第21話

 亡霊が見えるのだ。

 何処へ行っても死霊が追い掛けて来る。

 寺でゆらゆらと揺れていたが、こんな所でも変わらず揺れて居た。


 ゆらゆら、ゆらゆら。

 ゆらゆら、ゆらゆら――。


「お前は石塚晋二郎だろ?」

 男が言った。

 吾は石塚晋二郎という名だったろうか?

 さて、さて。

 どうであったか。


 ゆらゆら、ゆらゆら。

 ゆらゆら、ゆらゆら。


 どうであったか、どうであったか。

 亡霊共に訊いても答えてはくれまい。


 ゆらゆら、ゆらゆら。

 ゆらゆら、ゆらゆら。


 吾は、どうしてこんな小さな箱におろうか。

 此処は何処ぞ、此処は何処ぞ。


 ゆらゆら、ゆらゆら。

 ゆらゆら、ゆらゆら。


 嗚呼、吾は誰ぞ。

 嗚呼、吾は誰ぞ。


 ゆらゆら、ゆらゆら。

 ゆらゆら、ゆらゆら。


 あの男は何処に行った。

 あの男なれば吾の事を知っておろうに。

  

 ゆらゆら、ゆらゆら。

 ゆらゆら、ゆらゆら。


 此処は何処じゃ。

 此処は何処じゃ。


 吾は誰ぞ。

 吾は誰ぞ。


 誰ぞ、誰ぞ、誰ぞ。

 誰ぞ、誰ぞ、誰ぞ誰ぞ誰ぞ誰ぞ――。 

 

 ゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆらゆら――……。




 

 

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