第六話 豊作
豊作
「アイリ姉ちゃん!」
ソアラが泣きそうな顔で私に抱き着いて来る。仕方なく頭を撫でる
「よしよし、大丈夫だった?」
「うん!それよりあの蜘蛛は……」
ソアラは私の背で倒れてる蜘蛛を見やる
ちなみに私は蜘蛛が嫌いなのでなるべく見ないようにしている。
「多分焼け焦げて死んでるはずよ」
「ほんとだー!すごいよアイリ姉ちゃん!」
「おい!」
デイル?……そういえばあと少し遅ければ殺されてたかもしれないのよね……そう思うとぞっとするわね
「どうしたの?」
こういうタイプの奴は助けてやったみたいな反応すると絶対怒るからあまり触れないでおこうっと
「すまなかった!」
「えっ!?なに?頭でも打ったの?」
デイルが突然地面にひれ伏せたことに私は驚いた。
「デイル……」
「今までの非礼を詫びさせてくれ。あんたは村だけじゃなく俺の命も救ってくれた!ごめん……おれ……人間だからってあんたのことずっと見下してた。でもようやく分かったよ、人間にもいいやつがいるってことが!」
デイルはそれからも私に謝り続けた。でも、ほんとに謝るべきは私なのに……どうしよう今言っちゃおうかな。でも、それで幻滅されてもちょっと嫌だな……うーん困ったわね
「ま、まあ私はそんなに気にしてないからデイルもあんまり思いつめないでね」
「ああ、分かった…」
「それにしてもこの死蜘蛛を持ち帰ればかなりの成果になりますね。こう見えて死蜘蛛は結構美味しいんですよ」
カーニスがでかい蜘蛛に近づき解説を始める
蜘蛛を食べる!?信じられないわね……私は絶対食べないわよ
8
「お…おいしい……」
不覚だ……見た目はホルモンみたいだから抵抗なく口に運べたがまさかここまで美味しいとは
「ふぅ……アイリ様のお口に合いよかったです。是非ほかの料理も食べてください」
この村一の料理人ブルドーがそういってお辞儀をする
「まさかあの蜘蛛がこんなプルンプルンになるなんて想像もしなかったわ」
そういってもう一口と私は蜘蛛の肉をとる
「はい、死蜘蛛はなかなかお目にかかれないレアな魔物でその味もかなりのものなんです」
ふーん、死蜘蛛っていうんだ。ずいぶん物騒な名前ね
ソアラやデイルたちも子供のように肉を口いっぱいに詰めていた
「それにしてもこうやってみんなで囲んで食事をするのはいつぶりだろう……」
いつもお祖母ちゃんと二人きりだからなつかしくかんじるなーもうすぐ3年か……
「アイリ姉ちゃんどうしたの?元気なさそうだけど……もしかしておいしくない?」
「ナナ……?じゃなくてソアラか。ううん別に何でもないよ」
ソアラが心配そうな顔で見つめてくる
危ない危ない、どうしたんだ私は……疲れてるのかな。
「そういえば、ナナはどうしたの?さっきから全然しゃべらないけど」
「えっ?ナナ?……ああ、ナナは今寝てるのよ」
村に返ってナナはすぐにアップデートのためスリープモードに入った
あれから2時間くらい経つけどどれくらいかかるのかな?聞いておけばよかったな
「ナナって寝れるんだ!?どうやって寝てるのかな?」
それは確かに気になるかも。
「アイリ殿よ……森での成果はどうでしたかな?」
食事を食べ終えたアーガストがやってくる
「予想以上の収穫だったわ」
実は、あの狼や狼人間を吸収した際にそいつらが持つ特性を私も獲得していたのよ。
例えば――念環っていう魔力と使って思念を伝える力とか暗視とかとかね。まあ念環については同族限定みたいだから私と同じ人間にしか使えないらしい。そういえばまだ人にあったことないなぁ……できれば同じ日本人がいいなぁ
「それはよかった。それと、アイリ殿に大事な話があるのだが少しよろしいかな?」
大事な話?
「別にいいけど」
「ここではあれなのでわしの家でも構いませんかな」
なぜかすごい嫌な予感がするんだけど……いかなくちゃだめだよね
「わかったわ……」
私は重たい足を何とか動かし村長宅へと歩き出す
「それで話って何よ、またなんかトラブルがあったとか言わないわよね。もう疲れたから面倒ごとはごめんなんだけど」
私は先手を打った。これなら多少の面倒ごとならやっぱ大丈夫ってなるはずだ。
しかし私の策はあっけなく崩れ去った
「実はドゥームから連絡があってのう、5日後ほどでこちらにドゥームの部下がアイリ殿を捕まえに来るそうだ」
もういや……なんでそんなに私を狙うのよ。……もしかして……いや、そんなわけないか
「それで私に逃げろって言いたいわけ?それなら遠慮なく……」
「その部下はなかなかの傍若無人で気に入らない者がおれば平気で人を殺すやつなのだ。わしも、一応はドゥームの部下だったから面識はあるがなかなかの強さであったな。おそらくあの死蜘蛛なら簡単に倒して見せたであろう」
なるほど、つまり私に戦えと……ようやく人に合えるっていうのに何で性格の悪い奴しかいないのよ。もしかしてこの世界の人間てこんな奴ばっかなんじゃ……
「戦う以外の選択肢はないの?話し合いとかさ」
そうよ、人なんだから話し合えばきっと分かり合えるはず
「残念じゃがやつは命令には忠実でな、必ずアイリ殿を捕まえるであろう。なので、アイリ殿にはその部下どもを倒してほしい」
結局そうなるのか
「でも、勝てるか分からないわよ、相手の実力も分からないわけだし」
「安心してくだされアイリ殿。我々ももちろん戦います……しかし今ある武器と防具ではいささか心許なくてな」
嫌な予感が……
「実はここから少し離れたところに洞窟があるのです、ダンジョンとも呼ばれています。そのダンジョンには鉱石は無論魔鉱石なども眠っておる」
「つまり、装備を整えるために取ってきて欲しいと……」
嫌なんだけど、あそこってあのデカい蜘蛛がいるところよね!死んでも行かないからね!
「さすがはアイリ殿話が早くて助かるのう。だが、1人では不安であろうからソアラ達も連れて行って構わない。」
「私は絶対……」
「やった!行っていいのー!?」
突然扉を開けてソアラが入ってくる
「ちょっとソアラ私はまだ……」
「いい心構えじゃ、あのダンジョンを攻略できればお前も更に強くなるだろう」
だから私は行かないわよ?そんな気味の悪いところ
「アイリ姉ちゃんいつ行く?今からでもいいよ!」
何でそんなに元気なのよ……っていうか今夜ってこと忘れてない?
「少し……考えさせて」
私はそう言い残し部屋を出る
あの蜘蛛を吸収すれば確かに強くなれる……けど蜘蛛なんてできるなら見たくもないし
「お姉ちゃんなら大丈夫ですよ!私もついてますから」
不意にポケットから声が聞こえて私は安堵する
「よかった……このまま目覚めないんじゃないかと思った」
「すみません……ですが無事にアップデート出来ましたよ」
「そっか……ちなみになんだけどさっきの話聞いてたの?」
アップデートも気になるが今は蜘蛛の洞窟へ行くかどうかを決めなくちゃいけない
「はい、スリープモード中でも意識はありました。ダンジョンに赴き功績を採取するということですよね?それでしたら行くべきかと思います」
ナナならそういうと思ったわ。やっぱり行くしかないのかな……でも蜘蛛怖いしなー
「ですが、ソアラさんはかなりのやる気でしたのであのままではお姉ちゃんが来なくてもダンジョンに行くと思います……」
うっ、そうなんだよなー……ソアラたちだけであの蜘蛛のところへ行けば無事では済まない気がするのよね
「はぁー、仕方ない。私も覚悟を決めて行くしかないか……すごく嫌だけど」
「大丈夫ですお姉ちゃん!アップデートにより新しい特性を獲得しましたので私も役に立てるかと」
私たちは気が付けば村の端まで歩いてきていた
「ちなみに何が変わったの?蜘蛛を消せる力とかないの?」
私は適当な場所を見つけて座り都合のいい能力を期待する
「すみません……そのような力はないのですが、便利な力が手に入りました。例えば吸収した物を保存できる収納や収納した物を加工する力や仲間になった人と思念を送れる念話……」
ナナは色々出来るようになったことを一つ一つ説明してくれた
どれもこれも確かに便利な力だけど蜘蛛との戦闘に向いてる能力が一つもなかったな……
せめて、魔物を簡単に倒せそうな力が目覚めてくれたら私も少しは行こう!って気持ちになれたのに
「まあでも、やるしかないわね」
私が行かなきゃソアラが死ぬかもしれない……そう思うと重い腰も軽くなってくる
「はい、頑張りましょう」
「君に挽回のチャンスを与えようではないか」
私はそう言い豪奢な椅子に座り、足を組み直す
「は!この私に今一度チャンスをお与え頂いたこと感謝いたします!ドゥーム様!」
灰色のドレッドヘアーが特徴の男――カロンは私に跪く
「本来なら私はミスしたものは決して許さない……しかし、カロンよ……君は私に取って大切な戦力、そう簡単に切り捨てるわけにもいかない――だから期待していますよ、君の活躍に」
本当に期待していますよ……あなた方がいい餌になることをね
「……それで今回の任務なのだが、例の村は知っていますね?」
「はい、召喚を行っている亜人の村……のことですね。」
「ええ、その村に赴き私が召喚した人間の女を連れてくる――それが今回の君の任務だ」
あの異世界人は感じ取れる魔力こそ微弱だったが異世界人は例外なくスキルを発動する
アーガストの報告でもそれらしきものは確認できた……あとは彼女を支配するだけ
「お任せよ!召喚されたばかりの異世界人ほど御し易いものはありませんからな」
「それと、銀髪の亜人も連れてきなさい。あの亜人の少女には計り知れない何かを感じるのです。きっと私の良いコマになりますよ クックックっ」
あんな亜人が村にいたとは全くの盲点でしたね。この私を前に一切怯まないとは……全く、面白くなってきましたね
「では、準備が出来次第すぐに捕まえて参ります」
カロンは一礼して私の部屋を出ていく
さーて、これでかなりの駒が揃ったことですし、もう少しで私の目的も果たせそうですね
マシュー……必ずお前を殺して見せますのでそして……
私が召喚されてから今日でちょうど1週間が経つ。村では多くの亜人がせっせと忙しそうに働いている
ある人は木を集めてきたり、ある人は地面を掘ったりと実に忙しそうに見える……だがみんなどこか楽しそうな顔をしている
ナナの新たな力で木材を加工したり、複製したりさらには私の世界の情報や技術を検索してインフラなどを整えようと盛り上がっているのだ
かく言う私はソアラの特訓をぼーっと眺めてるだけだ
今日も平和だなぁ、ずっとこうしてたいなぁ
「アイリ殿よ少しいいかな、ダンジョンに向かう前に渡したいものがあるんじゃ」
後ろからやってきたアーガストが私を現実に引き戻す
そう……今日はついに蜘蛛の洞窟へ行く日なのだ
「行かなきゃダメ?」
「きっと気に入ってくれると思うのだが……」
はあ……仕方ない、期待はしてないけど行くか
「光の聖人を知っておるか?」
アーガストの家に着くといきなりそんなことを言い出した
「ひかりの……せいじん?」
光の聖人ってことかな、全然知らないんだけど
「200年前に存在した7人の聖人の1人で、光に選ばれた人間なのじゃ」
「ふーん、それがどうかしたの?」
話の意図がわからないんだけど
「わしらの国……亜人王国はその光の聖人様……ホノカ様によって作られたのじゃよ」
ほのか?どこかで聞いたような
前にもそんなこと言ってたような?
「そして……これはかつてホノカ様が着られていた魔法衣じゃ」
アーガストはそう言って私に服を渡す
私は渡された服を広げてみる……
「デザインは悪くないわね」
青と白を基調としローブの重厚さと、ドレスのような優美なラインが同居し、戦場に立ちながらもどこか神聖な気配を纏っている
気に入ったかも
「これもらっていいの?」
すごく大事なもののような気がする
……というか、なんでホノカって人の服をこの人は持ってるのよ……って気にしても仕方ないか
「もちろんじゃ……アイリ殿を見ていると何故か……いや、何でもない。その服は特別な効果があって身につけた者は高い魔法耐性、物理耐性をえるのじゃ」
……?何言いかけたんだろ?
それにしてもこの服をタダでくれるのはありがたいな
「そう、じゃあありがたく貰ってくね」
私は早速もらった服を着てみることに
「いいんじゃない……まあ制服の上に来てるから違和感はあるけど」
早速この服をソアラとナナに見せてあげないと……
「ねぇ、そんなにまじまじと見ないでほしんだけど……」
そんなに私が綺麗なのかアーガストはじっと私を見ていた。
「おぉ、すまぬ……あまりに似合っておったもので。それではわしはそろそろ行くかの。ダンジョンにはくれぐれも気を付けてるのじゃぞ」
そういってアーガストは去っていった。なんだったのよ……
「お姉ちゃん!こんな所にいたのですね」
「アイリ様こんな所にいらしたのですね」
現れたのはナナを片手に持ったシールだ
そういえばシールとナナは一緒にいたんだっけか
「ナナ!どうしたの?」
「もうすぐ行く時間なので呼びに来ました。……それよりもその服装……凄く似合っていますよ。もしかして村長様から頂いたのですか?」
「そうだけど……よくわかったわね」
「アイリ様どうぞ」
シールは大事そうにナナを私に渡してくれる
「ありがとう」
「そろそろダンジョンに行かれるお時間ですよね。どうかご無事で帰ってきてください……あのダンジョンには死蜘蛛の女王が住み着いているはずです。もし遭遇しましたらすぐに撤退することをお勧めします。幻獣を倒したアイリ様ならあるいは大丈夫かもしれませんが並みの生物では歯が立ちませんと聞きますので」
そんな情報行く前に言わないでよ!余計に行きたくなくなったんだけど
「ご心配ありがとうございますシール様、ですがアイリ様は負けません!」
ナナが私の代わりに応えてくれるが一体その自信はどこから来るんだよ
「それじゃあ行ってくるよ」
鬱蒼とした森の中を歩く私たち。
かれこれ1時間以上も歩いているがいっこうにダンジョンにつかない
「ねぇ、本当にこの道であってるの?」
私は内心喜んだ――このまま着かなければダンジョンに入ることも無い
「大丈夫だよアイリ姉ちゃん!もうそろそろで着くと思う」
何を根拠に言っているのか分からないが、どうやら地獄につくのはそう遠く無いらしい
「そういえば、2人は本当に着いてきてよかったの?人数が多い方が私も嬉しいんだけどさ」
私は振り向き私たちについて来ているデイルとカーニスを見ていう
「1週間前の俺とは違うんだ!次はあんなヘマしねぇから大丈夫だ」
「私も経験を積むためって理由もありますが何より少しでもアイリ様の助けになればと思ったものですから」
頼もしいような気もするけど、以前蜘蛛に殺されかけてるから不安でしかない
まあ、それでもいないよりはマシか。
「お姉ちゃん!気を付けてください、死蜘蛛の魔力反応を3つ感知しました」
ってことはダンジョンは近いってことか……
「アイリ姉ちゃんここは任せてよ!」
「そうだ、俺たちに任せてくれ」
心配だったがナナも大丈夫というので見届けることにする
キシャーッッと声を上げて蜘蛛が私たちを襲う
蜘蛛は全部で三体、ちょうど一人一体を相手できるからちょうどいいわね
襲い掛かかる死蜘蛛をソアラは光を纏った剣で一刀両断してしまう。
デイルも素早い動きで背後に回り難なく仕留めてしまう……
「う……そ……?」
あの時と別人じゃん!?どういうこと、そんな一週間足らずでこんなに変われるもんなの!?
「ウオータープリズン!――アイスランス!」
二人に続きカーニスも蜘蛛を圧倒する
水の檻に蜘蛛を閉じ込め氷の槍で串刺しにする
「よっしゃ!これで借りは消したぜ!蜘蛛野郎ども」
デイルはガッツポーズを決め喜ぶ
「アイリ姉ちゃん!私も強くなったよ!」
ほめてと言わんばかりに私に近づいて来る
「喜ぶのは早いと思いますよ……ダンジョンには少なく見積もっても100は優に超える死蜘蛛がいるはずです。今回は一体に集中できたので苦も無く勝てましたが本来死蜘蛛は集団で行動しますのでそれを忘れてはいけませんよ」
カーニスは真面目だなー。こういう時くらい素直に喜べばいいのに
「とか言ってお前のもあの死蜘蛛に勝てて嬉しいくせに」
「なっ!別に嬉しくなんかないですよ!あれくらい勝てて当然ですので」
そういってカーニスはそっぽを向く
これなら私が戦わなくてもソアラたちがいれば鉱石とかを採取できるんじゃ?
ちょっと希望が見えてきたわ!
「それじゃ、この調子でさっさとダンジョンに入って取るもん取って帰るわよ!」
「ああ、もちろんだぜ。蜘蛛なんて全員ぶった切ってやるよ」
頼もしくなった仲間を連れて私は蜘蛛の洞窟へと向かう
「これが……ダンジョン?」
私の目の前には大きな洞窟がある
入り口の高さは軽く3mは超えてるわね
奥も暗くて全然見えな……くもないわね
これも暗視の効果なのかな……
「でかいね!」
「これがダンジョンってやつか……すげー魔物の気配がするぜ」
「日が暮れるまでには戻りたいので急ぎましょうか皆さん」
洞窟の中は森の外と違いひんやりしている
「すこし薄気味悪いわね」
思ったよりも静かだった
もっと魔物がたくさん襲いかかってくると思っていたけど……
「アイリ姉ちゃん!あれ見て!」
ソアラが何かを見つけたらしく指をさす
「なにあれ…?くらげ?」
前方にくらげのような生き物が中を漂っていた……しかもちょっと光ってる気が……
「あれは星クラゲという魔物です。ダンジョンではよく見られる魔物で、誰かを襲うことはないと聞いた事があります」
さすがカーニス、何でも知ってるわね
「お姉ちゃん!あれを吸収すればあの星クラゲの特性が手に入りますよ!」
少し興奮気味で話すナナ。
「そ…そうだけど、あのクラゲの特性って大して使えないんじゃ……」
「そんな事ないです!すごく便利な特性を持ってますよ」
何だろう、ナナがここまで言うなんてよっぽどすごい力があるのかな……
まあ考えても仕方ないしやってみるか
「カーニス、あのクラゲ倒してくれる?」
もちろん倒すのは私じゃないけどね
だって、ブヨブヨして気持ち悪いんだもん
「お任せください……アクアスラッシュ!」
カーニスのて手から水の刃が勢いよく放たれ、クラゲを真っ二つにしてしまう
「やるじゃんかよ!」
そう言ってデイルはカーニスの肩に腕をまわす
「僕だってアーガストから魔法の稽古をつけてもらってますからね。おかげでこの1週間驚くくらい魔力量が上がりましたよ」
そのセリフを聞いて私は仲間の項目を確認する
やっぱりだ!
デイルやカーニス、その他数名の名前が書いてある
どうりで強くなってるわけだ
ちなみに3人のステータスは――
ソアラ=エルセルン
lv6
体力194 魔力142 筋力205 俊敏231 頑強176 知力101 器用93 技巧90 精神126 跳躍171 魅力150 運気154
デイル
lv4
体力140 魔力68 筋力141 俊敏130 頑強104 知力76 器用40 技巧43 精神61 跳躍89 魅力57 運気21
カーニス
lv4
体力102 魔力140 筋力35 俊敏57 頑強73 知力130 器用78 技巧53 精神70 跳躍89 魅力52 運気54
「……吸収及び解析が完了しました。これにより星クラゲの特性【浮遊】【発光】を獲得しました」
そういうとナナはふわりと宙に浮かびあがる
「もしかして、飛べるの?」
「はい、これで自由に移動できます。まだ速度は遅いですけど」
ナナは私の周りをクルクルと周り楽しそうにする
そうだよね……動けないって辛いよね
「すごーい!ナナが飛んでる!」
ソアラはナナと追いかけっこをして戯れている
「まさかと思ってましたがアイリ様……あなたは倒した魔物の力を奪う事ができるのですか?!」
カーニスが信じられないものを見るかのように私を見ている
まあそうよね……魔物の力を使えるなんて普通おかしいもんね
ちなみにだが私も浮けるには浮けるのだが、スカート履いてるから浮く訳にはいかない
あとでこっそり浮いてみよ
「何そんな驚いてんだよカーニス!幻獣倒したやつなんだぜ!それくらいできてもおかしくないだろ」
デイルはカーニスと違い楽観的だ
「そ……そうですね……アイリ様は異世界人。唯一無二の力――スキルを持っていてもおかしくはないですね」
なんか勝手に納得してくれたけど、まあいいか
ちなみに余談だけど、この世界には大まかにだが魔法と特性、耐性そしてスキルという特別な力があるらしい
魔法は体内にある魔力を使い、様々な現象を起こす事――具体的には火を起こしたり、さっきみたいに水を飛ばしたり……かな
魔法には適性があって、適性のあるものは他の属性の魔法よりも伸び代があり、使い勝手もいいらしい
特性は人や魔物が生まれつけ持っていたり、努力して身につけたりする事ができる特殊な力で、さっきの星クラゲで例えるなら【浮遊】や【発光】がそうなるらしいわね
他にもある種族だけが使えるものだったりと様々なものがあるらしい
耐性はそのまんまね。
炎に強かったり、毒や麻痺に強かったりする……要は免疫みたいなものね
最後にスキルだけど……これは魔法や特性とは違い同じスキルは一つしか存在できないらしい。つまりナナや私のスキルは私が死ぬまでこのスキルを持つ人は現れないって事
そしてスキルというのは法則に縛られない超常の力と言われている。
魔法とは似て非なるものってことかな
まあ、全部ナナから聞いた事だから私は正直全然理解できてないんだけど
他にも不思議な力がいくつかあるらしいけどまあいずれ分かるでしょ
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