衣替え

aoinishinosora

第1話 衣替え

「マミー、今日新しい服?」


「え?違うけど前から持ってた服だよ。何で?」


「箪笥の匂いする」


 前々から、我が子達は〝マミーの箪笥の匂い〟に敏感だ。箪笥の匂いが何なのか上手く私にも言い表せないが、それは、木の匂いだと私は思っている。新築の家の匂い?そんな感じに考えていた。

 しかし、よく考えると他人には不快な匂いかもしれない……。普段仕事に行くときの服は洗濯後畳んでベットの横に〝ポィッ〟と置いて朝それを着る。そんな不精な生活をしている……。

 最近寒くなり秋物の服を今日は箪笥から引っ張り出した。確かに箪笥は箪笥の香がする。私にとっては不快な香では無い。が、他所様はどうだろう?私は急に不安になって来た。このまま買い物に出て大丈夫だろうか?このままこの箪笥に服を仕舞って置くのが不安になって来た。


 私が結婚を決めた時両親が買ってくれたものだった(結納金を使い買ったのだと思う)昔ながらの飾り細工の金具がある箪笥。結構なお値段だったと思う。一度2階に運び入れてからは動かしたことは無い。震度7の地震の時も倒れる事はなかったから傷も無い。兎に角、結婚と言う形態を辞めてしまった私にとっては立派すぎる箪笥だ。

 

 天日干ししてから着るか、洗濯してから着るか悩んでい所に長男が遊びに来た。


「何か匂いする?」


「え?別に……匂いしないけど。あ、柔軟剤の匂いと、ちょっとだけマミーの箪笥の匂い。別に臭い匂いじゃないよ」

 



 匂いを嗅いでも柔軟剤の匂いしか今はしない。


 そんな気がする……。


 天日干ししてから着るか……。


 

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