第51話 異変?

昼食を済ませたら、まずは校内を散策する。


敵が来るとしたら何処からか侵入するか、そして隠れた密偵達が何処にいるかなど。


学校で事件など起きないとは思うが、ここはゲームの世界。


そういう強制イベントや危機があってもおかしくない。


そうなった時のために色々と確認をしなくては。


「ふむ……やはり現代の高校に近い作りか。教室の作りから警報器の位置、通路を抜けた先に体育館、一階には職員室や保健室……違うのは校庭は桁違いに広いことくらいか」


前世の知識があるので把握しやすいのは助かる。

それと大体の密偵の数や位置もわかった。

これなら余程のことがない限り心配する必要はない。

ただセレナ様は破滅する運命にあるとしたら油断は出来ん。


「階数は3階建て、屋上もあり……よし、次は校庭か」


玄関から外に出ると、いくつかの建物が見える。

見える範囲では馬がかけ、剣を持った者たちが打ち合いをしていた。


「確か建物は、魔法を使って良い場所や魔法に属する部活動に使うだったか。そして、外ではあのように武術などを行うと」


前世と違うのはサッカーや野球がないくらいで、スポーツといえばテニスやバスケ、後は何故か水泳などがあるらしい。

ちなみに俺が行きたい茶道などは校舎の中にある。

ひとまず馬術部は気になるので、そのまま近づいていく。

すると、一頭の馬の様子がおかしいことに気づいた。


「どうした!?」


「ヒヒーン!」


「そっちは違——ワアァァ!?」


なんと馬が板の壁を壊し、そのまま校庭に放たれてしまう。

このままでは生徒達に怪我人が出るかもしれない。

ただ……不幸中の幸いというか、その馬は俺に向かって来ていた。


「そ、そこの人、退いてください!」


「心配はいらない! そのまま来ると良い!」


俺は全身に魔力を通し、腰を深く落として態勢を整える。

そして馬との距離がゼロ距離になった瞬間——両手で馬を押さえつけた!


「ヒヒーン!?」


「どうどう、落ち着け、大丈夫だ」


「……ヒヒーン」


「よし、良い子だ」


止めた後に顔をポンポンしてあげると大人しくなる。

しかし、随分とタイミングが良いな。

すると、騎馬をしていた生徒が慌てて降りて来た。

長い金髪を片結びし、細身で整った容姿の持ち主だ。

身長は俺より低いが、中々に高くてすらってしている。


「お、お怪我は!?」


「大したことないから平気だ」


「ほっ……しかし、すごいですね。馬の突撃を生身で受け止めるなんて」


「これでも鍛えてるからな」


何せ、あのオルトスの体当たりを小さな時から受けて来た。

アレに比べたら、可愛いものである。

あいつの突進であれば、木の板ではなく岩すら破壊するだろう。


「そういう問題ではないような……これは失礼しました、僕の名前はレインと言います。この度には助けて頂きありがとうございます」


「たまたまなので気にしないでほしい。俺の名前はアイクという」


「アイク……まさかアスカロン家!?」


「知っているのだろうか?」


「もちろんですとも! まさか、あの憧れのアスカロン家の方に会えるなんて! ささ、立ち話もなんですからこちらに」


「では、お邪魔させてもらおうか」


元々馬術部には用があったので、そのままついていくことに。


その際に目の端で何かが動いた気配がした。


ひとまず放っておき、俺は気づかないふりをするのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る