第3話 図書室の少女
蔵人は学園から追放された――
わけではなく、そのまま生徒たちの厄介となった。
取り敢えず生徒会の預かり、ということで収まった。それは蔵人が唯一の大人だったことも大きい。
不思議なことに教師等の学校職員は一人として居なかった。成人した大人は蔵人だけだった。
ここで蔵人がリーダーシップを取れるのならば良かったのだが、ニートである蔵人にそのような力はなかった。
蔵人「このままじゃ追放系になるのでは? 森へ追放したニートに、戻ってきてとは言わない……よな ? ま、まずい……」
深い森が幾重にも連なっているこんな場所で追い出されても、30歳のニートが生き残れるはずもなかった。常人ですらどうだかも怪しいのだから。
一人孤独に悲観している蔵人とは対象的に生徒たちはそれほど動揺している様子はなかった。それはひとえに、生徒会の統率力のおかげだった。
生徒会長、紫宮楓を筆頭とした、愛染学園の生徒会メンバーは、実に優秀だった。状況を理解し、自分達の財産を精査し、生徒500人が生き延びられるように配給制を敷いた。
しかし今後の対応については意見が割れている。救助を待つのか、ここから脱出するのか。
蔵人はただ見ているしかない。実際自分には何もできない、能力がないからだ。
蔵人(暇だ……暇だけど、なにもできない……)
蔵人は時間を持て余していた。そこで学園の中を散策することにした。
現実の世界でニートが学校の校舎を探検なぞしようものなら、警察に捕まって終わりだが、今現在ならば、誰にはばかることなく探検できる。
蔵人(じっとしていても悲観的な考えしかでないしな)
まず最初に向かった場所は図書室だった。
そこには古今東西あらゆる文献が詰まった知識の宝庫だった。
蔵人「うひょー! 知識チートキタコレ!! これで勝つる!!」
一人だと思って浮かれていた蔵人だったが、図書室にはもう一人いた。
蔵人「あっ……」
シュン、とテンションを落として、蔵人は本を探す。恥ずかしさからその女子生徒をチラチラ見て、実に不審者全とした挙動だった。
女子生徒の方も蔵人のことをチラチラと見ていた。警戒してのことだろうと、蔵人は思った。
黒いショートカットの髪に、その内側だけを染めた今風の髪をした美少女だった。
蔵人(最近の文学少女は、なんというか、チャラいな)
居心地の悪さを感じながらも、蔵人は本を見て回る。
蔵人「おっ! へうげものあるじゃん!! この高校漫画置いてんのかよ!! いいなあ。おれが高坊のときは……そう言えば図書室なんていかなかったわ」
蔵人は歴史系の漫画が好きだった。それも学生時分を過ぎてから好きになったので全く成績に影響を与えなかった。
女子生徒がチラチラとこちらを見ている。流石に居心地の悪さが限界に達したので、漫画をもって図書室を後にした。
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