第七話 情報屋

「ごめんなさいお母様。遅くなりました」

「シエロ!心配したのよ。全然帰ってこないから!」


母は僕を抱きしめ、迎えてくれた。

僕はてっきり凄く怒られると思っていたが、どうやら心配が勝ってしまったようだ。

深く反省しよう。


「少し、友達とサフラニアの方に行ってまして、、、」

「サ、サフラニアに行ってたの!?」

「は、はい」

「サフラニアになんて連れて行ったことないのに良く行けたね」


すると横から父が口を挟んできた。

それもニヤニヤしながらだ。


「マーガレット家のお嬢様とのデートだもんな!」

「ちょ、お父様!べ、別にそんなんじゃありません!」

「こらお父さんからかわないの!まだ六歳よ」

「そうかそうか、悪かったなシエロ」


全くこれだから父は、、、

兄の時もそうだ、少し仲が良い異性の友達を兄が家に連れてきた時もすぐに彼女か!?

なんて茶化して兄に殴られていたな。


「それにしてもシエロ。まさかマーガレット家の事お友達になるなんて凄いね!」

「あ、ありがとうございます!」

「聞きたいことは沢山あるけれど、まずはご飯を食べましょうか」

「はい!ところでお兄様はまだ帰宅してないのですか?」


珍しく兄が家に帰ってきていない。

もしかして兄も、僕と同じか!

だとしたら兄の方が遅いから、帰ってきたら一言、言ってやろうじゃないか。


「あぁ、ソルなら今夜友達とご飯食べてくるって言ってたぞ!誰かと違ってちゃんと家を出る前に父さんと母さんに言ってたぞ!」


チッ。

兄は抜けがないな。

それから僕はご飯を食べながら、今日の出来事を話した。


「で、シエロ。今日はどうしてサフラニアに行ったの?」

「えっとそれは、、、」


さてどうしようか。

本当の事を言うか、セリカの母に言った事を言うか。

悩ましいところではあるが、ここは辻褄を合わせておこう。


「実は学校で使うノートを買いに、品が豊富なサフラニア行ってみたいと思いまして」

「それでマーガレット家の娘さんと?」

「はい!僕も一人は不安だったので案内してくれるって」

「そうなのね!シエロにお友達が出来て良かった!お母さん嬉しい!」

「ありがとうございます!」

「でも、マーガレット家の子を振り回したり、迷惑かけるのはダメだよ」

「そうだぞシエロ。お前が何かやらかしたらこの田舎の村一個くらい簡単に消されるかもしれないからな!」


マーガレット家、相当な貴族なんだろう。

父と母が知ってそうだし、少し聞いてみよう。


「あ、あのお母様、マーガッ、、、」

「で?シエロ。本当の理由は何かしら?」


え?どういうことだ?

本当の理由?

まさか、僕の完璧である嘘がばれているというのか!


「お、お母様?本当の理由って言うのはどういう事でしょうか?」

「シエロ、学校三日目でノートを急に新しく買うなんてあるの?お母さん嘘つく人嫌いよ」


ま、まさかばれているとは、、、

でもよく考えれば三日目で新しいノートなんておかしいに決まってる。

僕としたことが、、、

父は、驚いた顔をしていたので、父は騙せていただろう。

いや、六歳の嘘を見破れない時点で、どうかしてる気もするが、、、

それより、母に嫌われるのは嫌だ。


「ごめんなさい。お母様。僕は嘘を付きました」

「どうして嘘を付いたのか教えてくれる?」

「はい、実は探している人が居まして、、、」

「探している人?」


ここは隠さずに今日あった出来事をすべて話そう。

そもそも依頼も親に聞くってセリカと約束したので、話すしかなかった。


「リリア・マートル。僕の学校の先生です。突然長期休暇を取ると言って居なくなったのですが、、、」

「おいおい、先生が突然いなくなったってどうせ仕事が嫌で抜け出したとかじゃないのか?」

「お父さんは少し黙っていてください!」

「それで?続きを聞かせてシエロ」


僕はその後、スカラルト家が絡んでいるんじゃないかとか、集会場フォーラムで正式に依頼についてなどを話した。

あ、勿論僕が先生の事を可愛いとかそんな下心系は話していない。

父も母も少し厳しい顔をしていた。

そとの風の音が一瞬だけ聞こえた。


「ざっとこんな感じです、、、」

「良い?シエロ。まず、スカラルド家がーとかそういう決めつけは駄目よ」

「はい、お母様」

「それと、先生を探す件だけど、、、駄目です」


えっ、、、僕は駄目という言葉を聞いて身体の力が抜けた。

何故か了承を得られると思っていた。


「えっと、、、お母様、それは何故でしょうか?」

「シエロ。まずね先生が本当に休暇だったらどうするの?それを探し出して休暇してる先生を連れ出すの?」

「それは、、、」


母が言うことには反論の余地もなかった。

僕の作戦は尽きた。

それから兄が帰宅し状況を説明したが、兄も母と同じ意見だった。

父はどんまいと言いながら僕の肩をポンと叩いた。

結局今日はそれ以上話も進まずに終わった。


そして次の日の朝、馬車停でセリカと合流し馬車に揺られながら状況報告を行なった。

「それでシエロ!集会場フォーラムに依頼の件はどうなったの?」

「実は親に却下されまして、、、すみません、もう作戦は失敗しました」


僕は馬車から見えるサフラニアの景色を見ながら、落ち込んだ。

でも、母の言うとおりリリア先生がただの休暇なら邪魔する必要は無い。


「実はねシエロ、私も一応頼んでみたのよ」


え?セリカが親に?

マーガレット家が加担してくれるとは思えないが、セリカの中で何かが合ったのか?


「昨日ニナっていうメイドさんがいたでしょ?実はニナに聞かれたの本当は何しにサフラニアに言ったの?って」

「そうなんですか。実は僕も母にすぐに嘘がバレてしまいまして、、、」


やはり子供が考える嘘はすぐにバレししまうのだろう。

おそらくセリカの母も気づいてただろうな。


「それで、ニナに本当ことを言ったの、、、そしたらね!ニナがパパとママに内緒で協力してくれるって!」

「ほ、本当ですか!」


これはでかしたぞ!

やはり、メイドというのは素晴らしい!!

僕が大人になったらメイドは絶対に雇おう。


「で、では今日早速集会場フォーラムに向かいましょう!でも、ニナさんは来られるんでしょか?」

「来る必要はないわ!すでにこの依頼書を書いてもらったわ!」

「依頼書ですか!?これを申請すれば良いって事ですね!」

「そうよ!」


その依頼書をよく見てみると、リリア先生の特徴を捉えつつもリリアマートルと言う名前を出さずにしている。

そして、依頼人の名前はランデック・ソリテと描かれていた。

偽名を使うのは特定されない為だろうが、受付嬢からしたら嘘ってっすぐにバレそうだが、、、

まぁメイドのことだ何か考えがあるのだろう。


それから学校に着き全ての授業を受け、僕とセリカは再びサフラニアに向かった。

因みに今日は友達と遊んで帰ると言ってあるので、問題ない。

まぁ十九時までには帰宅する必要はあるが。


僕とセリカが集会場フォーラムの前まで来ると一人の男が近づいてきた。

フードを被り顔は見えない。身長は大人にしては小柄。


「よぉ待ってたぜ。マーガレットの娘とその友達」

「だ、誰でしょうか?」


僕とセリカは少し警戒をしながら返答した。

その男はフードを外し、顔を見せた。

頬には誰かに引っ掻かれた傷が残っており、茶色の髭が生えている。


「悪い悪い、そんなに警戒すんじゃねぇって!俺の名前はランデック・ソリテ情報屋だ」


ランデック・ソリテ、、、依頼書の!

どうしてここにいるんだ。


「ほら依頼書を出しな!」

「ちょ、ちょっと待ってください!どうしてあなたが僕たちを待っていて、今日ここに来ることを知っているのでしょうか?」

「あぁん?だから言っただろう?俺は情報屋だ、それにそこの嬢さんの所にいる悪い女に頼まれたんだよ」

「ニナを悪いとか言わないでくれる!?」

「へいへい、これだからマーガレットの所の依頼は、、、」


ニナがこの人に頼んだと言うことか。

あまりにも胡散臭いが、信用しても良いのか?

しかし、ここで止まってても仕方がない。

この人に託してみよう。


「セリカ、その依頼書をこの人に渡してくれますか?」

「で、でもシエロこの人、、、」

「大丈夫です。何かあれば僕が責任取りますから」

「ほう、この俺を信用してくれるってのは見る目があるじゃねぇか」

「今はこうするのが正しいと判断しただけです」


セリカはランデックに依頼書を渡した。

ランデックは依頼書に目を通すと、颯爽と集会場フォーラムの中に入って行く。

僕たちもランデックの後を急いで着いて行った。

僕とセリカが中に入った時には既に、ランデックは受付嬢と話をしていた。

早すぎる、、、


「と言うわけだねぇちゃん、この内容で依頼するぜぇー」

「分かりました。では、期限と報酬は如何なさいますでしょうか?」

「そうだなぁ、期限は二か月だ。報酬は、、、金貨十五枚だ」

「十五枚ですか!?、、、普通人捜しの依頼は多くて金貨二枚が相場ですが、本当によろしいでしょうか?」

「あぁ!それで頼むぜ!大事な客なんだ」


ランデックが僕たちの方に軽く視線を送ると、受付嬢の方が何かを察したのかすぐに冷静になった。

それにしてもランデックの話術は、見事だった。

僕とセリカは後ろから眺めているだけで終わった。

気づいた時には正式に依頼がかけられていた。


「では、最後に依頼内容の確認をさせていただきます」

「おうよ」

「依頼人:ランデック・ソリテ。

 依頼内容:十八~二十五歳程の歳で小柄な女性。白銀の髪が特徴。

 依頼理由:ダンジョンで助けられたお礼をしたい。

 期間:~二か月

 報酬:金貨十五枚

 以上でお間違いないでしょうか?」

「あぁ、合ってるぜ!それで頼むぜ!」

「分かりました。こちらで正式な依頼を発注いたします」


僕たちはそのままランデックに引っ張られる様に、後ろから付いていき集会場フォーラムの外に出た。

何というか、色々話がスムーズに進み過ぎて状況整理に脳が追い付いていなかった。


「あ、あのランデックさんちょっと待ってください、、、」

「どうした?例ならそこの嬢さんのメイドに言っときなぁ」

「あ、いえ、えっとーその、、、依頼理由がダンジョンのって」

「あぁ~あれは俺が適当に考えただけだぜ。なんであんたらがあの先生を探しているかは検討が付くがよ、本当の理由を書いてみろよ、、、なぁ分かるだろ?」


そうか。リリア先生を探しています!なんて依頼をしない理由は、先生が本当に休暇をしていた時の邪魔になるし、仮にスカラルド家が関与しているとなると、見つけた瞬間すぐに取り消される可能性があるからか。

恐らくランデックの考えはもっと深い理由なんだろうが、、、今僕が思いつく限りはこの位だ。

因みにセリカは地面に水で絵を描いて遊んでいる。


「な、なんとなく分かりました。今回は手伝っていただきありがとうございます」

「へいよ!因みに何か情報があれば俺に連絡が入る様になっている。だから進展があれば俺からあんたらに連絡してやるから、後は普通に過ごしてな!」

「は、はい!分かりました!」

「良い返事だ。俺はお暇させてもらうぜ!じゃーな!」


ランデックはそのまま街の中の方へと向かっていった。

時間もランデックのおかげでかなり余裕が出来た。


「では帰りましょうセリカ!」

「シエロ本当にあいつ信用できるの?」

「多分大丈夫かと、、、それにニナさんが信用してる人みたいですし」

「まぁそれなら良いんだけど!」


僕とセリカはまだ帰る時間には余裕は合ったが、寄り道せずに帰った。

家に十七時三十分頃に着いた。

兄はいつも通りまだ帰っては居ないが、珍しく父が庭で鍛錬をしていた。


「ただいま帰りました!」

「おっ!シエロお帰り。友達と遊ぶのじゃなかったのか?」

「はい!少し早めに終わりまして。お父様は珍しく稽古中ですか?」

「今日は山に行かなかったから、ちょっと身体を動かそうかと思ってな」

「そうですか!良ければ僕も混ぜていただいてもよろしいですか?」

「良いぞ!やる気満々で素晴らしいが、その前に母さんに先に挨拶してきなさい」


父が一人で稽古しているのは珍しい。

それに兄も居ないから、僕の独壇場だ。

僕は急いで母に帰宅したことを知らせすぐに庭に戻った。


「お母様!ただいま帰りました!」

「あら、お帰りシエロ。丁度クッキーを焼いてる所だから手洗って待ってて」

「ありがとうございますお母様。ですが、今からお父様と稽古をしますので終わったらいただきます」

「あらそうなの。気を付けてね!お父さんに無茶させられたらすぐに言ってね」

「はい!では行ってきます!」


やはり母は偉大だ。

優しい、気遣い、美しい。


「戻ったかシエロ!」

「はい!お願いします!」

「シエロはどんな鍛錬がやりたいんだ?」


どんな鍛錬か。

基礎魔術の向上か、それとも新しい魔術の取得、それとも体術や体力づくりか

そう言えば父がどんな魔術を使う魔術師なのか気になっていたんだった。


「そーいや、お父様ってどんな魔術を基本使われているのですか?」

「父さんか?そういえば言ってなかったか。父さんは基本属性全て上級だ」

「すべて上級ですか!?」


基本属性全てを上級で扱えるのは凄いことだ。

だけど僕は少しだけ思った。

父に勝てるのでは無いかと。


「ではお父様、本日の鍛錬は僕がお父様に一撃でも当てれば勝ち。一対一をお願いします」


父は少し驚いた顔をしていたが、笑みを浮かべすぐに答えた。


「いいぞシエロ。父さんに一撃でも当てればシエロの勝ちだ。その代わり父さんも手は抜かないぞ?」

「勿論です。僕も全力で行きます」

「だがシエロあれだぞ。ここは庭だ、母さんの育ててる薬草もある。分かるな?」

「勿論ですよ」


僕は魔術のセンスがあるのではないかと自負している。

何故ならリリア先生に褒められたからだ。

ただそれだけ。しかし僕には十分な心の栄養だった。


ど派手な魔術を使えば庭が崩壊、ましては家まで壊しかけん。

そうすれば、僕は家から出されてしまうだろう。

父が何をしてくるか分からないが、僕の魔法のイメージは既に完成している。


水晶膜界アクアヴェール。狙った相手を水の膜で閉じ込め、身動きを止める中級魔術。

拘束系の魔術は詠唱をしている間に、かわされる事が多い。

しかし、シエロは無詠唱でそれを発動させる。

父は一瞬でシエロの水晶膜界アクアヴェールに閉じ込められる。


「もらいましたよ!お父様!」


僕は土魔術で作った伝説のエクスカリバー(精度が悪くてただの棒)で一撃入れようと近づいた時、

父の身体が何かを纏った。

その瞬間父は拳一つで、僕が発動させた水晶膜界アクアヴェールを破った。


ビリッ、、、ビリッビリッ、、、バシャッーン


しかし僕の身体は止まらない。

既に一振りすれば、父を捉えられる距離まで来ている。

だがそう簡単には行かなかった。

父の動きは今の僕では追えない早さだった。

直ぐに僕が振りかざした棒を低姿勢で避け背後に回る。


「やばい、背後に回られた!?」


父はそのまま僕の背中を目掛けて手を振りかざす。

僕はとっさに風の一吹きウィンドブロウを自分に当て父から距離を取る様に、吹き飛んだ。


「グッ、、、痛ってー」


しかし父は地面に飛んで痛がってる僕を見ても躊躇はしない。

直ぐに僕の前まで詰め寄り、再び手を振り下ろす。

地面に尻を付いてる状態では交わせない。


負けたくない。

たかが鍛錬だが、父に勝ちたい。

とりあえずなんでも良い。

魔術のイメージをして、適当に放てシエロ!!!


シャキィィン!→ドォォン!


僕は最後のあがきで、伝説のエクスカリバー(ただの棒)を振りかざした時、父に向って斬撃が飛んだ。

え?何が起こった。

あの一瞬で僕がイメージしたのは、エクスカリバーから光のエネルギーがグングン出てかっこいい感じをイメージしただけだ。

目の前は砂ぼこりが上がっていて、父の姿は見えない。


「お、お父様!大丈夫でしょうか!?」


僕は急いで砂ぼこりを払った。

しかし、そこには父の姿は見えなかった。


「お、お父様、、、?」


ポン


僕の肩に何かが乗った。

直ぐに分かった。父の手だ。

やられた、恐らく父は僕の斬撃をかわし背後に回っていたのだ。


「最後まで油断しちゃだめだぞシエロ。父さんの勝ちだ」

「参りました、、、」


全然足元にも及ばなかった。

流石に上級魔術師には勝てないか。

いや違う、父の身体に纏っていたあのオーラ。恐らく身体能力強化の魔術だ。

父はそれを使いこなしているから、体術だけで言うと特級から聖級くらいあるんじゃないだろうか。

後今回で分かったが父は確実に近距離タイプだ。


「いやーそれにしても父さん驚いたぞ!まさか無詠唱で魔術をもう使えるとはな!それに、風で自分を吹き飛ばすアイデアも良かったぞ」

「ありがとうございます。しかし、お父様には通用しませんでした、、、」

「何言ってんだシエロ!最後のあれは正直驚いた。まさか風を操って斬撃に変えて父さんを切りかかるとは思っていなかったぞ」

「あ、あれは、、、その、偶然で、、、」


風を操ってだと!?

僕はそんなイメージをしていなければ、風魔術を使おうとは思っていなかった。

あれはたまたま発動しただけの、、、


「そう落ち込むな!父さんが思っていた以上にシエロは魔術の才能がある。多分ソルよりもな」

「兄よりですか!?、、、お父様流石にそれは言い過ぎでは、、、」

「いや、言い過ぎではないぞ、だって、、、」


父が何かを言おうとした時、ちょうど兄が帰ってきた。


「ただいま帰りま、し、、た、、、」

「おう!ソルお帰り!今シエロと鍛錬を終えたところだ」

「それは分かりましたが、、、その、、、」

「お兄様どうかしましたか?」

「いや、、、後ろで、、、」


僕と父は後ろを振り返ると、母が庭の荒れた光景を見て睨んでいた。

僕は直ぐに父の後ろに行き、盾にした。

父は直ぐに母の機嫌を取りにかかるが、いつもの様に母には勝てなかった。

その後父は庭の手入れをさせられていた。(ありがとうお父様~)


それから僕は学校から帰り、父が居れば父と鍛錬を居なければ一人でひたすら魔術の練習を行った。


そして月日は流れ五月。


あれからランデックからの連絡はまだ無い。

少し不安になるが僕に何も出来ることはないので待つしかなかった。

学校も順調でルイドスとの距離は変わらないが、友達も増えた。

魔術の授業もあれから問題も起こさずに順調だ。

セリカも縁の扱いになれたのか初級魔術は簡単に使いこなせるようになっていた。

時々勝負を挑まれ、僕が勝つたびに不機嫌になり帰りかばんを持たされることがある。


夜、家族全員でご飯を食べている時、兄から報告があった。


「お父様、お母様、そしてシエロ。俺は明日から学寮に移ります」

「いよいよ、わが家を離れる時が来たか父さん寂しいぞ!」

「何言ってるんですか、学寮行くって決まった時はあんだけ賛同してたじゃないの、それにもう会えないとかじゃないんだから、ソルもいつでも帰ってきていいからね」

「はい!ありがとうございます」


そうか、兄は明日から学寮か。

確かに寂しくはなるが、兄がいないことで少し自由になるワクワクもした。


「お兄様これからも学校の方頑張ってください!」

「勿論頑張るさ。シエロは問題起こして迷惑をかけるんじゃないぞ!」

「分かってますよ!それにすぐにお兄様を抜かして、お兄様が帰ってきたときにはギャフンと言わせてみますから!」

「随分と偉そうになったなシエロ」


こうして家族団らんの日々を過ごしていた。

次の日の朝、兄がいつもより早く朝家を出るというので庭まで出てお見送りをした。

その後は僕も学校に行って授業を受け、帰ってきたら鍛錬か母の料理の手伝いをしたりを繰り返していた。


それからさらに一か月が経ち六月。

ランデックから連絡も無い。

依頼期限の二か月が経っても無いんだ。

もしかするとあのランデックという奴に騙されたのか?

いやいやいや、あのメイドの頼った人なんだ、だとすると何かランデック自体に何かあったのか?

とりあえず学校に行ってセリカと話そう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る