episode3

「おい、聞いてるか?」

「え…ああ、すみません!」

職場の先輩から話し掛けられていたのを気付かなかった。4通目になる彼女の手紙。別れたことを彼女も理解しているから家に来ないはずなのに、手紙ではまだ付き合ってることになってる。

「顔色悪いぞ?風邪か?」

「いえ、大丈夫です」

仕事にも支障が出てきた。彼女は長い文を書くタイプなのに、送られてくる手紙は短い。裏をどうしても考えてしまう。そして、多すぎる記念日にも対応できなかった自分や、幸せそうな笑顔の彼女を思い出す度に罪悪感が込み上げる。

今日も家に帰ったら手紙が届いているんだろうか。精神が日常に支障をきたす前に、しばらく家に帰るのを避けるべき気がした。



──7日後


あなたが好き。すごく好き。胸が熱くなるって不思議な感覚だけど、あなたと離れて帰る時、いつもこうだったよ。そして、切なくて幸せな気持ちになるの。

仕草もニオイも声も少し困った笑顔も全部、好き。今すぐ会いたい。

今ね、あの思い出の場所にいるの。だって記念日でしょ?あの時はあなたの助手席にいたけど、今日は寒いな。

今この瞬間のこの景色をあなたにも見せたい。

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