛び跳ねながら一斉にこちらを向く。皆、同じ顔をしていた。私の顔だった。


 私は今もまだあの路地に足を踏み入れる気にはならない。

 だから道がどこに繋がっているのかは未だ知らない。

 そう……今は、まだ。

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