[TL]地味系OLだけど水曜日の夜はびしょぬれ
み馬下諒
夢見るAカップ
買いもの袋にはブランド名の単語がつづられており、高級店に立ち寄ったことを主張している。使い道のない
「お嬢さん、いま帰り?」
突然、声がかかって顔をあげると、同じアパートの
「こ、こんばんは……」
桃瀬はペコッと
「あの……、どうかされたんですか?」
おずおず話しかけると、相手は少し驚いた表情をして、笑みを浮かべた。
「鍵を、どこかに落としてしまったようでね。途方に暮れている」
親しみやすい態度を示す石和は、スーツを手さぐりしてみせた。予備の
前日に買ったショートケーキをひとりで食べるつもりだった桃瀬は、舗道を歩きはじめる石和をひきとめた。
「ち、ちょっと待ってください……。もしよかったら、今晩、わたしの部屋に泊まりますか? その……、夜ごはんがまだでしたら、いっしょにケーキを食べませんか? わたし、きょうが誕生日で、ひとりより、誰かと過ごしたい気分だなって……」
思えば大胆な提案だが、石和は「本当に? それはありがたい。お誕生日おめでとう」と、やけにすんなりと応じた。アパートまでひき返すと、石和は「おじゃまします」といって革靴を脱いだ。靴箱の上に放置してある郵便はがきに目をとめ、「桃瀬さんの名前って、
「はい、そうです」
部屋の電気を
興味本位でききだすのは失礼かと思い、ケーキを皿に乗せると、銀のフォークを添えて運んだ。
「プレゼント、なにをもらったの?」
絨毯に
「そ、それは……、ひみつです!」
ふざけた事実を告げるわけにもいかず、その場かぎりの嘘をつく。ぎこちない動作で台所へもどると、
✦つづく
※この度は物語をお読みくださり、誠にありがとうございます。こちらの作品は設定ゆるめのTLっぽい内容につき、苦手な方は何卒ご注意ください。
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