第2話   友達ができました。

「杏ってお菓子何が好き?」

「杏は、寝る時って自分の枕ないと寝れないタイプ?」

私は今、さっきできたばかりの友達に質問攻めをくらっています。

(めんどくさっ)

しかもなんか呼び捨てだしっ⁉︎

いや、さっきまで「初めての友達ができた‼︎」なんて浮かれてたけどっ!

「あの…川野くん」

川野くんは、私を見るとため息をついた。

「下の名前で呼んでいいのに‥」

「ごめん。でも、せめて龍くんで良い?」

「っま、それで良いけど…で?何?」

「質問じゃなくて、話そうよ。」

龍くんは、「そうだった、ごめん」と謝ってきた。

「俺の癖でさ、場を和ませようって思ってつい質問ばかりになっちゃうんだよね」

なぜか心の中で少し龍くんが優しいと思ってしまった。

でも一つだけ、そんな彼に疑問があった。

「なんで龍くんは、私の右目のこと聞かないの?」

「隠してるから、聞かれたくないのかなって」

思ったよりも、しっかりした答えが返ってきて「へえー」って言ってしまった。

「なんだよ。へえーって。つまんない返事だな〜」

(じゃあ何て返したら良かったのよ‼︎)

「バーカ。つまんない返事って言うな」

「はいはい」

ていうか、さっき走っちゃったからまた悪化しちゃったかも。

「ごほっ、ごほっ」

咳き込むと、龍くんは少し心配そうに私の背中をさすった。

「大丈夫っ?水飲む?」

「大丈、夫だから。ごほっ」

バタッ

勢いでベンチから倒れてしまった。

「おい、本当かよ…」

龍くんは少し呆れたように私を横にさせた。

(そろそろ門限過ぎちゃうから、早く帰らなきゃ。)

「私、帰る。けほっけほっ」

「やめといたら?迎えにきて貰えばいいのに…」

「仕事だし、自分で帰れるから。」

本当は家にいるけど、ここからだったら近いし…多分ね!

「ていうか、靴履いてないじゃん」

「気づくのおそ。」

靴下で走ってたから、所々怪我しちゃった。血が滲んでるし…

(お母さんとお父さんを説得するのに時間かかりそう‥)

「じゃ、私行くから。」

「待てって!もう暗いし送るから」

「うるさいから、もうそれでいいや。」

龍くんはほっとした様子で私の後を追ってきた。

チカッチカッ

「あっ!」

信号が赤に変わりそうで、龍くんが走って渡った。

「もう。置いてかないでよ」

「ごめんごめん。もうすぐ青になるから!」

パッポーパッポー

「今から行くねー」

一瞬、龍くんが慌てた顔をした。

「杏、待て!車が来てる!」

うっかり確認を忘れていた私が悪かった。

「っえ…」

キキィー!(ブレーキ音)

「杏…!」

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