第2話 家族紹介
朝日の光が差し込む豪華な書斎。
リュシアンは机に置かれた家系図に目を落とす。
――そうだ、家族。
名家に生まれるということは、単なる血筋ではなく、重厚な運命でもある。
まず、父――グスタフ・ヴァルトール公爵。
厳格で高慢、しかし名家の誇りを胸に抱く典型的な貴族。
「父上……今回の人生では、きちんと利用させてもらうとするか」
リュシアンは薄く笑った。
次に母――イザベラ・ヴァルトール公爵夫人。
優雅で美しく、社交界でもその名声は高い。
だが、実は計算高く、家の名誉に影響すること以外には冷淡。
幼いリュシアンを可愛がる振りをしては、常に家のための教育を課す。
「母上……あなたの期待には応えてやる、当然だろう」
そして兄――エドワード。
公爵家の長男であり、正統な跡取り。
器量は立派だが、優柔不断で他者を下に見がち。
リュシアンにとっては、唯一利用価値のある“盾”になるかもしれない存在。
「兄上……まあ、舐められるだけの器量ではなかったか」
妹――セレナ。
天真爛漫に見えるが、ヴァルトール家の血は濃い。
小さな手で父母の意向を察する頭の回転の速さは、恐ろしいほどの才覚。
リュシアンは心の中で彼女を警戒した。
「妹よ、可愛い顔に騙されるな……あなどれん」
さらに、屋敷には多くの使用人がいる。
彼らもまた名家に忠誠を誓う存在。
だが、リュシアンは前世の知識を生かし、ここでの“人の動かし方”を密かに計算する。
「なるほど、駒の配置は完璧だな……」
机に置かれた家系図をじっと見つめ、リュシアンは小さく息を吐いた。
この家族と屋敷――すべて利用価値がある。
家柄を守り、成り上がり共を蹴落とすための、完璧な舞台。
「さあ、この人生では――誰も俺を絶望させはしない。
家柄こそ全て、そしてその頂点に立つのは俺だ」
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