第28話王の罠

夜、城の裏手にて。

「魔王さん、こっちです。ここから忍び込めます」

城壁の石の一部が外れるようになっていてそこから入れるようになっていた。

そこからニチレンを先頭に私、アーサー、ハルと順に通っていく。

「それにしても、よくこんな抜け道を知っていたね」

「昔、戦士のワルクさんに教えてもらいました」

「あ~」

ほとんど会話もしたことがないのに納得してしまった。

そうして見つからないように全員の侵入が完了した。


「さてニチレンさん、王様の場所をお願い」

「探知します」

そう言って杖を掲げる。

「…おそらく執務室。2階の奥にいますが…おかしいですね」

「何がおかしいの?」

「その部屋にいる反応が1つしかありません。護衛がいるかと思ったのですが」

「つまり罠の可能性が高いと」

うーん、でも選択肢入るしかないしね。

「部屋へは私が最初に入ります」

ハルが手をあげる。

「ハルさん、でも」

「問題ありません。攻撃された場合は私にシールドを」

「…わかった」


そうして巡回している騎士団の人に見つからないよう移動を開始した。

「うーん、やっぱりおかしいです。見張りが少なすぎます」

問題なく1階の謁見の間まで来れた。

「我々を探すために外に出ているのではないでしょうか?」

アーサーが後ろから言ってきた。

「そうだったらいいんですけど…」

不安になりつつも移動を続ける。


「着きました、けど…」

「見張りもいないね」

普通なら罠ですって言っているようなものだけどあの王様一人でも無双できそうだしな。

「魔王様」

ハルがスッと前に出た。

「ハルさん、気を付けて」

こくりとうなずく。


そうして扉をバン!と開けて転がり込んだ。

「ウィンド…!」

と魔法を唱えようと、手をかざすが

「誰もいない…」

あたりを見渡すが気配や怪しいものも見当たらない。

「クリアです。問題ありません」

「そんなはずは…」

ニチレンが入っていき部屋に杖をかざしていく。

続けて私とアーサーも部屋へ入る。

「確かに、誰もいないね」

部屋が暗いので光の魔法で手元を照らしながら調べていった。

奥にデスクがあったので引き出しを開けてみる。

その瞬間、ニチレンがこちらを向いた。

「魔王さん、ダメ!見つけました!それがスイッチです!」

引き出しの中を見ると魔法石があり、キンッ!と音がなる。

その瞬間、ドガガガガ!!と下から爆発音がして床が抜けた。

「な!?」

やらかした!

4人は奈落の底へ落ちていった。



「アーサーちゃん大丈夫!?」

「ら、らいじょうぶれふから、手を…」

「あ、ああ!ごめん!」

とっさにアーサーをこちらに引き寄せ守ったが力を籠めすぎてしまったようだ。

見るとそこは牢屋の中だった。

他の2人も無事なようだ。


「ネズミどもが、かかりおったな!」

ネズミってそんな悪役なセリフ…、と思いながら顔をあげると王様だった。

後ろに護衛と思われる騎士団の人も2人いる。


「王様!あなたは操られています!」

ニチレンが牢屋越しに叫んだ。

「何を言う!余に精神攻撃魔法は効かん!」

「王にそれ以上近寄るな!」

やっぱり意味はないか。

「その場所は魔力吸収の魔法陣が敷かれている。ゆっくりと死を実感しながら死んでいくんだな!がっはっはっは!」

そうして王様と護衛2人は去っていった。

う、確かに魔力が吸われている。魔法を使っても魔法陣が吸収して威力もほぼ出ないだろう。


「上が開いています、私が!」

ハルが羽ばたき落ちてきた穴から脱出を試みる。

「あ、待って!」

「へぶ!」

シールドに阻まれてそのまま落ちてきた。


この場所じゃ、あのシールドを壊すほどの魔法は無理そうだ。

「ニチレンさん!」

「ごめんなさい、私の対策がされているみたいで皆さんより力が入らないです」

杖に寄りかかりながら答える。

よく見ると魔法陣から魔力の鎖のようなものが出ていてニチレンへとつながっている。


マズい、これは本当に全滅する!

そうして何か方法はないかと焦るしかなかった。

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