精霊さんは悪役令嬢に転生した~連載中~
@raihuri-888
1,始まりは…
この世には世界が二つある。
科学を用いて発展していった世界と、魔法を用いて発展していった世界だ。
魔法とは、火、水、土、風、光、闇の六種類の中から一人一種類授かり、その名の通り、火を出したり、水を出せたりするものである。
一方、科学とはちみつな計算、世界の断りを深く追求し、作ったもので、最速で地上を走る、人が乗る箱「クルマ」や、高速で空を飛ぶ、人を乗せる箱「ヒコウキ」などがある。
その二つの世界を見下ろし、退屈な気分を紛らわそうとしている人物がいた。
そう、女神である。
「ん~、なんか面白いことないかなあ?前、科学世界の女の子を魔法世界に転生させたばっかだから、連続で転生させられないんだよね~。」
女神はため息をついた。
今、ここには女神に、「お前、だらしなさすぎ!ほんとに、女神なのか?」と突っ込んでくれる人は誰もいない。…………残念ながら。
「なーんか楽しそうなことがあったらいいのになあ…。」
そして、どこからか双眼鏡を取り出し、覗こうと…。
「はい、それ、没収です。」
どこからかひょいと腕が現れ、双眼鏡が奪われる。
「ちょっ!なにすんのよ-!!」
女神がぷんすかと怒った視線の先にいたのは精霊の女の子だった。
説明しよう。精霊とは、人の目には見えない、科学世界に存在する生物である。見た目は、人間そのもの。
そして、魔法世界に比べ、メンタルが弱い、科学世界の住人を支えているのは精霊なのである。
精霊が触れると(生物に限る)、気分がよくなったり、情緒が安定するので、科学世界の住人には、必要不可欠な存在だった。そして、何より、女神と会うことができるのが精霊である。
「何よー、サリ。あんたの新しい主はまだ見つからないの?」
サリと呼ばれた精霊は不機嫌そうに眉をひそめた。
サリは、どんな顔をしても、クールな女の子だった。
「らいか以外は主と認めません。」
主。それは、精霊が生まれた時から、決まっている、自分が支えるべき人のことである。
そして、サリは去年、らいかを魔法世界に転生させられていた。
誰かさんのせいで。
「ふーん。らいかちゃんがいなくてさみしい?」
女神がからかうと、サリは無表情を崩した。悲しみをこらえた顔で
「寂しくなんてないです。」
と答えてみせる。女神はそんなわけないくせに、とニマニマした。
らいかは精霊が見える、特殊な人物だった。
そんなわけで、サリとらいかはたびたび口喧嘩をしていたが、その口喧嘩を二人とも楽しんでいたのだった。
そう、怒りゆえの喧嘩じゃなかった。サリとらいかの会話がただ単に、口喧嘩という手段だった、それだけだった。
しかし、女神が、サリと少しケンカをしたときに、その腹いせにとらいかを転生させてしまったのだ。
ただ、実をいうとそれは表向きの理由だった。
「さて、答えは決まった?」
女神は楽しそうな表情でサリに尋ねる。
「ええ、やっと仕事のけりが付きましたので。」
サリが笑って見せた。静かな笑みだった。
しかし、背中のほうから静かな怒りのオーラが見える。
「答えは、はいです。」
「そう。じゃあ、いってらしゃい。」
女神がそしらぬふりで、人差し指をサリに向ける。
サリがぼうっと光り始めた。
そして、次の瞬間にはもうそこには、何もなかった。
女神は、サリがいた場所を見つめて、小さな小さな声でつぶやいた。
「寂しくなるな。」
と。
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