ep2.自己紹介でウケを狙う奴は他人の自己紹介で笑わない。
未来と現在の狭間にて、現在タイムリープ中....
「ほな、このまま未来いくで~。」
真横から声がした。振り向くと、案の定そこにはさっきの銀髪少女が居る。
少女はその銀色の髪を風に靡かせながら、まるでスカイダイビングのように俺と一緒に落ちている。
「ちょ、ちょっとまって!これってホントに未来行ってんの!?なんかずっと落ちてんだけど!?」
「ん?あぁ、初めは慣れへんかもだけど、そのうち勝手に着くし、景色でも見とき。」
彼女はまるで人ごとかのように呟く。
(景色って言ったて、周りはどこ見ても意味わかんねェ数字しか書いてねぇじゃねぇか!!)
俺は恐怖のあまり、涙を上に流しながら落下している。
「めちゃ怖いんですけどォ!!ってか、....ゥオ”エ”ッ!!ぎもじわるいィィ!」
俺はこの慣れない感覚に、タマひゅんを超えてサオひゅんしそうな勢いだ。
そして何より.....気持ち悪い!!
この浮遊感が俺の内臓を満遍なく刺激し、今にも胃の中のカップヌードルが出てきそうだ!!
「おいィ!こんなとこで吐いたらあかん!!今落ちとるんやから、吐いたの全部顔にかかんで!」
彼女は、口では気を使っているような事を言っている。しかし、実際は既に俺を見捨てていて、空中で平泳ぎをしながら俺から遠ざかっていやがる。
「お、おい、俺から距離とんじゃねぇ__!あ、これヤバいヤツだ....は、はkブゥオ”エッ!!」
遂に、口という名の
そしてその様子を見ていた銀髪娘は目を見開くと、腹を抱えて笑い始めた。
「うわぁ!ホンマに吐きよった!キッショ!!ww」
(母さん。俺は今、顔面ゲロまみれになりながらJKに気持ち悪がられて、タイムリープしています。とても辛いでゥウ”ボェッ!!)
______________________
__どれくらい、経っただろう....
30秒と言われればそうな気もするし、3カ月と言われればそうな気もする。
今俺が座り込んでいるのは....、建物の中?
どこかのオフィスの一角の様だ。辺りを見渡すと、幾つかのデスクと比較的新しいホワイトボードがあった。
そして特に目を引くのは、奥に設置されている大きな白色のソファーだ。
「うおっ!ゲロくさ!」
と、この現状に戸惑っている俺に向かい、人の心を抉るような台詞が聞こえてきた。声の方を振り返ると、例の銀髪少女が鼻をつまんでわざとらしく距離を取っていた。
「ここは、一体....」
俺は彼女に聞いたが、彼女は口を開くことなく窓を指さした。
(窓の外を見ろという事か....?)
俺は立ち上がるのも一苦労な疲労困憊の中、よちよちと窓に近づく。
そして窓を覗き込んだ。
そこから見下ろした景色は......
「ォ、ォォォォ....!グオオォォォ....!」
俺は驚愕のあまり、とても人の言葉が出せなかった。
車輪のない車、見たことのないような構造の建物....
(お、俺、ホントに未来、キチャッタァ...!)
そこには紛れもない、未来都市が広がっていた....!!
「
銀髪女が鼻をつまみながら、俺を歓迎をしてくれた....
____________________
あれから俺は5分程、状況が理解できずに窓際で立ち尽くしていた。そして必死に、我がFラン大学が誇るこの頭脳を動かしていた。
「あ、あぁ...!本当に未来キチャッタんだけど...!ありえないありえないありえない!....あ!これあれだろ!モニタリングだろ!カメラどこだ!?おいTBS!!おいブラマヨ!!ネタバラシにこーいッ!!」
俺は目の焦点が合わないまま慌てふためく。そんな俺を見かねた銀髪が、ドロップキックを繰り出してきた。
「ブバッ!!__いってぇなぁ!!何すんだよ!!」
「なんか慌てふためいとるお前が目障りだったから、つい。」
コイツ.....!
(あー本当にもう滅茶苦茶だよ....!俺はこの世界でどう生きていけばいいんだ...!)
そんな不安に苛まれながら、地面のシミを数えていた俺に向かって、少女が質問をした。
「なぁ、そういえばジブン、名前聞いてへんかったな。名前は?」
(今になって名前かよ...!)
俺は彼女の質問に嫌気がさしながら、仕方なく口を開いた。
「...俺の名前は、
すると、俺の名前を聞いた銀髪女は、驚きながらも嬉しそうな声を出した。
「おお!ここにピッタリな名前やな!」
ここにピッタリってなんだよ、訳が分かんねぇよ....!
....そう言えば、俺もこの少女の名前を聞いてなかったな。もはや何でもいいけど、聞くだけ聞いといてやるか。
「....じゃあ、アンタの名前は?」
彼女は待ってましたと言わんばかりに、大きく口を開いた。
「一回で覚えろよ~!ウチの名前は、及川__」
と、自分の名前を名乗ろうとした彼女が一呼吸置き、続けるように自分のフルネームを口にする。
「『
....俺は耳を疑った。
「は?....エクス...なんて?」
そう。俺の脳が、コイツの言い放った意味不明な固有名詞を、人名だと認識できないのだ。
そして直後に、彼女に対する苛立ちを覚える。
(コイツ....ふざけてやがる....!エクストラデッキ梅子ってなんだよ!!エクストラデッキってアレだろ!?遊戯王とかで融合モンスターとか入れるデッキの名前だろ!?)
俺は若干イラつきながら、彼女に聞き返す。
「あ、あのぉ、ふざけてます?なんすかエクストラデッキ梅子って。人名の間に、普通エクストラって文字もデッキって文字も付かないんすよ。真面目にやってもらえます?」
すると、俺の言葉を受けた及川?が不機嫌そうな表情になった。
「なんやと!?ふざけてへんわ!!父ちゃんと母ちゃんがつけてくれた大切な名前やで!!」
彼女はここまで来ても、「ふざけてない」の一点張りだ。
あーもうめんどくさい。なんか全てがめんどくさい。
俺は自分の中の、混乱と怒りと呆れをギャル曽根バリのスピードで咀嚼し、彼女に真顔で質問をする。
「....もうじゃあエクストラデッキでいいっす。どっかのハーフの方ですか?」
すると、間髪入れずにエクストラデッキ野郎は返事をした。
「おう!大阪人とペイパン星人のハーフや!!」
「....なんとか星人ってそれ、宇宙人とかっすか?」
「せや!」
「あ、そうですか。」
__フゥ~。
もう俺は反応しない!
リアクションもしない!!
これ以上何も受け付けない!!!
(....落ち着け落ち着け俺、暴れ出すな。ここは未来なんだ!!宇宙人のハーフなんてそこら辺に転がっているだインヤ転がってねぇだろォ!!)
いかん!唐突な展開の連続で、この異様な空気に飲まれてきている!!こんな時はラマーズ法で心を落ち着かせるんだ....!
「ひっひっふ~、ひっひっふ~、ひっひ__」
俺が妊婦顔負けのラマーズ法を開始した、まさにその時!
「あら?EXデッキさん、ここに居たんですか。」
「ひっひッブフォッ!!」
俺はその唐突なパワーワードに、勢いよく吹き出してしまう。俺が本物の妊婦だったら、今頃大惨事だったことだろう。
いや、そうじゃなくて!今、後ろの方で及川のことをエクストラデッキ、いや、EXデッキと省略して呼んだ人物がいた....!
まさか、未来人の仲間か!?
俺は慌てて後ろを振り向いた!そして、俺の眼球がその人物を視認する!!
「あ、初めまして!こんにち.....なんかゲロくさいですねここ。」
俺が認識したその人物は、鼻をつまみながら笑っていた。
そしてその時、俺の脳に稲妻が走った。
「か、かかかか...」
可愛いぃ__!!
俺が振り返ったその先に居たのは、俺の性癖ドSTRIKE!!!な黒髪ポニテの美少女であったのだ!
そして、内心叫ぶ!!
(ヒロインキターーー!!)
「初めまして!!俺の名前は石塚特人!中学の時はイッシー、またはゲスメガネって呼ばれてました!好きなように呼んでください!!」
「え、えぇ、特人さんですね、初めまして。私の名前は『
彼女は俺に対して、笑顔で自己紹介してくれる。そして流れるように、俺の握手と接近を拒絶した。
あぁ!なんていい子なんだ!!
未来にはこんな清楚系な子もいるのか!!
あれ?でも名前が随分普通だな。この子はエクストラデッキが付いていないのか。
「なんか、凄いちゃんと日本人の名前ですね!貴女はパイパン星人とのハーフじゃないんですか?」
「ペイパン星人や!!」
及川の心底どうでもいいツッコミは無視して、俺は食い入る様に彼女の言葉を待った。
「あ、はい。私も過去....、というより、あなたと同じ、現代から来た人間ですから。」
彼女の口から飛び出してきたその言葉は、予想だにしていない物であった。
「え...お、俺と同じってことは、それって....」
(....ンマジでーー!!?!?)
続くゥ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます