【ノあさんとのコラボ企画!】『かぐや姫の脱獄!』✖️『高校で再会した幼馴染〜2人は前世の剣士(宿敵)だった記憶が蘇っていて…「「お前を絶対に許さない!…けれど好き。」」な展開になるんだが。』

晴れドコロ(旧・どこにでもいる晴れ男)

第一話 少し早めのW誕生日プレゼント

⚪︎1年半の時を経て(蒼真視点)


はあぁぁ…。


 ここ最近、俺、内海蒼真(うつみ・そうま)はため息ばかりついていた。

 まぁ頻度で言えば、2分間に1回くらいだ。それを毎日。

 

はあぁぁぁぁ…。


 それはなぜかって?

 答えはカンタンだ。


はあぁぁぁぁ…。


柊「どーしたの。蒼真。そんなにため息ばっかりついて。また悩み事でもあるの?」


「柊…?あ、うん。なんか疲れが取れてなくてな…」


柊「えー!大丈夫?!蒼真、また何か抱え込んでるの?ほーら、頭をこっちに寄せて。私が蒼真の頭を全力なでなですれば、疲れはきっと取れるよ〜」


「ははっ。気遣ってくれてありがと柊。だけど全力はやめような。そんなんされちゃぁ俺の頭皮が一瞬にして天に召されちゃうから」


 俺の幼馴染、宮園柊(みやぞの・ひいらぎ)のことが頭から離れないからだ。

 一度でも目を閉じれば脳裏に柊が浮かぶし、夜寝る時も、教室で居眠りする時も。

 つまり、『寝ても覚めても』ってヤツだ。


柊「分かったよー。じゃあ『蒼真が気持ち良すぎて寝ちゃうくらい優しい優しい柊お姉ちゃんのありがたいなでなでスペシャル』で良い?」


 すっごいネーミングセンス…じゃなくて!

 

「どっちかというと俺の方がお兄ちゃんで、柊が妹みたいな感じじゃない?」


 すると柊はめちゃくちゃ可愛く顔をぷくっと膨らませて、


柊「私の方が歳上ですぅ〜。だって私の方が産まれたのが10分早かったらしいし?私がお姉ちゃんで間違いないよね?」


 というのだ。可愛すぎる。てか10分なんて誤差だろ。


「はいはい。お姉ちゃんね」


柊「むぅ…蒼真絶対納得してないじゃん。どーせ『10分なんて誤差だろ』って思ってるんでしょ?私わかるもん。そんな顔してるし」


「してない!」


柊「してる!」


 …そんな他愛もない会話を柊とするのが、俺にとって今一番の幸せだ。

 1年の夏…いや。

 思い出すと長くなるのでやめておこう。

 とにかく、俺たちはこの1年半、たくさんのことがあった。

 何度も何度も死にかけたし、心が折れかけたし、柊たちともたくさんたくさんぶつかった。

 でも…そんな激動の1年半を一緒に乗り越えて、気づけたことがあった。

 それは…

 柊のことが幼馴染として、相棒としてではなくて…


恋愛的な意味で好きだと。


 ただ…。


はぁ…。


柊「むうっー。またため息ついてるー。ダメだよー」


 ため息が止まらない。

 この想いはもう、溢れんばかりなんだ。

 でも…

 心の奥底で『やめておけ。早まるな。今はまだその時じゃない』と語りかけてくる何か。

 『蒼蓮』か…?いや、それはもう解決したはずだ。

 たぶん、俺がヘタレなだけ。

 

「分かった分かった。もうため息つかないよ」

 

柊「うんうん!そうだよそうだよ!蒼真にため息なんて似合わないから!」


「心配してくれてありがとな」


柊「ぜーんぜん構わないよっ!あっ!ちょっとお花摘みに行ってくるね!」


 そう言って柊はとてててて…と足早に去っていった。

 どんだけトイレを我慢してたんだ…。


「ああ…なんか…『これだっ!』ってなるようないい機会ないかな…」


 と、俺は誰にも聞こえないような声量で独り言を呟き、次の授業の準備を始めたのだった。





⚪︎1年半の時を経て… (柊視点)

 

とてとてとてとてとて…きいっ!ぱたん!


 私はトイレの個室のドアを乱暴に開け、その中に飛び込んだ。

 別に私は用を足したかったんじゃない。

 一刻も早く、だーれもいない空間に行きたかったから。


はあぁぁぁぁ…!


 思わずため息が漏れた。

 あれほど蒼真に『ため息をついちゃだめ!』って言ったのに、私がついちゃっているのは許して欲しい。

 最近蒼真と過ごしていると、ため息をつきたくなっちゃう。

 

「私、話してる時、顔を赤くなってたりしないよね?!」


 そうだったら最悪だ。

 もう、私の気持ちがわかってしまっているだろう。


「蒼真…やっぱり好きだなぁ…」


 私は蒼真のことが好き。

 もちろん、1年半前こっちに私が戻ってきて再会できた時から好きだったよ?

 でもまさか、前世で宿敵だったなんてね。

 自分の意思に関係なく憎しみとか湧いちゃったりしたけど、今はそういったものを諸々解決して、とーっても平和な日常を過ごしているってわけ。

 この1年半、蒼真たちと一緒に乗り越えたから、蒼真のことがさらに好きになっちゃったじゃん。

 全く…蒼真って罪な男の子だよねぇ…。

 イケメンだし、勉強もそこそこできるし、今じゃあ一部前世の力使って(ズルじゃないよね?)スポーツも上手くなってる。

 絶対モテるに決まってるじゃん。

 普通の女の子ならあんなことやこんなことされちゃったらコロッとおちちゃうと思う。絶対。


「ま、私もおちた1人なんだけど」


 そんなに好きならなんで告白しないのかって?

 いや、だって私が告白して振られたら恥ずかしいじゃん。


 蒼真の表情がずっと笑顔なんだもん。

 向こうの気持ちなんて普通の人間じゃわからないよ。あ、私たちは前世の力使えるから普通じゃないね。うん。

 

「はぁ…蒼真が、私のことどう思ってるか、わかればいいのに…」


 私はトイレでそう呟く。

 蒼真の気持ちの変化を見逃さないように、最近はずっと蒼真の近くにいたけど…。私にとって、それは毒みたい。

 

 むむむむむむ…

 お勉強はできても、こういうことはさっぱりみたい。どうしよう…。


キーンコーンカーンコーン♪


「あ?!やばい、早く戻らなくちゃ!授業に!遅れるぅ…!」


 予鈴の音が聞こえないくらいの勢いで、私はトイレを後にした。



──────────────────

 

⚪︎学校が終わり… (蒼真視点)


キーンコーンカーンコーン…♪


 授業終了のチャイムがなり、クラスのみんながゾロゾロと立ち上がり始めた。

 今日は水曜日。1週間が終われば、なんと3連休である。俺は嬉しいよ。

 さぁてと。帰る準備でもしますかね。柊がさっきから『まだ!?おそ〜い!』みたいな表情で見つめてくるので、早く準備して一緒に帰らなくては。

 しかし、そんな時に限って早く帰ることのできない『イベント』が舞い込んでくるのはもはや運命で、デスティニーである。しまった。どこぞの防衛大臣みたいなことを言ってしまった。失敬失敬。

 

???「蒼真、帰る準備をしてるとこ悪いんだが、それが終わったら、図書館の自習室に来てくれないか?」


 そう話しかけてきたのは、クラスメイトであり、俺の中学からの友人である高橋優太(たかはし・ゆうた)。

 サッカー部に所属する、クラスのお調子者。

 そんな優太が、やたら深刻そうな顔をして聞いてくるので、俺も断らずにはいられなくなった。


「おおう…いいけど…」


 そう答えると、向こうにいる柊の顔が、ほっぺたが焼いた餅のように膨らんでいく。ああ…後で柊の大好物のプリンでも買ってあげよう。


 俺の視線の先にあるものに気づいた優太は、慌てながら付け加えてきた。


優太「すまん、言い忘れてたぜ。言葉が足りなかった。宮園さんも一緒に来て欲しい。2人に話があるんだ。」


 柊の顔が驚きに変わった。

 そして、こくこくと頷いた。


優太「じゃ、待ってるから。2人とも、絶対来てくれよ」


俺&柊「分かった」


 そう言って優太は去っていった。


柊「一体なんだろうね?」


「さぁな。俺もわからん。とりま、準備終えて行こうぜ。」


柊「あのー私準備終わってるんですけど?蒼真さん早くしてくださーい」


「ごめんごめん」


 よし、行きますかね。


──────────────────────


⚪︎自習室にて… (柊視点)


高橋くんからの話ってなんだろう…?


 そんなことを思いながら、私と蒼真は図書室の奥、自習室の扉を開けた。

 

 そこにいたのは高橋くんと、もう1人…佐藤あかり(さとう・あかり)ちゃん。

 蒼真によると、高橋くん同様中学からの友人で、高橋くんとあかりちゃんは幼馴染って言ってた。つまり、私たちと一緒。

 

 好きな人が、すぐそばにいるのもね。


 私たちが入ると、2人はお話しをやめて、こっちにきた。

 ごめんね。楽しそうにお話ししてたのに、邪魔しちゃって。


「どうしたの?お話しって」


蒼真「深刻そうな顔だったから正直心配したんだが、その様子だと別に暗い話ではなさそうだな」


優太「あぁ…そうそう。2人に渡したいものがあったから。呼んだ。ごめんな」


あかり「優太って伝え方ヘタすぎるから。ごめんね。2人とも。後でこのバカにはお灸を据えておくから」


優太「酷くね?!後で覚えてろよ…。…とにかく、2人に渡したかったものはこれなんだ」


 そう言って蒼真と私に手渡してきたのは、それぞれ2枚の紙。

 よく見ると、特急の往復切符だった。

 それも、『藤別府ふじびゅう←→奈良なら』と。


蒼真「これは…奈良行きの特急券?どうして?」


優太「まだわからないか?来週の日曜日は何の日だ?2人とも」


 日曜日…日曜日…あ!


私&蒼真「あ、自分の誕生日だ」


あかり「ええ…?今まで人から言われるまで、自覚なかったのね?」


 なかった。忘れてた。


優太&あかり「少し早いけど誕生日おめでとう。これは、2人への誕生日プレゼント。2人には、。ぜひ、2人には楽しんでほしい。最近も、色々あっただろうから」


蒼真「それはそれは、ありがとう。嬉しいよ…ってえええええっ!?」


 りょ、旅行?!蒼真と?!2人っきりで?!


柊「ちょっとちょっとちょっと?!どういうこと?!りょ、旅行?!誕生日祝ってくれるのはすっごく嬉しいんだけど!だけどさ!プレゼントのスケール大きすぎない?お金とかどーしたの?!」

 

 蒼真は固まってる。そりゃそうだよね。こんなプレゼント。


優太「お金は…まぁなんとかした。な、あかり」


あかり「え、ええ…そうね。ほんのちょーっと高かったけど…。わ。ねえ、優太?」


優太「そうそう。この計画はかなり前から立てててな。サプライズがしたかったんだ。驚かせて悪かった」


 …やっぱり仲良いねこの2人。早く付き合っちゃえばいいのに。


蒼真「いやいや…嬉しいけど2人に悪いって。せめて行くなら4人で…」


「蒼真」


蒼真「柊?」


「せっかく2人が用意してくれたんだし、行こうよ。たぶん、行かない方が2人に悪いと思うんだけど。違う?」


蒼真「まあそうだけど…」


優太「俺からも言わせてもらうぞ蒼真。頼む。2人で行ってくれ。俺の言いたいことがわかったか蒼真?」


 高橋くんが蒼真をじっと見つめて、目で何かを訴える。

 すると、蒼真はハッとしたような表情になって、口を開いた。


蒼真「分かった。ありがとう2人とも。よし、柊。奈良に行こうか!」


「うん!ありがとう!高橋くん、あかりちゃん!」


 私は思わずあかりちゃんに抱きついてしまった。

 あかりちゃんは少し驚いたような顔をしたけど、そのままにしてくれた。

 そして…私の耳元で、そっと呟いた。もちろん、私にしか聞こえない大きさで。


あかり「柊ちゃん…この旅行で…絶対、ムードとシチュエーションを作るのよ…のを…私たち、楽しみに待ってるから」

 

「っ///!」


 とっくにあかりちゃんは気づいていたんだ。私の気持ちに。たぶん高橋くんもそうなんだろう…。ありがとう。

 

蒼真「柊ー?帰るぞー」


「あ!うん、帰ろっか!奈良旅行、楽しみだね!」


 絶対、この旅行で蒼真に気持ちを伝えてみせるんだから!


 まずは帰って計画を練らなくちゃ!


 そして私と蒼真は、高橋くんとあかりちゃんにさよならを言って、自習室を出た。

 帰りに蒼真がプリン買ってくれるって言ってたから嬉しいー!


──────────────────────

〜神視点〜


蒼真と柊が出ていった後。

放課後の自習室では、男女の微笑ましい口喧嘩が展開されており…

 

優太「全く…話の途中で何度も何度もバカバカと言いやがって…バカはお前だろ」


あかり「はぁ?何言ってるわけ?オツムが足りないっていう事実を言っただけよ」


優太「お?言ったな?!言ってくれたな?!いいだろう、勝負な?」


あかり「くだらない。どうせ負けるのに、見栄張っちゃって。かわいいでちゅねー」


優太「赤ちゃん言葉、きっも…正直引くわ。てかそんなこと言って、どーせ負けるのが怖いんだろ?なぁ?」


あかり「…」


優太「なんか言ったらどうだ?えぇ?」


あかり「うるっさいわねぇ!いいわよ!勝負!受けてやるわよ!その代わり、負けた方は1週間パシリね。おおかた、アホのアンタに勝機はないでしょうけど!」


優太「誰がアホだ!バ〜カ!」


あかり「優太に決まってんじゃない!ア〜ホ!」


「バカ!」「アホ!」「バカ!」「アホ!」


バチバチバチッ!


2人の間に火花が散る。距離は20センチちょっとなのだが。

2人はこれでお互いに片想いというわけで、神である私も正直困惑している。

これが俗にいう『ケンカップル』とかいうものなのか私はよくわからないが、こういうのはいずれくっつくだろう。

『蒼真と柊』の物語には、『優太とあかり』の物語が付属していると言っても過言ではないのだった…。


優太&あかり(自分たち2人分のお金じゃ足りないから、蒼真たちのためにってみんなからちょっとずつお金を集めたの、バレなくてよかったぁぁ)



第一話・終


次回『タイムスリップ!奈良旅行でかぐや姫(?)に出会う!?』


お楽しみに!




作者から一言

ノあさん、そして読者の皆さん、長らくお待たせしました…。




 






 


 


 



 

 


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