「4話 – 歌う兵器」

ピ―― ピ―― ピ――


簡素な部屋の中で、今日も変わらず目覚ましのベルが鳴り響いた。

ジンは重たい瞼をゆっくりと持ち上げる。


壁には飾りも写真もなく、ハンガーすら掛かっていない。

まるで「誰かが住んでいる部屋」ではなく、ただの一時的な宿泊所のようだった。


ベッド脇の引き出しは空っぽで、その上には白いキューブと目覚まし時計がひとつだけ。

ジンは手を伸ばし、金属製のボタンを押して音を止めた。

「カチリ」と乾いた音が鳴り、一瞬だけ静寂が訪れる。


「……また、同じ一日が始まるのか。」


彼は小さく呟き、ベッドから体を起こした。

時計の針は09:00を指している。


同じ時間。

同じアラーム。

同じ起床。

――あるいは、昨日の夢の延長に過ぎないのかもしれない。



ベッド脇のラックには、DECGから支給されたパイロットスーツが規則正しく掛けられていた。

着替えながら、ジンはふと動きを止める。


ポケットを探っても何も出てこない。

メモ帳も、ペンも、小さな玩具すらも。

自分という存在を証明するものは――何ひとつ無かった。


「……俺に残されたのは、この目覚まし時計だけか。」


その事実が、奇妙なほど胸を締め付けた。

冷たい鉄の時計だけが、夢と現実の境界を測る唯一の証のように思えた。



灰色の廊下を進むジンの足音は、無機質な壁に反響して乾いたリズムを刻む。

今日も同じ通路、同じ人工灯、同じ無表情な壁。


ただ一つ違うのは――今日には「呼び出し」という目的があることだった。


「9486番、ジン。召集命令。」


壁面スピーカーが冷徹に告げる。

ジンは短く頷き、答えた。


「……了解。」



ストネン惑星の上空。

濃い黒雲が渦巻く成層圏に、巨大なステージが浮かんでいた。


本来なら戦闘機が交錯するべき空域。

だが今そこに広がっているのは、鉄骨で組み上げられた“空中コンサート・プラットフォーム”だった。


光を反射する鋼の骨組み、宙に浮かぶ数十のキューブスクリーン。

観客席は存在せず、その代わりに軍用ドローンと無数の兵器が周囲を取り囲んでいた。

今日の観客は――軍隊、そして戦場そのものだった。



「転送回路リンク完了、ノイズ補正済みだゲコ。」


ステージ中央に、小さな猫のホログラムが現れる。

やわらかい輪郭を放ちながらも、瞳は冷たく機械的に輝いていた。


耳がピクリと光ると同時に、周囲の増幅器が一斉に稼働する。


――ジェイコア。

モスナインのマネージャーであり、DECG音響転送システムの中枢そのもの。

言葉の語尾に「ゲコ」という蛙鳴きを混ぜる、不思議に愛嬌を帯びた存在。


「干渉周波数12.4テラヘルツ、同期完了だゲコ。

ルビルビ、シャフィナ、準備はいいゲコ?」


ステージ両脇のゲートが開き、二人の影が姿を現す。


ルビルビ――赤の照明を浴び、煌めく衣装を纏って腕を掲げる。

シャフィナ――青の光に包まれ、無表情のまま、一糸乱れぬ足取りで歩み出る。


二人の背に光の翼が広がり、スクリーンに名前が閃光のように刻まれた。


観客の代わりに、兵士たちが一斉に歓声を上げる。

それは「歓喜」というより「軍事的合図」に近い熱狂だった。


上空で待機するジンの機体のコックピットから、その光景が映し出される。


「……これが戦場、だと?」


HUDには《文化鎮圧作戦 / 公開コンサート》と表示されていた。

しかしどう見ても、軍事行動ではなくアイドルショー。

胸の奥に、説明のつかない違和感が広がっていく。


ジェイコアが再び叫ぶ。

「通信回路、転送レベル第一段階開放だゲコ。

《Crimson Parade》開始だゲコ!」


轟音のようなベースと共に、赤い光が爆ぜた。


ルビルビの声が空を裂き、響き渡る。

「絹の上をwalking、揺らがぬ完璧なmanikin――」


すぐさま、シャフィナの冷徹な歌声が重なる。

「鏡の向こうにいるのはit’s me、無言で踊る私 dancing Queen――」


ジンの指先が震えた。

ただのショーではない。

HUDが揺らぎ、波形が走る。


《Heart Sync》


一瞬だけ映し出された赤い文字。

「……なんだ、これは。」


機体が歌に反応している。

それは“演奏”ではなく“指揮”。

兵士たちの熱狂は、娯楽ではなく「統制」に近い。


ジェイコアの声が割り込む。

「敵周波数干渉率23%突破だゲコ。兵力士気上昇率17%増加だゲコ。」


可愛らしい口調とは裏腹に、冷たい数値が無慈悲に突きつけられる。

ジンの背筋に寒気が走った。


――歌が、機体を動かしている。


♪♪♪


ガラス張りの訓練室。

壁一面を覆う鏡の前で、幼い少女たちが一糸乱れぬ動作でダンスを繰り返していた。


「左足、右足、リズムを合わせろ! 息を吸え、感情は切り捨てろ!」


コーチの怒声が鋭く響く。


その中で、ひときわ速く、滑らかに動く影があった。

――ジェスパー。

彼女の動きは炎のように鋭く、瞳は熱を帯びて輝いていた。


だが鏡に映る顔は、すでに蒼白だった。


「……っ!」


呼吸を整えようとした瞬間、胸が締め付けられる。

酸素が奪われ、肺が焼けるような痛み。

膝が折れ、床に崩れ落ちる。


「ジェスパー、またか! 立て!」


コーチの怒声が飛ぶ。


――医務室。

心電図のモニターに、不規則な波形が跳ねていた。


「不整脈だ。このままでは舞台に立つのは危険だ。」

医師は冷ややかに告げる。


ジェスパーはその視線を真正面から受け止め、ただ一言を問う。

「……方法は?」


「安定化手術だ。心臓に“位相リング”を埋め込めば、鼓動を任意に固定できる。

舞台で長く持たせられる。」


少女は一瞬だけ目を閉じ――そして、微笑んだ。

「……輝けるのなら、それでいい。」


手術台。

冷たい金属のアームが胸を開き、銀色のリングが心臓に組み込まれる。


「ピ―― ピ―― ピ――」


機械音と心臓の鼓動が、ひとつに重なった。



♪♪♪


無機質で寒々しい研究所。

実験台に座る幼い少女の肌は、月明かりのように白かった。

後頭部には何十本もの電極ケーブルが突き刺さっている。


「波動偏差、抑制成功。周波数固定、完了。」

「血液サンプルは64回連続で失敗……だが今回は直接適用する。」


冷徹な研究員たちの声。


注射針が少女の腕に突き立ち、透明な液体が吸い出される。

その血液は別の実験体に注入された――が、彼らは次々と悲鳴を上げ、崩れ落ちた。


「六十四回目の実験、失敗。廃棄。」


無情な宣告。

研究員たちは顔色ひとつ変えずに頷く。


「残るは最後の方法だ。本体そのものを調律する。」


少女の胸に、冷却された金属装置が置かれた。

心電図モニターが閃光を放ち、線は一本の直線へと固定される。


「位相固定、成功。波動抑制率100%。」


ひとりの研究員が記録しながら呟く。

「……この子は、今日からN-65だ。」


その瞬間、少女は静かに目を開いた。

唇がわずかに動き、感情の欠片もない旋律が洩れる。


感情はなかった。

だが、その声は確かに“共鳴”を生んでいた。


研究員は満足げに頷き、記録に書き加える。

「感情なき響き――完璧だ。」


♪♪♪


ルビルビの心臓に埋め込まれた銀色のリングが、ライトを受けて鋭く光った。

シャピナの心電図は、一本の直線のまま冷たく固定されている。


二つの映像が重なり合った瞬間――現在の《Crimson Parade》のステージが爆発的に照らし出された。


ジンのHUDには再び赤い数値が点滅する。

[Heart Sync / 72%]


心臓が、音楽と同じ拍で鳴っている。

胸の奥が、リズムと一体化するように鼓動を刻んでいた。


ジンは息を呑み、低くつぶやく。

「……これは、ただのステージじゃない。あの二人そのものが――歌う兵器だ。」



ルビルビの声が一気に高まる。

「息をしなくてもいい、emotion―― 眩しく光ってる、魅惑のパレード!」


冷徹なシャピナの声が絡みつく。

「Poker face、震えるまつ毛の上―― 本当は揺れている、illumination――」


二つの声が交差した瞬間、HUD全体が大きく揺れた。

画面一面に紫色の波形が走る。

[Heart Sync / 42%]


「……ハート・シンク?」

ジンの声が震える。

これは単なるHUDのバグではない。

機体そのものが、歌に同調している――!



その時、耳に馴染んだ声が割り込んできた。

「伝送干渉レベル、38%突破。兵力士気上昇、29%増加だケグル。

通信混線率、臨界値に接近中だケグル。」


ジェイコアだった。

小さな猫型アバターが舞台の脇で跳ねながら、冷徹な統計を読み上げる。

可愛らしい語尾とは裏腹に、その数値は鋭く突き刺さった。


ジンの背筋に冷気が走る。

歌が兵力の通信網を侵食していた。

指令も、仲間同士の会話も、一瞬ごとに歪んでいく。



「通信が…乱れてる! ノイズがっ――」

「HUDが遅延してる!」

「心拍が異常に上がって…これは一体――」


パイロットたちの悲鳴混じりの無線が飛び交う。

ジンは奥歯を噛み締めた。


――歌が、人を揺さぶっている。

感情を煽り、機体にまで干渉している。


ルビルビは指先で空を突き、叫んだ。

「敵の周波数、全部かき消して!」


シャピナは冷ややかに報告する。

「干渉レベル、67%到達。」


すかさずジェイコアが付け加えた。

「通信網、第3回路崩壊だケグル。兵力感応度、目標値オーバーだケグル。」


ジンのHUDには新しい警告が走った。

[Heart Sync – ベータ版 / 実験モード 起動]


「……実験曲?」

ジンの目が大きく見開かれる。

これはDECGが密かにテストしていた“制御曲”。

単なる応援歌なんかじゃない――!



周囲の機体が次々と震え始めた。

何機かは制御を失い、勝手にロールしながら墜落していく。

無線には悲鳴が混じる。


「なぜ…操縦桿が効かない!」

「HUDが滅茶苦茶だ、止まれ――!」


その混乱の中、歌はさらに激しさを増していった。

ルビルビとシャピナの声が重なり、戦場は完全に音楽の波動に呑み込まれていく。


ジンのHUDにはまたも数値が点滅した。

[Heart Sync / 73%]


機体のエンジンが歌のリズムに合わせて震えている。

「……なぜ、俺の機体まで――」


だが冷徹な声が即座に切り捨てた。

「9486、任務に集中しろ。不要な解析は中止せよ。」


ジンの手が震えた。

――これはショーなんかじゃない。

歌そのものが、武器だ。


♪♪♪


赤と青の光が交差し、虚空そのものを震わせた。

ルビルビとシャピナの声が絡み合うと、戦場は完全に音楽のリズムに飲み込まれていく。


ジンは荒く息をつきながらHUDを睨んだ。

しかし、画面はすでに制御不能に近かった。


[Heart Sync / 82%]

[干渉レベル:危険臨界値突破]


紫の波形が四方に炸裂し、HUD全体を覆っていく。

心臓の鼓動がリズムと完全に一致し、まるで胸の奥にもう一つの鼓が鳴り響いているようだった。


ジンは無意識に手を胸に当てた。

――なぜ、俺の心臓まで歌に同調しているんだ……!?



兵士たちは次々に混乱へと陥っていった。


「操縦桿が応答しない!」

「推力制御が勝手に動いてる!」

「HUDに歌詞が…字幕みたいに流れてるぞ――」


実際、いくつかの機体の画面には歌詞がデータパケットのように走っていた。


“…目を閉じても鮮明な lie lie lie…”


ジンの呼吸が止まった。

歌詞そのものが命令のようにシステムを侵食している。

通信網を超えて、直接〈身体〉に刻み込むように。



「ワスプ。」

冷徹な声が再び響いた。

「任務に集中しろ。不要な干渉は中止せよ。」


ジンは必死に抗議した。

「……俺のHUDに異常が――」


「報告は不要だ。これはDECGが管理している範囲だ。」


冷酷に切り捨てられる一言。

ジンは戦慄した。

――彼らは知っている。歌が兵器であることを。



HUDの波形が暴走し、紫の閃光が視界を裂いた。

ジンは反射的に目を閉じた。

だが閉じてもなお、旋律は鼓膜の奥で鳴り響いていた。


“…俺は本物だ、Do you believe in the truth?…”


心臓が潰れそうな既視感。

その瞬間、機体エンジンが爆発的に震え、音楽のリズムと完全に一致した。

まるで機械ではなく、生き物のように鼓動していた。


「ワスプ、位置逸脱中。警告する。」

指令が再び飛ぶ。


だがジンは応じなかった。

代わりに操縦桿を握り締め、震える身体を押さえつけた。


HUDの上に、歌と共に新たなメッセージが重なった。

[Heart Sync – 実験モード 起動]

[お前は、聞きすぎている]


ジンの指先が氷のように冷えた。

「……誰かが……俺を見ている……?」



ジェイコアの声が割り込む。

「Heart Sync 波形、目標値超過だケグル。

ワスプ、感応率過剰上昇。

司令部、制御権を一部制限すべきだケグル。」


瞬間、ジンの操縦桿が鉛のように重くなった。

「……っ!」

奥歯を食いしばる。

ジェイコアが自分の操縦までも干渉している――!


しかし歌は止まらなかった。


ルビルビの声が炸裂する。

「Twilight―― 星を踏みしめたつま先に、Stardustのように砕け散る emotion!」


冷たいシャピナの声が重なる。

「Crimson Parade―― 完璧な錯覚、気づいているでしょう?」


リズムが戦場を飲み込み、兵士たちの精神はさらに高揚していった。

だがジンだけが、その波動の奥にある〈不協和音〉を聞き取っていた。


「……これは……武器だ。応援歌なんかじゃない。」



歓声と波動が最高潮に達したその時。

偵察ドローンが緊急報告を送信した。


[敵勢力接近 / 座標:ストネン防衛軍 残存部隊]


ジンはHUDを睨みつけた。

暗い地平線の彼方から、数十機の防衛軍機体が闇を切り裂いて迫ってくる。

その砲口には、すでに火が灯っていた。



「コンサートは終わりだケグル。」

ジェイコアの声が低く響いた。

「防衛軍、交戦範囲に突入。送信終了の準備に入るケグル。」


ルビルビは赤いスポットライトの中で、妖艶に微笑んだ。

「ショーは終わりよ。」


その一言と共に、舞台の照明が落ち、戦場は暗闇に沈んだ。


だが彼女の声だけが鋭く響いた。

「ここからが本当――。」



シャピナは迷いなく頷いた。

「送信停止。戦術モードに移行。」


直後、ステージに敷かれていた音響送信装置が一斉に沈黙した。

代わりに格納ゲートが開き、銀色の翼が静かに姿を現す。


シャピナ専用のVF――冷徹な曲線と鋭利なシルエットを持つ機体が、無音のまま離陸した。


ルビルビもまた、背後の赤光を背負いながら機体へと歩み入った。

操縦桿を握った瞬間、HUDが真紅に点滅する。


ジンの喉が詰まった。

「……アイドルが、直接戦場に……?」


視界にルビルビの機体が映り込む。

紅玉のように輝く外装。

しなやかな曲線と、獰猛な兵装を併せ持つその姿――

アイドルでありながら、兵器パイロットでもあるという二重性。


その矛盾が、ジンの胸を激しく揺さぶった。



防衛軍の砲撃が始まった。

炎の弾道が空を裂く。


だがルビルビは微笑み、声を張り上げた。

「完璧な錯覚―― もう気づいたでしょ?」


その瞬間、彼女の機体は炎を突き抜け、一直線に突撃した。

歌と戦闘がひとつに融合する光景。


シャピナも後に続いた。

冷酷な声が無線を貫いた。

「交戦開始。すべての標的を無力化する。」


ジンのHUDが再び揺れる。

歌は途切れた。

だが波動の余韻は、なおも鼓膜を震わせていた。


彼は心の中で呟く。

「……歌と戦闘が重なっている。これは、ただのショーじゃない。」


♪♪♪


激烈だった交戦は、長くは続かなかった。

ストネン防衛軍の残存部隊は、DECGの圧倒的な火力とモスナインの文化波動の前に、抗う術もなく沈黙していった。


赤い炎が消え、戦場には再び静寂が訪れた。

残ったのは、砕け散った機体の残骸と、灰のように舞う火花だけだった。


ジンは息を荒げながらHUDを見つめた。


[任務完了 / 送信ログ終了]

[被害報告:なし / 成果:100%]


冷たい数字と統計だけが、虚しく画面を埋めていた。


だが――彼の胸の奥には、今もなお波動の余韻が震えていた。

あの旋律、あの鼓動。

数字では計れない「何か」が、確かに残っている。



その時、司令部の冷徹なメッセージが響いた。


「今回の作戦は成功裏に終わった。

モスナインの〈文化波動〉は敵を無力化し、我々の兵を鼓舞した。

これは――人類における文化的勝利である。」


同時に、報道用ドローンが撮影した映像が巨大なキューブスクリーンに映し出される。


ルビルビが赤い光の下で笑顔を振りまき、手を振る姿。

シャピナが無表情のまま、冷たく戦場を見据える姿。

そして、それに喝采を送る兵士たちの映像。


それはまるで――戦場そのものが舞台に変換されたかのような演出だった。


ジンは小さく笑った。

冷笑だった。


「これが……勝利だと?

俺が見たのは……人を絡め取る〈歌〉だ。」



♪♪♪


宿舎に戻ったジンは、重い溜息をつきながらパイロットスーツを脱ぎ捨てた。

汗に濡れたインナーが肌に張り付き、鼓動がまだ完全には収まっていなかった。


彼は独り言のように呟いた。


「……歌で人を動かせるのなら、

それはもう――武器だろ。」


その声は低かったが、確かな確信を帯びていた。



背後から影が忍び寄る。

無言のまま、壁に背を預ける長身の男。


――サイレンス。


彼はしばしジンを見つめると、口を開いた。


「お前は……聞きすぎているな。」


その言葉は単なる忠告ではなかった。

鋭い刃のような〈警告〉だった。


ジンは答えなかった。

ただ、視線を夜の窓の外へと向けた。


ニュコアの夜空は、依然として赤い砂塵で霞んでいた。

しかしその奥深くで、彼だけが感じ取れる〈別の波動〉が脈打っていた。


“…俺は本物だ。Do you believe in the truth?…”


ジンは拳を握りしめた。

データには残らなくとも、感覚は決して消えない。


――それこそが、本当の〈真実〉なのだ。

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