お嬢様がた、デザートにCheese!はいかが?

 女の子は、いつだってプリンセスだ。
 
 プリンセスには王子様が必要で、それも1人とは限らない。
 たくさんの王子様がいたって、困らない。
 我らがお姫様は、最後には必ず1人に決めるのだから。
 だからこそ本作は、少女マンガを耽溺する読み手にぜひ読んでほしい。


 本作は、現代世界に魔法というスパイスを加えた恋愛ドラマ。
 主人公はハナ。そしてこの少女の友であるミツとレン。
 この3人は、子どもの頃からなかよしだった。

 1人の女の子と、2人の男の子。
 友情とその向こうにある、マーガレットの花言葉のような関係。
 絆という名のりぼんで結ばれた3人。
 だけど、ひとりの男の子は、自分の夢に向かって旅立っていく。

 残された女の子は、もう1人の男の子や、新たに出会う仲間たちと友情を深めていく。
 それは、おとめ座で一番輝く星、スピカを目指して一歩ずつ大人の階段を登るような旅路だ。

 でも、その旅路はけして順調ではない。ある事件で、ハナは心に深い傷を負う。
 その痛みを癒したのは、言葉ではない。心からのKISSだった。

 
 注意してほしいのは、本作は、ただのラブロマンスじゃないことだ。
 多様な伏線。一筋縄じゃないキャラクター。絡み合う人間関係が、奥行きのあるメロディを奏でている。
 ときに深く静かに、ときにはなばなしく物語は進む。
 そんな世界を、右に行ったり、左に行ったり、境界上を揺れ動くハナ。
 でも、最後には、ハナが自分が納得する花束を手に入れる。
 これは、そんな女の子による、女の子の為のビルドゥングスロマン作品だ。
 
 クッキーでも口にしながら、毎日ちょっとずつでも読んでみてほしい。
 ハナと一緒に、楽しければ笑えばいいし、悲しくなれば泣いちゃおう。
 きっと、明日から元気になれること請け合いだ。


 ※本作には少しショックの強いシーンもあります。苦手な方は注意してください。