第2話 異世界全校集会、校庭に集まった生徒たち
タバコを吸い終わると、学校の方でも慌ただしくなってきた。
愛染学園の生徒たちは、ぞろぞろと校庭に出て来ると、その異質な光景に対して様々な反応を見せていた。
あるものは泣き叫び、あるものは喜んだ。その合奏は校舎から生徒が出てくるに連れて大きくなっていった。
蔵人は校門から入ってパニックになった生徒たちに交じることにした。実際蔵人もかなりパニックになっていた。
楓「静かに!! 静粛に!!」
大きなメガホンで拡散された声が生徒の耳に入ると、段々と静かになっていった。その女子生徒の周りには、まるで従者のような六人の生徒が居た。
紫色の長髪がなびいた気位の高そうなその彼女のことを、生徒たちは会長と呼んでいた。名前を
(会長ってことは、生徒会長か? 随分とまあ、立派なやつだな)
蔵人は心のなかで呟いた。
楓「まずはクラスごとに整列しなさい!! 校舎の中に残っている生徒も全員、校庭に集まって!!」
生徒たちはその指示にしたがって行動する。
(えっ、俺どうしよう……)
蔵人は取り敢えず、流されるままに適当なクラスの中に整列した。整列が済んだ頃には、流石に周りの生徒たちも怪しんでヒソヒソ会話をし始める。
居心地の悪さを感じながら、蔵人は懐かしの全校集会を体験していた。全く楽しくものなく、気分的には、遅刻して全生徒に目線を向けられたような心持ちだった。
両脇にレジ袋を抱えたおじさんは、生徒会長の目にも止まった。
楓「そこの、貴方!!」
生徒会長が指を指すと、生徒たちは一斉に蔵人を見た。
蔵人(本当に生徒全員から見られたんだが……)
楓「貴方、この学園の生徒じゃないでしょう。何者なの?」
蔵人「何者、って言われても……」
楓「部外者は立ち入り禁止でしてよ?」
(こんな非常時に部外者ってのも酷い言い方だなぁ)
蔵人は心のなかで呟くが、それを口に出す勇気はなかった。
蔵人「たまたま歩いていたら、一緒に連れて来られた……? でいいのか?」
楓「はぁ!?」
蔵人「だってこれ、いわゆる学校丸ごと異世界ってやつだろ!!」
楓「学校丸ごと異世界??? 何を言っているのかわかりませんわ?」
透子「会長ちょっと……」
隣りにいた黒髪の女子生徒が、楓に話しかける。
楓「なんですの?」
透子「そういう小説があるんです……ファンタジー小説が」
楓「ファンタジーって、ハリー・ポッターや指輪物語のようなものですの?」
透子「多分そうです……部分的に……」
楓「わたしたちが、そのような世界に来た、と?」
透子「はい……」
楓「根拠を示しなさい!!」
蔵人(根拠って……)
それはこの場に居た殆どの者が蔵人と同じことを思っていた。
蔵人「あ、アバタケ◯ブラ!!」
「「「「「「「「……………」」」」」」」」
しかしなにも起こらない。蔵人がただ赤面しただけに終わった。
蔵人「魔法はなし、と。そういうタイプの異世界ね」
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