#6 破片
「っ!?」
コンは地面を数メートル吹き飛び、木に衝突する。なんとか視線を向けた先には、セルリアンが奪ったナイフを奇妙な仕草で観察するように持ち、虹色の体にそれを押し付けるような動きをしていた。
(何をしている......?)
セルリアンはナイフを押し付けるたびに虹色の輝きが激しく点滅し、その体表に小さなひび割れのような模様が広がり始めた。その様子に、コンは混乱と驚愕を隠せなかった。
「まさか……サンドスターを……取り込もうとしているのか?」
セルリアンの行動が徐々に理解できた瞬間、コンは急いで立ち上がり、体の痛みをこらえながら状況を整理しようとした。しかし、その時、無線機からナツの声が響く。
『コン! 大丈夫!?』
コンは無線機を手に取り、急いで答える。
「大丈……いや、あまり大丈夫じゃないな。問題が発生した。」
『どういうこと?』
「セルリアンが、俺のナイフを取り込もうとしている。今までのやつらとは全く違う。これは――」
言葉を切る前に、セルリアンがナイフを完全に体内に吸収していく。
その瞬間、その虹色の輝きが強烈に放たれると同時に先程の不協和音を雄叫びの様に響かせる。
『コン!まずいぞ、お前の周囲のサンドスター濃度が徐々に減少してる』
「サンドスター濃度が減少……」
コンは無線機越しのエイジ言葉に驚きを隠せなかった。
『恐らく、あのセルリアンの形態が、周囲のサンドスターを過剰に奪い取っているわ。これ以上続けさせたら......』
ナツの声には焦りが滲んでいたが、コンは短く息を吐き、
「不利なのは承知の上だ。だが、この場でこの状態を続ければ、より悪化する。」
彼は冷静にセルリアンを見据えながら答えた。その言葉に、ナツは一瞬反論をためらった。
『エイジ!何か対策は!?』
エイジの落ち着いた声が無線越しに返ってくる。
『今の状況じゃ何もわからない。コンが稼いだデータをカコ博士の元に……一旦引くしかないな。ナツ、バックアップの準備を。』
『......了解、バックアップするわ』
「離脱する」
コンは帽子を深く被り直し、ナイフを構えるとゆっくりとセルリアンに向かって歩みを進める。セルリアンは虹色の体を揺らしながら、不気味な音を立てて彼に注意を向けた。
コンは体の痛みを抑え、集中力を高める。セルリアンはすでにエネルギーを吸収し、以前とは比べものにならないほどの威圧感を放っていたが、彼は一歩も引くつもりは無かった。
「......絶対に狩ってやる」
━━━━━━━━━━━━━━━
その後、コン達は得た情報を緊急でパークセントラルへセルリアンの情報を送信する。
『これは......サンドスターを?』
カコ博士がモニター通話越しに驚きの表情を浮かべながら、画面越しにコンたちの送信したデータを確認していた。映像には、セルリアンがサンドスターを吸収して周囲の濃度を低下させている様子が克明に記録されている。
カコ博士はモニターを凝視しながら、静かに言葉を選び始める。
『……これは通常のセルリアンとは全く異なる特徴ね。直接的なサンドスターの吸収能力を持つ個体なんて、今までに確認されたことがない……』
「つまり、かなり特異なセルリアンってことですか?」
エイジが冷静に問いかけると、カコ博士は少し言葉を詰まらせてから返す。
『その可能性が高いわ。この個体は、周囲のサンドスターを奪い取ることで、自身を強化している。しかも、高純度のサンドスター製の武器をも取り込める点が非常に危険よ』
カコ博士の言葉に、コンは眉をひそめながらモニターを睨みつけた。
「……その吸収能力持ち。もしこれがこのまま止まらなかったら?」
『パーク全体が危機に陥るでしょう。サンドスターが消失すれば、フレンズたちの存在も勿論パーク自体の運営が危うくなるわ。』
博士の声は重く、全員の胸に不安が広がった。しかし、カコ博士は続けてこう言った。
『加えて、サンドスターを吸収するのならば、
「"ヒト"だけで狩らなくちゃならない、そういう事だな?」
『……その通りよ』
カコ博士の声には深い憂慮が滲んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます