クリスマスの話をする

放課後の教室。

曇り空。

教室には駿と悠人だけが残って、二人とも漫画を読んでいる。


先に最後まで読み終えた駿が、大きく息を吐いて伸びをする。


「なあ、中村」

「ん?」

「クリスマスって知ってる?」

「んー、知らん」


悠人は漫画から顔をあげずに面倒くさそうに返事をする。


「もうすぐやでクリスマス。恋人たちの季節」

「んー、なんなん、その、クリスマスって」

「おまえ、その感じでいくつもりなん。クリスマスなんて存在しないみたいな感じでいくん?」

「うーん」

「おまえがそんな感じで抵抗したところで、ジングルベルは鳴り止まんのやで」

「うるさいなあ、邪魔すんなて」


悠人が顔をあげる。


「どこまで読んだん?」

「ナナミンが死にそう」

「激熱やん」

「激熱。ナナミン焦げてる」

「どうなるか教えたろか?」

「知ってる。ナナミンがどうなるかは知ってる。読むん二回目やから」

「二回目なんかい」

「でも、今回はもしかしたら助かるかもと思って」

「助からんやろ」

「いや、まだわからん。こっから逆転あるかも」

「一回目読んだ時はどうやったん?」

「激熱やった」

「今回も?」

「激熱」

「うん。じゃあ、がんばってくれ」

「おう」


悠人はまた熱心に漫画を読み始める。

仕方なく、駿は読み終えた漫画をパラパラとめくり眺めている。

しばらくして読み終えた悠人が息をつき、漫画を机に置く。


「どうやった?ナナミン」

「あかんかったわ。」

「今回も」

「残念や。敵が強すぎた。エリンギおばけ」

「あいつ強いよな」

「しかし、やつも最強ではない」


そう言って、悠人は立ち上がり漫画を駿に渡す。


「ありがと。おもろかったわ。帰ろか」

「おう」


駿も受け取った漫画を自分のカバンに入れて立ち上がる。


「すっかり年も暮れてきたよな」

「ほんま。さみーよなー」

「さみー」

「ほんで、おまえ、クリスマスって知ってる?」

「知らん。食えるんか?」

「おまえ、今年はその感じでいくん?」

「ソレハ、タベラレマスノ、モノデスカ?」

「カタコトで言うてもあかんねんで。ジングルベルは、」

「鳴り止まない」

「わかってるやん」


ふたりは笑いながら教室をでて、廊下を歩いていく。

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面接の練習 くまみつ @sa129mo

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