第18話 京都防衛隊②
データブレイカー、通常は電子機器に直接USBを刺したり、遠隔でハッキングをする事で、名前の通り、データを破壊するウィルスを電子機器に入れる事を示す。
そして、オレの持っているこの銃弾は対象の電子機器に撃ち込むだけで、データブレイカーを可能にするという技術的に不可能とされている銃弾だ。
オレは眼鏡の男性に向かって、拳銃を構えた。こっちは普通の拳銃だ。
「……」
男性に向かって、何発か撃ってみる。しかし、男性の目の前で透明な壁みたいなものでガードされた。
「それは、そうだよな。なら、これならどうだ」
オレは帽子を被った。
「み、見えない……これは透明人間と同じ効果!?」
さぁ、これを避けられるかぁ。
オレはデータブレイカーの銃弾が入っている拳銃を左手に構え、もう1つの拳銃を右に構えた。相手は俺が二丁拳銃を構えている事する見えていない。相手がこの状況を変える為には電子ゴーグルを外して、肉眼でオレを見なければならない、だが、外したら、銃弾をガードできなくなるだろう。
まずは普通の拳銃で男性に何発か発砲して、途中にデータブレイカーの銃弾を放つ。
男性今まで、普通の銃弾はガードで対応していたが、データブレイカーの銃弾が飛んできた瞬間、避けた。拳銃は相手から見えない為、弾道を予測をする事は普通は不可能なはずだ。
「ほぉー、これを避けるか。反射神経化け物か」
しかし男性は気づいていない、データブレイカーの銃弾が壁に激突しないで方向転換して、男性の背後、電子ゴーグルに向かって飛んでいることに……。
バリンッ、男性の装備していた電子ゴーグルにデータブレイカーの銃弾が刺さった。電子ゴーグルがエラーを起こし始めた。
「くそ、いつの間に、どこから!?」
男性は使い物にならなくなった電子ゴーグルを脱いで、投げた。
「攻撃プロトコル起動!!」
男性の腕から、カチカチ、シューと音がなり、腕が変形してナイフが伸びている。足も膨張している気がする。
「へー、思ったよりも身体改造してるんだな」
「おおおおお、おおおおおおおお」
目にも止まらない速さで俺に近づいて、ナイフが身体横スレスレを横切った。
「ひえー危ねぇ」
次々襲いかかる斬撃を避ける。最小限の動きで、どの攻撃もスレスレで避けた。
「なかなか、早い斬撃だが、甘いな」
革手袋を装着している腕で、男性のナイフに向かって殴った。パリンッと音が響いて、男性の腕の装備が壊れる。
「ーーッ!?」
「これが、ただの革手袋だとは思ってないだろうな?」
男性が戸惑っている内に、顔面を狙って殴る。動きを止めないで、次々殴っていく……相手が死ぬまで。
床には顔が変形してしまった男性が血だらけで倒れている。
オレはポケットから端末を出して、ある人に電話を掛けた。
「とりあえず、終わりましたがぁー」
『そうか、ご苦労だった』
「そもそも、こんな派手な事をしても大丈夫なんですか?」
『問題ないだろう? 監視カメラに君の姿が写っている訳ではないだろう?』
「しかし、こいつが短時間でここまで調べることが出来たということは、他の人も簡単に辿り着くと可能性があると思うんですが……」
『まぁ、その時はその時じゃないか? 私はただリーアとその周辺の情報を少しでも遅らせたいと考えただけさ』
そんなふわっとした理由で、知り合いを殺す必要があるのは、たまったもんじゃないぜ。なんて少しは思うが、どうでもいいか。
「了解しました、撤収します」
倒れている男性の手を持って、出入口にあるボタンを押した。
扉が横にスライドとすると、男性の死体を扉の間に置く、その上を飛び越えて、部屋から出た。
ここ京都防衛隊の人達はほとんどの人が、頭に電子機器を装着してい為、特殊な帽子を持っている俺を電子機器越しに見ることはできない。
その為、足音と気配さえ気にすればバレることはないだろう。まぁ、俺の姿が1体1でバレる場合なら問題ない、オレは今もここにいる人間だからな。
容易に出入口ゲートまで来れた。
問題はここの出入口ゲートは顔認証による確認が必要な為、誰かが通るまで出ることが出来ない。
オレの姿が監視カメラには写っていないが、熱センサーなんてものがあったら、不審者がいると普通にバレるだろう。まぁ、そんなもの無いことは知っているがな。
退屈にじーと出入口ゲートを見ていと、やっと出入口ゲートが開いた。
「結局、忍者には逃げられたっすね」
「報告にあったあの話は本当なんだろうなぁ!? 信じられねぇ」
「みんな落ち着け、騒ぐな」
筋肉質で背の高い集団の中で、スラッとしたシルエットで、周りよりも一回り低い身長の男性が前を歩いている。
あれは、浅葱色に白い山型模様の羽織を着た集団、新撰組2じゃないか。京都防衛隊には複数の隊があり、その中の1つだ。
しかし、名前はどうにからなかったのだろうか。新撰組に2ってダサすぎだろう。
まぁ、名前はリーダーというか局長が決めたらしいがな。
「どうした。何を見てんだ?」
「いや、なんでもない」
局長は虚空を見つめていた。
虚空、それは電子機器越しに見た場合の話で、肉眼でみたら、そこにはオレがいる場所になる。
まさか、気づかれたとかはないよな。
動くと気づかれる可能性を考えたオレはこの場から動けないでいた。このままではゲートが閉じる可能性があるが、バレるよりかは次に来る人を待った方が賢いだろう。
そこに突然、ハイテンションな少女が現れた。
「うわーーー!! 新撰組2だあぁぁぁぁ!!!」
空いていたゲートから走って現れたのは金髪の少女。
「すごい、本物だあぁぁぁぁ」
金髪の少女が騒いでいる間にゲートの外に出た。
もう修理が完了したんだな。
――――
俺は空中に浮いているウィンドウに映る、銀行の残高を見つめていた。
この金があれば、ここから逃げ出して、適当にバイトでもしたら何とか生きれるんじゃないだろうか?
リーアという支配者の道具と一緒に居ても、絶対やばい事に巻き込まれる事に違いない。
偉そうな方のリーアは事務所を作るとか、躍起になっているが、どうも不安だ。
そもそも、知り合いが目の前で死んで、なんとも思わないようなやつと一緒に居たとも思わないな。
しかし……。
この部屋は1LDKなので、リーアが部屋を使って、俺はリビングで過ごす事になった。
部屋を見るが何もない。
まだ、何も買っていない状態になっている。
「事務所よりも先に生活できるようにしないといけないな」
「とりあえず、お腹すいたわ。なにか買いましょ?」
「ああ、そうするか」
そこで、ある事を思い出した。
「そういえば、リーアはまだ、あの姿が見えなくなるカードを持っているのか?」
「持っているわ、それが?」
「持たない方がいいんじゃないか? 確かに安全性を考えたら持っていた方がいいが、多分だが、電子機器越しに移らないとなると、色々困ると思うぞ」
「まぁ、それは一理あるわね」
リーアはカードケースみたいなものを取り出して、入れた。
「そういえば、松永は電子機器を付けていないわね」
「普段は付けてるよ、あの時、買い物とかだったから支給されていなかったんだ」
「ふーん」
外に出ると、ひんやりと風が吹いてきた。
とりあえず、周辺のお店を調べると、近くにスーパーがある事がわかり、そこまで徒歩で向かうことにした。
スーパーに入ると、リーアがキョロキョロ周りを見渡している。
初めて来たんだろうな。
「家には電子レンジもフライパンとか道具が一切ないから、パンとかおにぎりとかを食べるしかないな」
「そうなるわね」
俺が前を歩くと、リーアがトコトコと着いてくる。
俺とリーアの身長は30cmぐらい離れている為、どうも妹でも連れている気分になってくる。妹はいないがな。
「ほら、なんか食べたい物はあるか?」
パンやおにぎりなどが置いてあるエリアに来た。
「うーん……」
悩んだ末、リーアが持ってきたのは、見た目が甘そうな菓子パンだった。
「あのな、夜ご飯なんだが?」
「私は甘くて美味しい物が食べたいわ」
「そうかよ」
カゴにはリーアが選んだドーナツやら、クリームパンなどの菓子パンが入っている。
俺はおにぎりや惣菜パンを入れて、会計に向かうことにした。無駄にここにいるといらない物まで買うことになりそうだからな。
会計に向かう途中に、リーアがお菓子やアイスなどを入れようとしたが、何とか阻止に成功した。
支払いができなくなったリーアの代わりに俺が払うことになる。数日前の端末をドヤ顔で見せてきたリーアの表情を思い出した。
黒いマンションに到着して、家の中に入った。いつ見ても何も無い。
「まず事務所を作る前に、日常生活の事を先に考えた方が良さそうだ。せめてテーブルと椅子ぐらいは欲しいな」
「そうね」
リビングに入ると、リーアは壁に身体をつけて、ドサッと座ると、そのまま買っきた菓子パンをパクパク食べ始めた。
テーブルも椅子も何も無い為、俺も床に座って、胡座をかきながら買ってきたパンを食べた。
空中に浮いているウィンドウを見る。
11月16日と表示されていた。
この部屋 暖房機能はついており、まだ冷えている空間に暖かい空気が混ざっていく。
そして、まだ謎が多いリーアとの共同生活が始まった。
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