第15話 戦利品の弓と矢は……
学園の戻った蔵人たちは、まずことの顛末を生徒会に報告した。楓はものすごい剣幕で蔵人を怒った。蔵人は狼牙たちを連れてそそくさとその場を後にした。
そしてリアカーを持ち出して、盗賊の野営地に戻った。行きの時に、校舎に残っていた盗賊の死体を積んだ。体育館の入口は血まみれのままだった。
詰めるだけ詰めて、その場を後にした。テントも食料も何もかも積んだ。
行きも帰りも地獄だった。足場の悪い斜面をリアカーを引いて進むのは、とても体力を削られる。しかし帰りのほうが少し楽だったのは死体がとても重かったからにほかならなかった。
蔵人「鹿がいるってことは、鹿が居るってことだよな」
みなきょとんとした。蔵人が何を言いたいのか理解できないでいる。
蔵人「つまり、なんとか狩りできないかなってこと」
狼牙「ああ、なら最初からそう言えよ」
蔵人「弓と矢もあるし、ようやくなにか風が吹いてきたって感じしないか? 異世界サバイバル開幕ってやつ?」
狼牙「どこに居るんだよ、鹿」
今まで森という森を彷徨ったが、野ウサギは見ても鹿などの大型の動物は見たことがなかった。
蔵人「それでもよお、野ウサギでも狩れれば、食べられるじゃん」
狼牙「簡単に言うよなあ」
仁「罠のほうがいい」
普段口を開かない竜胆仁が口を開いたので、この場の全員が驚いた。
蔵人「確かにそのとおりなんだけど、俺も、弓矢に夢をはせる男の子なんだよなあ。石の鏃を携えて、勇壮なる愛宕蔵人ここにありってな」
狼牙「年齢考えろよおっさん」
狼牙のそのセリフに蔵人は青筋を立てた。
蔵人「みんな30だからっておっさんおっさん言うけどなあ! 30は若者だからな! ナメんな?」
狼牙「寝言は寝て言えよ」
蔵人「ガキが……ナメてると潰すぞ!!」
狼牙「あぁ!!」
メンチを切り合う、全く成長のない二人だった。
ぴょこ、と野ウサギが飛び出してきた。
全員が立ち止まる。そーっと蔵人は荷台から、盗賊たちから奪った戦利品の一つである弓矢を取った。
矢をつがえて、射ろうとする。弓は思ったよりも張力が強く、プルプルと震えながら弓を引く。
――パシュっ!!
矢は飛ぶ時に、くねくねとしなりながら飛んでいった。まるで魚が泳ぐように、また跳ねるように飛んでいく。もっと真っ直ぐ空を切るように飛ぶと思っていた蔵人は驚いた。
矢は野ウサギの手前に刺さった。その瞬間、まさに文字通り脱兎の如く走り去っていった。
塁「あーあ」
狂「へたっぴ」
蔵人「いやいや、クソムズいから。俺が下手なんじゃなくて、ムズいだけだから」
狼牙「トーシロが当てられるわけねーだろ」
蔵人「くっ!」
蔵人に返す言葉はない。
獅道「餅は餅屋というし、アーチェリー部のやつに相談したらどうだ?」
蔵人「アーチェリー部! そういうのもあるのか……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます