第16話――米畑霊、死す(2回目)

「まずは、相手の話を聞いて、自分の考えを整理して、冷静に考えてください」


 巫女さんの優しい声が、頭の中に響き渡る。

そうだ…、私は今日、感情に任せて文太郎と揉めてしまった。もっと冷静になっていればいいだけだったのに。

 だから、その反省を生かしたい。

「シュッ――」

 私は悪霊の攻撃を避けた。まぁ、本当にたまたまだが…。

 

 もし、この悪霊に言葉が通じて、話し合いができるのだとしたら理性を取り戻してくれるかも知れない。

それに、私足遅いから、逃げても無駄だと思う。それよか挑発してるのと一緒になる。


 私は彼女と向き合い、震える足を押さえ込んだ。


「おいおい霊ちゃん…早く逃げろって!」

 花は私を心配してくれているのか、思いっきり声をあげた。

でも、今は…

「あのっ、悪霊さん。どうして攻撃するんですか?

何か悩みでもあるんですか?

あるなら、何でも聞きますよ…その…人生相談とか恋バナとか…」


「あな…た……」


 悪霊は冷たく青白い手で、私の肩をガシッとつかむ。やはり、近くで見る幽霊はとても恐ろしい。ましてや悪霊だしね。

 でも、まずは落ち着いて…彼女の話を聞こう。


「分かった気になるんじゃないわよ!」

 彼女は鋭い爪で、私の頬を引っ掻いた。


 鋭い目つきで私を睨見つける。それと同時に、大きな叫び声が響き渡り、ほっぺが熱くなる。

 だんだん痛みが…、触ってみるとぬるっとした感触があった。


「おい!もうやめろ霊!

いいか…悪霊は悪霊なんだ!そいつらはどこまで言っても…理性を失った醜いバケモノなんだ!」


「あんたは私を理解できるの!?またそうやって騙すの?

悪霊に〝変えられた〟私の気持ちなんてわかるはず無いわよね?

幸せになれると思ったら、逃げられて…それの繰り返しよ!あげくの果て…私は…

うっ…あぁ…ああああ!」

 毒を吐き散らかした彼女は、いきなり泣き出す。それも大きな叫び声を上げながら。


 ほっぺは痛いし、怖いし…花の言う通り悪霊は悪霊なのかもしれない。

でも、この人。話が通じた。

それに、幸せになれないつらさは少しだけ理解できるから。私の場合…両思いになれないとかね。


って…腹立つな。

どうしてこの悪霊だけが気持ちよく毒吐いてんだよ。私だって……私だって!



「私だって!

両親が亡くなって、知らない人に引き取られて、幽霊体質で変な被害にたくさん遭う癖して絶対に両思いになれなくて!モテなくて!嫌われて!いつも何しても叶わない!

あんただけじゃないんだよ!私だって十分悩んでるし!嫌なんだ!

イケメンの

彼ピッピがほ、し、い、ん、だああああいああ!」


 はぁ…はぁ…。久しぶりに叫んだ。

でも、少しスッキリした!何だか清々しい気分だ。


って…何気持ちよくなっちゃってんの!?

今絶賛、悪霊とバトル中じゃないですか。あぁーっやっちゃった…。


 多分、大声で叫んだから、怒られるだろうなぁ。それか…

殺されるぅ!


「おめえ…何叫んでんだ…」

 花にも飽きられてしまった!ヤバいヤバい…私調子乗りすぎ!


 読み通り、彼女は私に顔を近づけ、いきなり腕を掴んできた。

 きっとこのあと殺されるのかな…?まずは腕からとか?


 そう思っていたが…




「あなた気が合うじゃない!私もイケメンの彼ピッピ欲しいのよ!

友達になりましょう!」


 彼女は可愛らしく大きな目を輝かせてそう言ってきた。口角も上がっていて…すごく可愛らしい。


 本当に悪霊なの?すごく乙女な女性にしか見えないけど……。


って。

ええええええ!?




 

 次回予告


私が悪霊と友達?

と言うか…彼女は本当に悪霊なのか?

それとも…悪霊に〝された〟のか。

私たちは、触れてはいけなそうな秘密のドアを…開けてしまった。


次回「米畑霊死す。」(3回目)


もういいって…3回…そろそろ飽きたよ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る