第52話 己の立ち位置

レインの案内の元、馬術部にやってくる。


そこは柵に囲まれており、辺りには坂道や障害物などが置いてある。


それらを登ったり避けたりしながら、騎馬達が馬を誘導していた。


「なるほど、馬術部とはそういう感じか」


「興味がおありでしょうか?」


「ああ、少しな。それより、そんなに畏まらなくて良い。この通り、俺は怖いかも知れないが……」


「い、いえ! そうではなくて……貴方様は辺境伯家当主でいらっしゃいますから。伯爵家の僕より爵位も上ですし、当主ともなれば当然かと」


「そういうものか。ここでは身分差は関係ないと書いてあった気がするが」


「それはそうですが……やはり、そういうわけにはいかないかと」


「そうか、無理を言ってすまなかった」


「いえいえ、そう言って下さる方がいるのは嬉しいですよ。では、馬を連れていくので少々お待ちください」


その後ベンチに案内され、少しの間待つことに。

生徒達にジロジロと見られるが、今更ながらに自分の立場に気づく。


「俺は辺境伯家だったな」


この世界において辺境伯家というのは、伯爵と侯爵の間とされている。

公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵とくるので上からの方が早い。

自覚がなかったわけではないが、自分の立場を再認識した。

何せ線の記憶もあるが、ずっと田舎に住んでいたからな。


「道理で、周りから遠巻きされるわけだ」


教室でも何やら変だったが、それはセレナ様と俺の見た目だと思っていた。

そうなると、俺の方も何か考えていかねば。

セレナ様の印象も悪くなるし、辺境伯家当主としてもイメージが良い方がいい。

そんなことを考えていると、レインが戻ってくる。


「お待たせ致しました」


「いや、問題ない。馬は平気だったか?」


「はい、少し怪我をしてますが復帰には問題ないかと。改めまして、ありがとうございました。何か僕に出来ることがあればお返しさせてください。この馬術部で部長をやっているので、大体はここにいるかと」


「だったら、俺と友達になってくれないだろうか? この通り、田舎から来たのでな。色々とルールがわからない」


人のことは言えないが、セレナ様も公爵家の姫として育てられた方。

その辺りのことに関しては疎い気がする。

ならば、俺が頑張って埋めていきたいものだ。


「ぼ、僕でよろしければ」


「助かる。後、俺は馬術部に興味があってな……部活見学をしても?」


「もちろんです! みなさーん! 部活見学者が来ましたよー!」


その声に釣られて、わらわらと人が集まってくる。


偶然ではあったが、どうやら良い人と知り合いになれたらしい。

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