100年後
老女「あなたと生涯を共にできて……リルシアは幸せでございました……」
俺「ああ……」
ハーレムの美女をどれだけ増やしても、どんなに愛しても、皆俺を置いて先に逝ってしまう。今日も6人程看取ったところだ。皆俺の手を取り、幸せそうな顔で寿命で死んでいく。最古参のメンバーだったリルシアも俺を置いて老衰で死んでいった。
無数ともいえる死を目にして、俺の心は乾ききっていた。
見てられない、俺は今すぐ魔神に望んでハーレムの人間を全員復活させたうえで全員の年齢を理想値で固定し、俺同様に不老不死にした。もうハーレムでは誰も死なない、ようやく安定した幸せを手に入れたのだろうか?
そして俺は気づいた。
俺には子供がいない、自らを引き継いでくれるものがいない。
子供を作ることにした、ハーレムの中でも最も「母親適正」がありそうな人物を一人選び、魔神に望んで避妊属性を解除してもらい、入念な子作りの末、最愛の娘を一人作った。俺が全ての愛情を注げる最高の娘だ。そう願い、かなえられた。
そして、娘が文字通り最高の人生を与えられるよう魔神に願った。
久々に”幸せ”を実感した気がする。
あれ? 俺は基本的には”幸せ”なはずだしそれをずっと維持しているはずだ。
まぁいい、娘が望むものは何でもくれてやろう。娘の幸せこそが俺の幸せであり、娘の幸福な生涯こそがこれからの俺の幸福なのだ。俺は娘が望むものは何でもくれてやり、理想の夫と理想の子供を授け、何一つ不自由ない生活をさせた。
だが、ここで問題が発生した。
娘は成長を望んだ、もちろん娘の望みとして娘を成長させた。
娘だって人の親になったんだ、人の親としての年齢になりたかろう。
そうしたら、だ、娘は自らに付与された「不老不死」を解除して寿命通りに生きることを望んだ。自分の子よりも生き続けることがつらいらしい。俺はその強い願いに押され、娘の不老不死を解除した。俺の娘は「死」を選んだのだ。
娘は俺より先に、自らの子を置いて寿命で幸せに死んだ。
それだけじゃない。
娘の大勢の子供たち、つまり俺から見れば目に入れても痛くない孫たちも同様に「寿命による死」を選んだ。自分の愛する子孫たちがすまなそうに懇願する中、一人一人不老不死を解除していく俺の精神は崩壊寸前にまで追い詰められた。
その時ふと気が付いた。
世界はハーレムの中だけじゃない。
世界の全ては俺を置いて皆先に寿命で死んでしまっている。
世界との決定的な断絶を感じた瞬間だった。
俺は急いで魔神に願った。この世界に存在する全ての人間が不老不死で一切の不幸が起こらないようにしてくれと。不老不死の解除も願わず健やかで理想年齢を留めるようにしろ。と。人口爆発とかの問題はどうにか矛盾なきよう解決してくれと。
その瞬間、全世界は幸せな状態で固定した。
もう誰も不幸になることは、ない。
そのはずだ、そうに違いない、魔神が全て回避してくれる。
世界の幸せは、俺の幸せなのだ。
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