私のスマホが万能すぎる!

ひきこもり帝シキ

第一話 異世界召喚!?

異世界召喚!?

プロローグ


 「俺は、必ずここでお前を止める!ルゼラフィード!」

 青年は、雷鳴轟く剣を一人の男に向けて言い放つ

 あたり一帯に雷鳴が轟き、青年の持つ剣の先には幾重もの翼をはためかせ宙に浮いている中世的な顔の男が無表情に青年を見つめている

 「シュウ!私も…まだ…戦える……から」

 観客席から一人の少女が剣を支えに立ち上がり叫ぶ

 しかしすぐに支えられなくなり倒れそうになる……が気づけば一人の女性に支えられていた

 「大人しくしてなさいな。先の戦いでもう戦える状態じゃないでしょう? それに私たちが加勢したところでじゃまになるだけよ」

 妖艶なオーラを纏う長い耳が特徴の女性はあきれ気味に言う

 「そんなこと分かってる…けど…」

 それでも助けに行きたい衝動が抑えられない少女

 何とか助けになれないか自称IQ5000の頭を回転させる

 相棒の精霊は眠りについて動けないし、自身のマナも空っぽ

 情けない自分に悔しさを通り越しあきれてしまう少女。そんな心中を察したのか

 「大丈夫よ。ここにいる6人みんな同じ気持ちだから。でも、シュウが言ったでしょ。これは勝利するための敗北だ!ってね。だから、ホノカもシュウの最後の戦いをちゃんと見届けてあげて」

 ホノカは女性の顔を見て我に返る。彼女が、フローラが涙を流すところなんて見たことないからだ。他の5人も視線はシュウとルゼラフィードに釘付けだった。それもそのはずだった。光の狂戦士と恐れられたホノカでさえ捕らえるのがやっとの戦いなのだから

「ごめんね、シュウ。でも、必ず未来きぼうにつないで見せるから」


 


 私はいつも通り目を覚まし起きようとするとある異変に気付く

「あれっ? 涙?」

 紫紺の瞳から涙がほほを流れる

 とっさに手で拭い取り、ふとさっき見た夢を思い出す。思い出すだけで鳥肌が収まらない悪夢だった

「ほんっと最悪な夢ね」

 よいしょとベッドから降り学校へ行く準備を始める

 

 「行ってきます」

 藍璃は玄関を出ていつもの待ち合わせ場所へ歩いて行く

  「今日に限って嫌な天気ね」

 空を見上げれば、曇天の空が広がり今にも雨が降りそうな天気で思わず夢のことを思い出してしまう。そう、確かあの日もこんな薄暗い曇天の日だった

「おはよ!あいりん!」

 その時、不意に声を掛けられ思わず驚いてしまう

「うわーっ!? ってユミか。脅かさないでよね」

「あいりん、何かあったの?」

 ユミの察しに少し慌てる藍璃

「べ、別に何もないけど」

 本当は何もなくはないが、これは誰かに話すのは気が引けるから今まで誰にも言ったことがない

 むしろ言いたくもない

「ふ〜ん、ならいいけど。でも、困ったことがあったら絶対言ってね!必ず助けるから。 だから…」

「テスト勉強」

 藍璃はユミの言葉を遮り呟く。

「ギクゥ! ち、違うよ!違うくないけど違うよ!」

 いやどっちだよ

 全く、良いセリフに紛れてテスト勉強を頼み込むとはなかなかどうしてゆみは策士だな。頭悪いけど

 ユミは頭が悪くいつもテストの点数が赤点ギリギリだ

 私は毎回面倒だから断ろうとするものの、奢りという言葉に負けてしまう

 だが今回は、今回こそはユミに自力で勉強をさせる。それがユミのためだからだ。だから私は心を鬼にして言う。

「ゆみ、今回こそは自分でやりなさい。毎回言うけど私に頼ってばかりだと私がいなくなった時に困るのはユミなのよ」

「うぅーっ。そ、それは分かってるよぅ〜。でも、ほら、私バイトばっかで全っ然勉強する時間なかったから」

「言い訳しない。それよりさっさと学校いこ」

「えぇー!お願い!明日1日だけでも!いや、1時間だけでも良いから!」

 先に行こうとした私の前に出て腰を90度曲げ懇願してくるユミ

「ち、ちょっと目立つからやめてよね。それに、たった1時間教えただけで赤点回避出来るわけ……」

「出来るよ!だってあいりん教え方上手いんだもん。知ってるあいりん?私ね、あいりん以外にもテスト勉強教えてもらったことあるけどあいりんの時と違って全然覚えられなかったんだよ」

 何を言ってるんだこの人。そりゃ多少教え方は上手いかもだし私のIQは5000くらいあるかもだけど、それは教えてもらう相手が悪かったのだろう

「今度! ここに行きましょう!」

 ズバッとスマホを突き出し私に見せてくる。

「これって……」

 今話題のチーズケーキ専門店じゃない!なかなか予約が取れないって噂だったけど。やるじゃない。私の好物を選ぶなんて

「ここで好きなだけ奢ります!だから……」

「分かったわ」

 私は光の速さでOKしてしまった。

 その時、猛烈な風が私たちを襲う。

「うわ〜。とばされちゃいますうぅ!」

 情けない声を上げてるのはユミだった

「なによ、この風」

 しかしそれも無理はない。台風とはいえこんな突風は以上だ

 少なくとも車は吹き飛ばせそうだ。私は反射的に腕で顔を覆い目を瞑り風が止むのを待つ

 何秒くらいそうしていただろうか?気づけばユミの情けない声も聞こえなくなっていた

 私はゆっくりと目を開ける

「えっ!?」

 私は何が起きたのか理解出来なかった

 

 

「ふむ、これはハズレじゃな。ドゥームどのはさぞお怒りになるだろうな」

 声のした方を見ると、白髪で背が高い初老の男がこちらを品定めするかのようにこちらを見ていた

 普通にキモいんだけど。てか、よく見たら猫耳生えてるし

 あっ!こっちは兎耳だ。コスプレ? ドッキリ?

「いきなり召喚されて戸惑っておるようじゃな。まあ、無理もない。こちらはあちらの世界とは随分違うと聞くからのう」

 召喚? 何言ってるのこの爺さん?まさか、本当に……

「ワシの名はアーガスト。この村の村長をやっておる。お主には悪いがこれから色々と働いてもらうぞ」

「なによ、働くって?」

 まさか奴隷?そんなの絶対嫌なんだけど

「まあそんなところじゃな。しかし困ったのう、お主は弱過ぎる。これじゃあ使い物にならん。」

 勝手に呼んどいて使い物にならんとか自己中か!いや自己中だわ

「じゃあ帰らせてよ。そもそも何であんたたちの奴隷にならなくちゃいけないのよ。理不尽にも程があるでしょ」

 こんなとこにいたらケーキ、じゃなくてユミに勉強教えてあげられないじゃない

「勝手に帰られては困りますね」

「「ドゥーム様!」」

 1人の男が部屋に入ると亜人たちが一斉に跪きだした

 何よこいつ。他のやつと違って普通の人間に見えるが、何か嫌な感じがする

「あなたは私の大切なコマなのですから勝手に行動されると困りますね」

「ドゥーム殿、この娘はあまりに魔力が少ないようだが。」

 ドゥームと呼ばれた髪をオールバックにまとめている男が私のほうに向かってくる

 「大丈夫ですよ、アーガスト。界渡りをした者は必ず唯一無二の力、スキルを授かるのですから。魔力の少なさなどどうとでもなりますよ」

 そう言ってドゥームは右手を私に向ける。

 ちょっと、何する気なの

 なんかドゥームってやつの右手が光ってるんだけど。そんなことより体が動けない

 「さあ、今からあなたは私の忠実な僕となるのです」

 「だ、誰か助けてよ」

 周りを見るが誰一人として助けるそぶりを見せない

 なんで私がこんな目に合わなきゃ…………。

 「ダメー!」

 一人の女の子が勢いよく部屋に入ってきて、私をを庇う様に両手を広げて前に立っていた。綺麗な銀色の髪が特徴の猫耳の女の子だ。

 「この人は何もしてないのに何でこんなことするんだよ!」

 この子は凄いな、見ず知らずの他人のために体を張れるなんて私にはもうできないな

 「面白い猫ですね。この私の前でそれだけの虚勢が張れるなんて、少し貴方にも興味がわいてきましたよ。ですが、今はあなたにかまっている暇はないのでそこをどいてもらいましょうか」

 そういってドゥームは、腰に下げていた鞭に手を置く

 猫耳の少女は剣を構えたままドゥームを睨む

 チャンス!今のうちに逃げられないかな

 皆が二人に注目している中、私は逃げ道がないか当たるを見渡す

 ドアは一つだけ、か

 ドアからは無理そうだな。アーガストの後方にあるためどうやっても気づかれてしまう

 必死に逃げる手段を考えているとき、ドゥームに異変が起きる

 「なっ! この気配、なぜここに!」

 ドゥームだけではなく他の亜人たちも騒ぎ始めた。ソアラだけは壁の一点を見つめていた

 これってホントにチャンスじゃん!何が起きた変わらないけど想定外の出来事が起きたのは間違いない!

 「あ、アーガスト!私は一度ガレートに帰る。お前はここでこの女を連れてどこかへ逃げるんだ。さすがに幻獣相手じゃ私も分が悪いですから。」

 ドゥームは懐から丸い水晶みたいなものを取り出し、それを握りしめる。すると、石がほのかに光だしドゥームを包み込みそのまま姿が消えていった

 なにこれ?魔法?いやいやそんなことより逃げないと。

 気が付くと家の中にはアーガスト一人だった

 くそっ、これじゃ逃げられないじゃん。いや、老人一人なら私の秘密兵器でなんとか倒せるんじゃ……

 「お主はホノカを知っておるか?」

 「……?」

 唐突すぎて意味が理解できなかった。

 ホノカ?そういやクラスにそんな名前の人がいたっけ。とりあえず知らないって答えとこ

 「そんなもの知らないわ、それよりそこをどいてくれない。でないと痛い目見るかもしれないわよ」

 私はカバンに手を入れ秘密兵器と出せるように構える

 「そうか知らないか。残念じゃな。ここと通りたきゃ勝手に通るがよい」

 アーガストはひどく落ち込んでいるように見えたがそれどころではない。この老人今なんて言った!?通っていいって言った?

 罠じゃないよね?

 「逃げるけどいいの?」

 「ああ、好きにすればよい」

 「そう、じゃあ遠慮なく逃げさせてもらうわ」

 私は恐る恐るアーガストの横を通る。いいのよね?ほんとに逃げるからね

 私は開いていたドアを抜け我武者羅に走り出す

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