第5話 梅雨
6月28日
雨だ。最近はずっと雨が降っている、雨は嫌い気分は落ち込むし窓から見える
外の景色も暗い。私にとっての楽しみは病室の窓から見える明るい街の景色
雨はそれを台無しにする。
この前、大翔が倒れてから私はずっと落ち込んでいた。
また私のせいでなんて考えて暗い顔をしている。
今日はママが来た、お仕事お休みだって。
最近の出来事を話したり持ってきてくれた果物を食べたりして久しぶりに
家族の楽しい時間を過ごしたと思う。
ママは悲しい顔なんて一つも見せず私を元気づけてくれた。
大翔がテスト期間に入ったことも教えてくれた。
そうとう頑張ってるみたいで夜中に部屋の電気がついていると教えてくれた。
頑張り屋の大翔が好きだ。心配に思うところの方が多いけど
それでも、大好きなのは変わらない。
7月9日
もう、7月に入って今年も半分を切った。
大翔が学年1位を取ったと喜んでいた、私も嬉しかった。
あんな顔見たの何年振りだろう昔小学校の運動会でリレー1位とった時と同じ顔をしていた、頑張りが報われたんだと思うと少し感動する。
なんだか今日は少し眠たい。
大翔とお話ししていたいから頑張って起きてようと思った。
もし、元気になったら何処に行きたいかと聞かれた。
そうだな~理想のデートとかならやっぱ水族館?遊園地もいいよね
そんな風に言ったら、大翔は少し顔を赤くして
デートとは言ってないって。ちょっと可愛かった。
こうしてお話ししてる時間が何よりも楽しい、ありがとう大翔
7月14日
すっかり雨は上がり日差しが強く気温も少し上がった気がする。
今日は大翔これないみたい。
隣の病室に小学生の女の子が入院したみたい、私のところにやってきた
「お姉ちゃんはなんの病気なの?」と聞かれた
病名は無い。治療法もない。
「早く退院できるといいね!」
無邪気な女の子は笑顔でそう言った
「そうだね!君も早く元気になるといいね」
私も同じように笑顔で答えた。
1か月後
8月20日
世間は夏休みで気温もかなり高く、大翔は夏期講習でなかなか顔を出せなかった。
隣の子はよく話に来てくれてたけど最近来ない。
退院したのかなと思っていた、病室を見に行ってもネームプレートは無く
元気になったのだと思っていた。
ふと看護師さんに「隣の子は退院できたんですね」と聞いてしまった。
亡くなっていた。
人の死がこんな近くに訪れることは初めてだった。
悲しい感情よりも恐怖が勝っていた。
今まで私も死ぬとは思っていたけど、実際目の当たりにしてしまうと感じ方は変わってしまう。
怖い。死にたくない。そんな感情の渦に飲み込まれてしまう。
気づけばベッドに横たわり、ぼーっとしていた。
なにか私の中から消えてしまったような感覚。
私はその夜震えて泣いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます