episode3
「おい、聞いてるか?」
「え…ああ、すみません!」
職場の先輩から話し掛けられていたのを気付かなかった。4通目になる彼女の手紙。別れたことを彼女も理解しているから家に来ないはずなのに、手紙ではまだ付き合ってることになってる。
「顔色悪いぞ?風邪か?」
「いえ、大丈夫です」
仕事にも支障が出てきた。彼女は長い文を書くタイプなのに、送られてくる手紙は短い。裏をどうしても考えてしまう。そして、多すぎる記念日にも対応できなかった自分や、幸せそうな笑顔の彼女を思い出す度に罪悪感が込み上げる。
今日も家に帰ったら手紙が届いているんだろうか。精神が日常に支障をきたす前に、しばらく家に帰るのを避けるべき気がした。
──7日後
あなたが好き。すごく好き。胸が熱くなるって不思議な感覚だけど、あなたと離れて帰る時、いつもこうだったよ。そして、切なくて幸せな気持ちになるの。
仕草もニオイも声も少し困った笑顔も全部、好き。今すぐ会いたい。
今ね、あの思い出の場所にいるの。だって記念日でしょ?あの時はあなたの助手席にいたけど、今日は寒いな。
今この瞬間のこの景色をあなたにも見せたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます