第22話 異変?

その後、食事を済ませたら暫しの休憩を取る。


見張り台からお茶を取ってきて、それをベンチにのんびり座って飲む。


気持ち良い風と、気持ちの良い日差し……そして何より、隣にセレナ様がいることが素晴らしい。


俺は久々の安らぎを感じつつ、改めて聞いてみることにした。


「そういえば、学校は行くか決めたのか?」


「いえ、まだです。でも、移動距離を考えるとそろそろ決めないとですね。最悪、休学するか辞めるか……」


「ふむ……」


これは中々に難しい問題だ。

彼女はどちらにいた方が安全であり、幸せであるか。

ここは危険地だが、学校も彼女にとっては危険かもしれない。

ただ俺が出来ることは、彼女の望みを叶えることだろう。


「ここにいてはダメですか?」


「いや、前も言ったが好きなだけいて良い。ただ、折角の学生生活を送らないのもどうなのかと思ってな。無論、特にやりたいことがないなら良いが」


「やりたいこと……実は沢山あるんです。生徒会の引き継ぎもしてないし、習いたい授業もありましたし、仲のいい友達にお別れも言わずに来たり。あと、その……領地経営について学びたかったり」


元々責任感の強い彼女のことだ、やはり気になっていたか。

それに学生時代というのは貴重だと前世の記憶がある俺は知っている。

ただ最後についてはよくわからん。


「ならば、戻るのも一つの手だな」


でも、戻るとみんなに迷惑が……」


「それなら問題ない——使


「そ、それって……いけません! 私などのために!」


聡い彼女は気づいたか。

そう、これはアスカロン家が王家に要求できる権利。

建国記にも記されており、王家はこれを無下には出来ない。

そもそもユアン陛下なら、元々責任を感じているので平気だろう。


「それで貴女の身が守れるなら安いものだ」


「どうして、私なんかにそこまで……」


「それは……待て、オルトスの様子が変だ」


のんびり寝そべっていたオルトスが、勢いよく駆け上がってくる。

そして俺の前で急停車し、『早く乗れ!』と促す。


「ブルッ!」


「……何かあったのだな? セレナ、君はここにいてくれ。見張り台の中に入れば多少は安全だ」


「わ、私も行きます!邪魔だと思ったら捨てても構いませんから!」


「いや、しかしだな……」


「お願いします! 私も回復魔法が使えるので役に立ちたいです!」


どうする? ここに置いていっても安全とは限らんか?

そもそも、これは何かのイベントなのか?

……問答してる時間がもったいないか。

何があろうとも、俺が彼女を守り抜けば良いだけの話だ。


「わかった。ただし、俺の指示には従ってもらう」


「はいっ! ありがとうございます!」


「では見張り台に指示を出し次第向かうとしよう」


その後、見張り台の兵士達に指示を出す。

ここで守る者、都市に知らせる者、残りは俺についてくると志願した兵達。

たった20名程度だが、あるとないでは雲泥の差だろう。


「皆の者、突然すまない。だが、俺を信じてついてきてくれ」


「「「はっ!!!」」」


「よし……オルトス! 頼んだぞ!」


「ブルルッ!」


オルトスに道案内を任せ、ひたすらに草原を駆け抜ける。


そして走り続けること、1時間くらいだろうか……ようやく、状況を理解した。


そこにいたのは、山々を超えてきたヴェルダン兵の集団だった。

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