第六話 リリア先生を探せ!?

僕たちはいつも通りに馬車に揺られている。


「シエロ昨日はどうだったのよ?」

「昨日ですか?そりゃ、、、もう大変でした、、、」

「ふーん。てかシエロあんたもう同じ学年では有名人よ!」

「ぼ、僕がですか!?」

「そうよ!あのスカラルト家に喧嘩を売った鹿だって」


はいー?馬鹿ってなんだよ馬鹿って!!

こういう時って大体、伝説のヒーローとかもっとカッコよい勲章が与えられるはずだろ!!

ていうかなんで広まってるんだよ、、、絶対あのルージュナ・ヴァーミリオンとかいう赤いドレス野郎に違いねぇ!!


そして学校に着きいつも通りに教室に向かい、自分の席に座った。

周りが少しざわついてるが、恐らく僕とルイドスの事だろう。

別に嫌な気持ちになるわけではないが、気になってしょうがない。


そうだ!ルイドスは!

僕はルイドスの席の方を振り返った。


「ハッハッハッー!みんな見てくれ僕の土魔術で作った、ドラゴンだ!」


いつものルイドスと変わらなかった。

というか顔が三つもあるじゃないか!もうそれはドラゴンじゃなくて、ケルベロスな気がするが、、、

とりあえず、念のためにもう一度だけ謝っておこう。


「お、おはよう。ルイドス、、、」

「・・・」

「そ、その昨日は僕が悪かった。ごめん!!」


ルイドスは相変わらず僕にはふてぶてしい態度を取るが、ルイドスもまた一つ成長していた。


「シエロ。僕も昨日は世話になった。お前の母にお礼を言っておいてくれ」

「わ、分かった」


やっと口を聞いてくれたと思えば、母にだけかよ。

でもまぁ、母の事を感謝しているなら十分だ。


「ルイドス。また何かあればいつでも頼ってください」


僕はその一言だけを言って、自分の席に戻った。

ルイドスは誰に頼るかよ!みたいな態度を取っていたが、これで十分だ。


「おはようございます。席に着いてください」


僕は先生の声を聴いて席に着いた、

違和感を感じた。顔を見ると見知らぬ男の先生だった。

あれ、リリア先生じゃない。

僕は直ぐに嫌な予感がし、冷や汗をかいた。

その予想は的中していた。


「えーと。本日からリリア先生は長期の休暇に入られたという事で、代わりにこの私リントがこのクラスの担当になります。皆さんよろしくお願いします」


僕はとっさにルイドスの方を振り向いた。

しかし、ルイドスも僕と同じ嫌な予感が当たったような顔をしていた。

一体どういうことだ!


「先生!そんな話は聞いていません。リリア先生は本当にただの休暇なのでしょうか?」

「えーと君は、、、シエロ君か。噂には聞いているよ。面白い子だ」

「先生、僕の質問に答えてください」

「はぁ最近の子供は元気だ元気だ、、、リリア先生はね長ーい長ーい休暇に入られた。先生もそれ以外知らないんだよねー」


なんだこの先生、気味が悪い喋り方だ。

本当にただの休暇なのか?

ありえない。このタイミングで。しかも何も言わずに急にだ。

ルイドスだ!一旦ルイドスが何か知っているかもしれない。


「じゃこのまま一限目始めまーす。魔術本の12ページ開いてくださいねー」


チッ、授業が終わったらすぐに聞き込みだ!

この後授業が始まったが僕のノートには、『事件、僕のリリア先生。行方は何処に1』の推理のメモでいっぱいだった。


~45分後


「えーじゃあこれで一限目を終わりまーす」


その言葉と同時に僕は直ぐにルイドスの席へと走り向かった。


「おい!ルイドス!」


だめだ、昨日学んだばかりだろ馬鹿!勢い任せは良くない。

一度冷静になるんだ。


「ルイドス。何か知りませんか?リリア先生について」

「、、、知らない。先生が休暇だって言ってたの聞いてなかったのか?」

「でも、、、突然、急な長期休暇なんてありえません。なんでもいいんです。知ってることがあれば教えてほしいんです!」

「しつこいぞ!僕は先生なんて誰でもよいんだよ!」


駄目だ。これ以上聞いても無駄だ。

はぁ僕はこれからどう学校生活を生きていけば良いんだ、、、

というか学校に来てまだ三日目だぞ?なんでこんなにも問題ばかり起きるんだよ。

僕は全身の力が抜けたまま、自席に力なく座り込む。


そのまま何も考えれず、全く授業にも集中できずに午前中が終わった。

お昼時間になり、お腹がすいたので食堂へ向かって廊下を歩いていた時だった。


ドッドッドッドッドッドッ


物凄い勢いで誰かが後ろから走ってくる音が聞こえた。

別に気にすることもなかったのだが、その音が僕の背後で突然消えた。

何だろうと振り返った時、僕の目の前にはセリカが空中に浮き右足を僕のお腹に向けて突き出していた。


ドカァーン!!


セリカの右足は僕のお腹ではなくその下、そう僕の聖剣をめがけてめり込んできた。

僕の目からは涙がこぼれ、その場でのたうちまわった。


「んがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーはぁはぁはぁ、、、痛い痛い、、、うぅ、、」

「い、いきなりなんてことをするのですか、、、僕の、、僕の聖剣が折れたらどうしてくれるんですか!」

「シエロが朝からメソメソしてるからでしょ!」


畜生!ちょっとメソメソしてたらドロップキックが来るなんて習ってないぞ。

一旦僕の聖剣が無事か確認だ。

・・・

おっと何とか無事だな。

それにしても初めて本気で聖剣を蹴られた。痛いのはもちろん呼吸も困難になる。

そこらの魔術よりも強いんじゃないか?


「僕の聖剣が駄剣になったらどう責任取ってくれるんですか!」

「な、何言ってんのよ!それより、どうして一日しか会ってもない先生にそこまで落ち込むのよ」


僕自身も明確な理由は分からない。

たった一日、たった一日だ。それなのに何故か何回も会ったことがある。

そんな気持ちだった。


「分かりません」

「はぁあ?分からないって、シエロあんた理由もわからずに落ち込んでいたら私何も出来ないじゃないの!」

「えっ!?」


一瞬戸惑ったが聞き間違えでは無かった。

セリカが僕のこの悩みを解決しようとしてくれているのか?


「シエロ!あんたが一人で何かをしようとしても結局上手くいくはずがないわ!どうせ自信過剰になってまた問題を起こすだけよ!」

「そ、そんな事やってみないと分からないじゃないですか!」

「じゃあ何かあの先生を戻す作戦があるの?」

「うっ、、、」

「ほら!シエロ一人じゃ何もできないのよ!」


僕だって無暗に動くつもりなんてないけれど、何故かセリカに言われるとムカつく。

話の流れで僕が先生を連れ戻そうとしてるみたいだけど、決して戻ってきてほしいわけじゃない。

ただ、またお話したり魔術を見てもらったりしたかっただけだ。

まぁ、連れ戻せる事に越したことはないが。


「それで、セリカは何か方法でも?」


一度セリカの意見も聞こう。こんだけ自信満々なんだ何かあるんだろう。


「無いわ!」

「はい?」

「無いって言ってるの!私はシエロがなんで悩んでるかを聞いてから考えるつもりだったの!」

「そ、そうですか、、、」


先生にもう一度会いたい。

大きくまとめるとこれが僕の悩みというかモヤモヤだと思う。


「リリア先生にもう一度会いたいです。これが僕の悩みです」

「そう!だったら学校終わりにでも一緒に探してあげるわ!!」

「ありがとうございます!」


何故かわからないがセリカが一緒に探してくれることになった。

僕たちは昼を食堂で済ませて、『事件、僕のリリア先生。行方は何処に1』の作戦会議を行なった。


「探すと言ってもまずどうやって探せばいいのでしょうか?」

「そうね。まぁそんなに遠くに行ってないと思うし、集会所にでも行けば何かしら情報は出てくるんじゃない?」

「確かにお金稼ぎで先生してるって言われていたし、それはありそうですね!」

「お金稼ぎ?」

「あっ、、、」


しまった!ついつい口に出てしまった。

僕と先生だけの秘密だったのに。


「いやぁーまぁ皆お金稼ぐ為にも働きますよねみたいな」

「ふ~ん。まぁ別に私はその辺どうでもいいけど」


おっと意外だ。

セリカが深掘りしてこなかった。珍しい。

てっきり何よそれ!詳しく話しなさい!!なんて詰められると思ったが、、、


「で、では学校終わりに集会場にでも寄ってみましょうか」


僕たちは午後の授業を受け、半分授業に集中半分先生について考えていた。

授業もすべて終わり僕をセリカはすぐに馬車亭まで走り、馬車に乗った。


東の国アズライトの集会場は、僕が住んでいるニヒル村と学校があるヴェントス市のちょうど中間にある大都市サフラニアにある。因みにニヒル村はコエム


「そういえば僕サフラニアに行くのは初めてです」

「え!あんたサフラニアに来たことなの!?」

「え、えぇ。僕はずっと村から出ていなくて、登下校中に馬車から眺めるくらいしかしたことがなく、、、」

「じゃあ私が今度の休みに案内してあげるわ!」

「いいんですか!?」

「ま、まぁね!」


やったー!普通に嬉しい。

休日に家族以外に会うのも本当に久しぶりな気がする。

そんな話をしているサフラニアに着いた。

サフラニアの馬車停は、いつも乗っている最寄りの馬車停の四倍程も大きく、いろんな種族で賑わっていた。


「凄くデカいですねーサフラニアの馬車停は!それに本で読んだことしかない色んな種族の方がたくさん!」

「本当に来たことが無かったのね」

「これは、、、初めて一人で来ると確実に迷子になりますね、、、」


もし、僕が一人でサフラニアに来ていたら確実に迷子になって帰り道もわからないまま、細い裏路地を歩いていると柄の悪い族に絡まれて、だけど美人で強いお姉さんに助けてもらえるんだろうな。

おっと、僕の妄想劇が出てきてしまった。


「シエロ着いてきなさい!集会場に案内してあげるわ!」

「はい!ありがとうございます!セリカ!」

「前々から思ってたのだけれど、ありがとうございますじゃなくて、ありがとうでいいわよ。セリカって呼んでいいって言ってるんだから他も敬語使わなくてもいいわよ」

「はい!セリカ!」

「、、、まぁいいわ。逸れないようにしなさい」


なんだか楽しい。

学校終わりに友達とこうやって出かけたりもしたかったので、なんだか遠足気分だ。

それから僕たちは、美味しそうな匂いがする市場の道や、興味をそそる魔道具のお店が沢山並ぶ道などを通り抜け、ついにサフラニアの集会場に着いた。


「ここよシエロ!サフラニアの集会場!フォーラムよ!」


フォーラム!集会場っていう名前だと思っていたけど、ちゃんと名前がついていた。

それにしても東の国アズライト一デカい集会場フォーラムは凄い大きいな。


「セリカ案内ありがとう!早速、中に入ってみましょうか」


の中に入ると多くの冒険者で溢れていた。

ほとんどが魔物の討伐クエストやダンジョンの攻略目当てで来ている人が多い。

理由は恐らく報酬が多いからだろう。


「す、すごい人数ですね、、、」

「そりゃここは多くの冒険者や小遣い稼ぎに来るのが多いからね」

「これは先生を探すのには難しいですね、、、」

「シエロ、、、あんた馬鹿ね。先生がいるかも分からないのにこの中で二人で探せるとでも思ってんの?」

「え、いや、、それは、、、」

「普通に受付の人に聞くのよ。行くわよ」


そりゃそうか。

流石に一人ずつ顔を確認して見つけるなんて、現実的ではないな。

セリカの案内で集会場フォーラムの受付に向かった。

受付にはお姉さんが座っていた。

いわゆる受付嬢とやつだ。

セリカが先陣を切って話してくれた。


「探してほしい人がいるのですがいいかしら?」

「あら、お父さんとお母さんとはぐれてしまったのですか?」

「ち、違うわよ!!」


セリカは顔を赤くしていた。

そりゃ子供二人で来て探してほしい人がいるなんていきなり声をかけたら、心配されるよな。


「すみません。僕たち会いたい人が居まして」

「そうでしたか。てっきり迷子になられたのかと思いました。で、どのような方でしょうか?」

「白銀の髪で長さは肩あたり、ローブを着ており、先端に緑の魔石が付いた杖を持っている女性の方です」

「冒険者の方でしょうか?後お名前とご年齢も分かればお願いします」


そういえばリリア先生の名前ってなんだっけな。

えーとリリア、、、リリア・マートル!リリア・マートルだ!

危ない危ない。忘れるところだったぜ。まぁ僕が先生の名前を忘れることはないが。

それと先生って事も伏せておこう。

先生が失踪!?みたいな変な憶測がたっても嫌だしな。


「リリア・マートル。歳は16ときいております」

「分かりました」

「ちなみにここにその女性っぽい方は来られてないですか?」

「そうですね、、、一日に多くの方が来られるので覚えてはおりませんが、おそらく、、、私の記憶にはございません」


ダメだったか、、、次を探そうにもあてがなさすぎる。

どうする?このままもうお別れになってしまうのか?


「ちなみに先ほどの条件が当てはまる方を探す。正式な依頼として発注されますか?」


そうか!ここで依頼をかければ、受注した方が見つけてくれる可能性があるのか!!

これは良いチャンスだ!


「はい!お願いします!!」

「分かりました。因みになのですが、、、お二人のご年齢を聞いてもよろしいでしょうか?」


ん?年齢?

僕とセリカは顔を合わせその顔には不思議そうな表情をしていた。


「六歳よ!」


セリカが答えた。

しかし受付嬢は少し困った顔をしていた。


「大変申し訳ございません。正式にご依頼を発注するには10歳以上が必要になります」


なっ、、、年齢制限!?

まだ六歳の僕たちには無謀な挑戦だったわけか、、、

僕たちが諦め、その場を後にしようとした時受付嬢の方から一つ提案があった。


「そ、そうでしたか。ご対応ありがとうございました。では、、、」

「あ、あの!一つご提案があるのですが、その、、、どちらかのご両親様に許可をいただきご両親様が依頼を発注した。という事は可能でございます」


なるほど!それなら年齢の壁も突破できるというわけか!

となると一度セリカと相談して後日またここに来て発注になるわけか。


「分かりました!ありがとうございます。また改めてここに来ます!」


僕たちはその後集会場フォーラムを出て、サフラニアの馬車亭まで歩き向かった。


「先生は見つからなかったけれど、依頼を発注する手前までは来れましたね」

「それはそうだけれど、私とシエロどちらの親に頼むの?私の親が許可を出すかはちょっと分からないけれど、出ればかなりの効果はあると思うわ!、、、許可が出るかは分からないけれど」


確かにマーガレット家の名前を使えば、いろいろ権力的な感じで優先に動いてくれそうだがこれは元々僕の勝手な行動についてきてくれただけだ。

それにマーガレット家を巻き込むわけにはいかない。


「僕の両親に帰ったら頼んでみますね!」

「そ、そう!わかったわ」

「なんだか疲れましたね。もう夕日も沈みそうですし」


僕がそんな何気ない発言をした時、突然セリカが立ち止まり冷や汗をかいて声を震わせていた。


「ね、ねぇシエロ?今何時くらいかしら?」

「えーとここについたのが十八時前だったので、十九時ころでしょうか?それがどうかしましたか?」

「わ、わたしいつも馬車亭に迎えが十七時半頃に来るのだけれど、、、きょ、今日遅くなるなんて伝えていないし、、、はぁはぁはぁはぁ、、、、、」


しまった!!

急遽ここに来たから僕も何も言っていない!!いつも十八時には家に着いているのに、、、

このまま帰っても二十時前か、、、

また二日連続で怒られる、、、

それにしてもセリカの方が家系的にやばそうだな。


僕たちは何も言わずに、意思疎通してるかのようにサフラニア馬車亭まで走り出し馬車に乗った。


「ねぁシエロ!何か良い言い訳ないの!」

「わ、わかりません。ちょっと授業が長引いたとかですかね、、、」

「そ、そんなの信じてもらえるわけがないでしょ!」

「そんな事言うんだったら、セリカだって何かないのですか!」

「お、思いつかないから聞いてるんじゃない!」


馬車の中でひたすら言い訳大作戦を繰り広げていた。

あーでもな。こうでもない。なんて話していると、作戦終了の合図が鳴った。


「お待たせいたしました。アルクナ魔導初等学舎前です」

「え!もう学校前に着いたの!」

「そうみたいですね!このまま急いで乗り換えて帰りましょうか!」


僕とセリカが馬車を乗り換えようとした時、水色の髪でメイド服を着た女性がこちらに走って向かってきた。

その後ろには綺麗な茶色の髪型の女性が歩きながら向かっていた。


「セリカお嬢様!!探しておりました!!!」

「え!二ナ!」

「心配しておりましたよ。全然帰ってこられないので学校に来たら居ないもので。それにアイリスお母様も来られておりますよ」

「あ!ママ、、、」


あれがマーガレット家メイド!とても可愛くて、優しくて可愛い。

羨ましい。僕もメイドを雇いたいぞ!!

そしてあれがセリカの母。アイリスって言ってたっけ。

顔を少し怖そうだけど、実際セリカに対しては優しい良い母親だ。


「セリカ。黙って一人でうろついたらダメでしょ!まだ六歳なのに。それに今は大事な時期なの心配はかけないでよ」

「ごめんなさいママ。次から気を付けます」


いつも強がりというか、我儘お嬢様って感じだからか目の前の光景に違和感を感じるな。

するとセリカの母が僕の方に視線を向けた。


「で?そちらの僕はどなたかしら?」

「あ、えーと、、、」

「シエロよ!私の友達ですママ!」

「セリカ?あなたに聞いてないのよ。ママはこの子に聞いてるの」


うぅ、、、怖い。

自分の子以外には怖い感じなのかな。

ここは真剣に謝っておこう。


「申し遅れました。シエロ・アルランドと申します。この度は僕がセリカさんを誘いサフラニアの方に行っておりました。勝手に連れ出し、遅くなり申し訳ございません」

「サフラニアに子供二人でなんの用があって?」

「はい。僕が授業で使うノートを新しく買おうとしてましたが、サフラニアに行ったことが無く行くか悩んでいるところに、シエロさんが案内してくれるとお声をかけていただきました」

「・・・そう分かったわ」


ふぅー。とっさに出た嘘話だけど、我ながらセンスがあるのじゃないか?

セリカの事も守りつつ僕にヘイトを向ける作戦。

流石にマーガレット家に嫌われると、それこそ学校に行けなくなるかもだけれど。


「だけど次このような事があれば娘と関わることは許さないわ。いいね?」

「ちょ、ママ!?」

「はい。勿論です。次からはこのような事が内容にいたします」

「シエロ、、、」


なんとか乗り切れたな。

後は、、、僕が家に帰って怒られるだけだな。

というか、僕に父だって迎えの一つは来てほしいものだ!

もし僕が誰かに捕まっていたりしていたらどうするのかね。


「では、僕はこれで失礼いたします」

「お待ちなさい。二ナ彼を家まで送り届けなさい」

「承知いたしました」

「え、いや、、、僕は一人で帰れますのでお構いなく」


しかしメイドの二ナは僕の横に付き、僕と腕を組み始めたのだ。

メイドとはいえ異性と腕を組んだことない僕は恥ずかしかった。

さらにセリカの前だ、余計に恥ずかしすぎる。

セリカはニヤニヤしており、僕の顔はとても赤くなっていた。

少し腕を抜こうと思い力を入れてみるもの、びくともしなかった。


「えーと、、、これはどういう、、、」

「もう夜も遅いので、あなたを一人で帰すのは危険だと判断した奥様の気遣いです。素直に受け入れてくれてください」

「は、はい、、、ありがとうございます」

「じゃねぇーシエロ!今日はありがとうね!また明日ーー!」

「こ、こちらこそありがとうございました!」


セリカは母に連れられ馬車に乗り帰っていった。

僕はメイドの二ナに腕を組みながら、ニヒル村の最寄りまで馬車に乗った。


「あ、あの、もう馬車に乗っているので腕、、、、

「ダメです。私はあなたを無事に家に送り届けることが仕事ですので」

「べ、別に腕を組まなくても、、、」


そういうと凄く怖い顔で睨まれた。

まぁ別に悪くはないというか胸がドキドキしすぎて、少し離れたかっただけだった。

何を喋ればいいか分からなかったが、流石メイドなのか空気が悪くならないようにしてくれた。


「ところでシエロ君」

「は、はい!」

「セリカお嬢様とは仲良くしておりますか?」

「は、はい!勿論でございます!まさか二人でサフラニアに行けるなんて思ってもなかったです!」

「そうですか。最近セリカお嬢様を馬車亭に迎えに行き、お嬢様の姿を見ているととても楽しそうなんです。もしかしたらシエロ君あなたのおかげなのかもね」


ドキッ!!


突然笑顔でそんな言葉を言われたら、、、す、す、、、好きになってしまうじゃないか!


「え、い、いや、、、はい!ありがとうございます!」

「あ、あの!二ナさん!」

「どうかしましたか?」

「そ、その前に聞いた話ですが、マーガレット家は今王の後継者候補だとかで、、、セリカがその、、」

「その話忘れなさい。貴方のようなものが首を突っ込む事ではないの」

「し、しかし!」

「今、セリカお嬢様は学校に行くことが楽しみになっているの。貴方が突っ込めばそれが無くなってしまうかもしれない」


何も言い返せない。

しかし、何かあるのは確定した。

だが、セリカが学校を楽しみにしている以上、二ナさんの言うとおりにしておこう。


「分かりました」

「あ、あと一ついいでしょうか?」

「何でしょうか?」

「そ、その二ナさんって男の、、、」


僕が禁忌の質問をしようとした時


「お待たせいたしました。コエム馬車亭です」


最寄りの馬車亭に着いた。


「あら、着きましたね。おりましょうか」

「は、はい」


二ナの男事情はまた今度にお預けになってしまった。

仕方がない。

すると、突然父の声が聞こえた。


「シエロ!!」

「お、お父様!?」

「シエロ遅いじゃないか!!」

「お、お父様なぜ馬車亭に?」

「マーガレット家からの手紙が届いて、シエロがもうすぐ馬車亭に来るから迎えにって。ほらこれだ」


手紙!?

どれどれ、、、これは、この字はセリカだ。

セリカが手紙を出してくれたのだ。

それにしてもどうして僕の家の住所が分かり、こんなに早く届くんだ?

まぁ、、、マーガレット家だからっていう理由で片付けられそうだが、、、


「あ、これはマーガレット家の。この度はシエロの面倒を見ていただきありがとうございます」

「いえ、私はただ仕事をしただけですので。では」

「あ!二ナさん!今日はありがとうございました!」


二ナは何も言わずに馬車に乗って、帰っていった。


「それにしてもシエロ。マーガレット家の子と仲が良いんだな。父さんびっくりしたぞ」

「そうですね。実は入学式から仲が良くなりまして」

「シエロ、無礼な態度取ってないよな??」

「そ、そりゃ勿論でございますよ!お父様!」


その後僕は父と家まで歩きながら帰った。

父曰く、母は少し怒ってるみたいで二日連続怒られるのが怖かった。


「ただいまー今帰ったぞー」

「た、ただいま、、、帰りました」


母が少し頬を膨らまし僕の前に来た。


「シエロ?連絡もなしによそ様にまで迷惑をかけて何していたの?」

「じ、実は、、、」

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