二人目と三人目と四人目

 学校生活というものは、何かと班だのグループだのを組ませたがる。この四十人学級のE組で唯一の男子であるぼくを含むグループは、隣の席の梅崎ウメザキさんと、前の樋口ヒグチさん、斜め前の狐塚コヅカさんに、仁平ニヒラさんの五人。


『サリーもいるわよ』


 サリーはクラスメイトではない。サキュバスは人間の魔法学校に通っていないから。今日は一限目から戦闘訓練だ。三年で卒業するためにも、この必修科目は落とせない。サリーはそこら辺で座って見ていてくれ。


「足を引っ張らないでよね」


 さっそくのが投げつけられて、ぼくは肩をすくめる。やる気を出しているのにそりゃないって。……前回、ぼくがミスって、みんなに迷惑をかけてしまったのは事実だから、言い返せない。


『この、タツナに対してツンツンな女の子は狐塚京佳キョウカさん。キョウカのお父さんは上流層で、ここ、ミルフィオリの魔法学校の教師だった……んだけど、当時学生だったキョウカのお母さんとの禁断の恋に落ちた。お母さんが中流層だったから、中流層に流れている。

 キョウカは幼い頃からお父さんによる魔法のレッスンを受けているので、他の子よりも出来がいいのは当たり前よね。お母さん譲りの綺麗な顔だけど、言い方がきついと男の子にモテないわよ』


「まーまー、キョウカさーん。タツナくんをお荷物みたいに言うのは、よくないよー」


『仲裁してくれているこののんびりとした子は仁平カエデさん。回復魔法分野でトップの成績を持ち、本人の将来の夢は看護師。丸くてふくよかな体型が災いして、飛行技能試験が判定不能となっているから、今後は勉強だけではなく、ダイエットも頑張らないとね』


 仁平さんが昼休み後にお菓子をドカ食いしているシーンを、何度も校内で目撃していた。ここまでの高頻度なら、気付いている先生だっているだろう。男のぼくが女子の体型をとやかく言うと、きっとが起こるので、ぼくは見なかったことにしている。


「だる」


『このかったるそうにしている子は樋口瑠璃ルリさん。タツナに次ぐE組の問題児。出席率が低いから。

 ちなみに、ルリはサリーのお仲間であるインキュバスとのハーフね。

 インキュバスとのハーフでも聖女にはなれるのよ。このミルフィオリでは。先代の聖女が次代に形で選ばれるから。

 ルリが本気を出せば一人でこんな戦闘訓練なんて楽勝でしょうけど、本人はこの調子。先が思いやられるわね』


「今日は、力を合わせて頑張りましょう! ねっ? ……そうだ! 円陣! 円陣を組みましょうよ!」


 梅崎さんは前向きでいいなあ。ぼくはうなずいて、梅崎さんに応じる。仁平さんも「いいねー」と、続いてくれた。


「そーゆー体育会系のノリ、暑苦しくて嫌い」


「ウチは、キライじゃない」


 乗ってくれなさそうな樋口さんが円陣に加わると、狐塚さんはわかりやすくため息をついてから「一人だけ入らなかったら、ノリが悪いと思われるじゃない」とつぶやいて、しぶしぶ、肩を組む。


「チームエイト、行くぞー!」

「「おー!」」

「おー」

「おー……」


 梅崎さんが合図をして、声を張り上げたのはぼくと仁平さん。平常時と同じトーンなのが樋口さん。一番声が小さかったのが狐塚さんだった。


『戦闘訓練のルール説明が必要よね。サリーが説明するわ!

 一年生の戦闘訓練は、魔法学校の各エリアに配置されたターゲットを、昼休みの開始時刻までに倒すこと!

 チームワンからチームエイトまでの各チームが同時にスタート!

 別のチームの妨害をするもよし、最速でターゲットを倒しに行くもよし!

 ターゲットはチームの数と同じで八体設置されているけど、一つのチームが二体倒してもオーケー!


 前回は、のとあるクラスメイトがチームメイトと共謀してタツナをたこ殴りにしたのよね。カワイソウに。タツナの回復に手間取ったおかげでチームエイトは一体も倒せずにタイムオーバー。


 今回は、どうなるかしらね?』

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