第4話 迷いの森
「申し訳ありません!!」
リッチーが土下座をしている。
「なんか見たことある構図だね」
あと一生ってもう終わってるはずでは。
「しかし、あれほどの啖呵を切っておいてこのありさま、死んでお詫びを!」
いやあなたすでに死んでるでしょう。
「いやあなたすでに死んでるでしょう」
おっと、心の声が漏れてしまった。
「やめてください、リッチーさん戦闘とか久しぶりだったでしょうに」
「いえ、しかし…」
「なるほどわかりました。では罰を与えます。あなたは一刻も早く復帰して家事リーダーとして働いてください。」
「魔王様…。承知いたしました。私が復帰しましたらこの魔王城に埃一つなくなるまで徹底いたしましょう!」
「いやそこまでは…まぁいいか、もう行っていいよ」
リッチーさんが出ていくのを見送る。
それと入れ替わりのようにアーサーが入ってくるのが見えた。
「魔王様、これからどうするのですか?」
「アーサーちゃん、もうちょっと休んでてもいいのに」
「いえ、落ち込んでばかりじゃいられませんので。それで…」
「あぁ、そうだね。人族の王様に現状の手紙を書いてみた。うまくいけばそろそろ返事が返ってきそうだけど」
その時ドタバタと伝達係であるハーピィ男が入ってくる。
「魔王様!」
「来た!…嫌な予感が」
「魔王様の手紙ですが、届かなかったようです!」
「やっぱり…理由を聞いても?」
「わかりませんが、冗談にとられて検閲ではじかれた可能性が高いです」
「なるほど。まぁ魔王から手紙来るってわけわからないからね。使者を送り込んでも打ち取られるだけだし」
あれこれと考えていると念話が飛んできた。
「魔王様、四天王のミドリです。勇者が迷いの森へ入りました。魔樹のマルクと足止め作戦を実行したいと考えています。許可を」
ミドリは植物使いで魔族、マルクは魔樹と呼ばれる木の魔物である。
ちなみに魔族は魔に属した意思疎通ができ話すことができる者たち、魔物は動物に近く話すことができない者の呼び方である。
人族はどちらも魔物と呼ぶことが多い。
「大事な資源だからあまり森は傷つけたくないんだけどなぁ…」
「ここで止めないと被害はどんどん広がります!2人がかりならいけます!」
「…そうだね、うん、わかった。じゃあ無理とわかったらすぐに手を引くように!」
「お任せください!」
「迷宮ダンジョンは力技で壊したようだけどこれなら」
そう言って対策したのはごく少量の混乱の花をそこらにおいて少しずつ方角をずらしていく。
「自分たちがおかしな方向へ進んでいることすら気づかないはずだ」
「…すみません、迷いました」
「なにぃ!?おいおいもうすぐ夜だぞ!」
「落ち着け戦士、僧侶に言っても仕方ないだろ?仕方ない、今日は休もう」
そうして休もうとしている中魔法使いだけが何かを感じ取った。
「…何か変だ」
「え…私のガイドのせいでしょうか…」
「いや、そうか!」
魔法使いが立ち上がる。
「ここから西へ2キロだ!みんな、森を壊して突き進め!迷わせているものがいる!」
「ほう…なるほど!行くぞ!ついてこい!」
そうして勇者は剣を、戦士は斧を振り回しながら進んでいく。
「嘘だろ!?あいつら森を壊してこっちに!?」
早く対処しなければならない、焦りながら考える。
「マルク、根で邪魔を…いや、逃げ…」
これ以上森を傷つけるわけにはいかない。
「迎え撃つ!」
そう言ってありったけの魔力を込めて攻撃へ転ずる。
一方マルクは貴重な植物を避難、池や川を隠すように形成した。
「蔓よ!」
勇者が片手でいなした。
「拘束!」
お構いなしに引きちぎり走ってくる。
「種子砲、用意!全弾発射!!」
しかし当たっているのに蚊が止まったかのような反応だ。
「なん…こいつどうやったら倒せるんだよ!」
額から汗がだらだらと出てくる。
速度は攻撃前と一切変わらない。
そうこうしているうちにたどり着く。
「く、勇者よ、もうこれ以上は森を傷つけさせんぞ!」
そう言って蔓の剣を取り出し戦おうと決意する。
じりじりと接近するが突然
「ふむ、なるほど、君たちは斬らないでおこう」
勇者が前に出る。
「な、なぜだ」
「ここには魔物ではない動物がたくさんいるな。それに水源がちゃんと守られていて森の維持が目的のように感じた。罪のない生き物は殺すつもりはない。行こう」
そう言ってパーティを納得させそのまま通り過ぎようとする。
「勇者…」
「あ、でも攻撃してこないように生命維持に必要な根と葉以外は切り落としていくな」
ズバズバと枝や細かい根などを切っていく
「ジュオォォォ!!」
「マルクー!!」
最終的にはほぼ丸坊主になった魔樹マルクと呆然と立ち尽くしたミドリだけが残されたのだった。
おまけ
「そういえばアーサーちゃん、あの伝達係の名前なんだっけ?」
「アルトレイル・ガロイト・ヘボンループ・ト・リオールケイト・ブルセット・コールトリエイル・サルボンさんですね」
「…」
伝達係でいいや
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