第五話 スカラルト家

僕は直ぐに額を地面に叩きつけ謝った。

身体がそう勝手に動いたのだ。

しかし、それはルイドスに対してでは無く母に対して謝っているのかもしれない。

母のあの顔は今まで見た事が無かったからだ。


「ごめんなさい!!僕、ムキになってしまって、、、つい」

「シエロ。顔を上げなさい」


そう言われ顔を上げると、険しい顔で父が前に立っていた。

僕は直ぐに身体を起こし、父に手首を強く掴まれられ、母の横についた。

すぐに、父が僕の頭を手でガッと抑え、再度ルイドスとその両親に対して謝罪をした。


「この度はうちの息子が、ルイドス君に酷いことをしてしまい申し訳ございませんでした」


正直こんな大事になるなんて思ってもいなかった。

僕はチラッとルイドスを見た。どんな反応をしているのかが気になったからだ。


ルイドスは下を向きくらいままだった。

ルイドスの父親はグレーの綺麗なスーツに赤色の蝶ネクタイを付け、表情を何一つ変えずに無表情。

母親は白色のワンピースに首元に緑の宝石を付けている。そして明らかに僕たち家族を見下した顔をしてさらに追い打ちをかけてきた。

「全く、私たちがあの学校のアカデミーカウンシルだって事を知らないわけかしら。いつだって学校から追い出すことは可能なのよ!!」


顔を上げ何とか父が、丸く収めようと頑張ってくれていた。

「まぁまぁ、子供がやったことですので、、、うちの息子も悪気があってやった訳でもないと思います。なぁそうだろ?シエロ」

「はい、、、少しムキになってしまい、ルイドスさんの魔術に対して馬鹿にしてしまいました」


そうだ。ここは何もごまかさずに言おう。

ここで変に強がってもより状況が悪化するだけだしな。

これで許してもらえるだろう。


しかし、ルイドスの母から出た言葉は僕が想像していた言葉ではなかった。

はじめは何を言っているのかも分からなかった。


「悪気が無かったですって?うちの息子を一方手的に馬鹿にして、魔術で手に火傷をさせてそれが悪気が無いと?」


え?馬鹿にしたってのは一旦置いておいて、手に火傷?

あの時、僕の魔術で使った火は、ルイドスの魔術を打ち消すために使っただけだ。

しかも、ルイドスとの距離も離れた所で魔術は消えたはず。

それなのに手に火傷だと?ありえない。

おかしい、何か勘違いをしている。


「あ、あの、ルイドスのお母様。僕は確かに火の魔術は使いましたが、火傷をさせるような事はやっておりませんし、ルイドスさんが僕に向けて放った魔術に対して使っただけです」


ルイドスも僕に魔術を放ってきたって事は伝えておこう。

念には念をだ。


「そう。これを見てもそう言い切れるのね。ルイドス、右手を見せてあげなさい」

ルイドスの母がそう言い、ルイドスが前に出てきた。

右手を前に差し出し、僕に見せつけてきた。

その手は、赤く腫れていた。


「えっ、、、」


言葉が出なかった。

本当にルイドスに火傷をさせてしまったのか、そう思った。


「これが証拠よ。あなたが私の息子に火傷させたの。どう責任を取ってくれるわけかしら?」

「シエロ。お父さんは散々言ったよな。魔術は誰かを守るために使えと」


火傷を負わせたことに対して、否定はできなかった。

しかし、ルイドスの手には火傷を負っているが僕がやったとは認めたくは無かった。

なぜなら、ルイドスの火傷は赤く腫れているが火傷による水ぶくれが出来たばかりのように見えたからだ。

だとするとこれは別で火傷をしたか、自分で自傷させたかだ。

一度ルイドスに聞いてみよう。


「失礼ですがルイドスさん。この火傷は本当に僕が負わせたものでしょうか?」

「はい?あなた何を言ってるのかしら?これを見てもそんな事を言うのかしら?」

「おい!シエロ!何を言ってるんだ!」


ルイドスの母親が怒ってくるが僕は気にしなかった。

父は僕の肩を掴み後ろに引かせようとするが、ルイドスの目に視線を送った。


「この火傷がもし僕のせいならば、五、六時間は時間が経っていると思いますがその割には水ぶくれも小さく、赤みの方が強いです。僕も良く火傷をした事があるので分かります」

「もう一度聞きます。本当にこの火傷は僕のせいですか?」


ルイドスは今まで閉じていた口を開けた。

しかし、ルイドスは明らかに動揺していた。


「あ、当たり前だろ!何を言ってるんだ!僕が火傷をしたのはお前のせいだ!」


だが、ルイドスの母親は怒りの頂点ピーク。

僕の父も僕の言葉をでたらめだと決めつけ、こちらも怒りの頂点ピーク。


「あ、あんたねぇ!!私の息子が火傷を偽造したとでも言いたいのかしら?ねぇ?ねぇ!!!!!」

「おい!シエロそうやってなんでもかんでも決めつけは良くないぞ。シエロのそのすぐに決めつける癖は良くないぞ!!!」


バシッ


父に手首を強く掴まれ引っ張られた。

「な、何をするのですかお父様。痛いです。離してください!!」

「ルイドス君の方がよっぽど痛い傷を負ってるんだ!」

「お父様は僕が嘘を付いていると、そう言いたいのですか!!!!自分の息子の事を信用できないって、そう言いたいのですか!!!」

「そんな事を言ってるんじゃない!」


恐らく初めて親に本気で反抗した。

父は僕を殴ってもおかしくない表情をしていた。


「二人とも少し黙って!」


母が突然大きな声をだして、ルイドスの前に立ち寄った。

父は僕の手首から手を離した。


「ルイドス君。右手もう一度良く見せて」

「・・・」


ルイドスは無言で母に手を見せる。

母は火傷を見てすぐに治癒をした。


「癒しの涙サナティオ・ミノル」


母のその一言でルイドスの火傷は一瞬で治った。

ルイドスは母の治癒魔術で治った手を見て、声に出していないが、少し頬を赤くし笑みを浮かべていた。


「ごめんねルイドス君。うちの息子が悪いことをしてしまって。でもね、うちの息子がむやみに誰かを傷つける事はしないと思うの。だから本当の事を教えてほしいな」

「ちょ、あなたね!誰が治癒しろって、、、」

「少しお静かにして貰えますか!今ルイドス君聞いていますので」


その時の母は強かった。

先ほどまで大口を叩いていた、ルイドスの母でさえ言葉を返せなかった。

父を見るとなんだか弱弱しい顔をしており、情けなかった。


「ぼ、僕は、僕のこの火傷は、、、その僕も火の魔術を使って反撃がしたかった。でも僕は火の魔術を使うのが苦手で、だからこっそり練習をしたら、上手く出せずにそのまま手に火傷を負って、、、」


やっぱりだ。

僕がルイドスに火傷を負わした訳では無かった。

ルイドスの母親は爪を口で噛みながら、ガリガリと音を立てていた。


ルイドスの言葉を聞いた途端、ルイドスの父親は何も言わずに乗ってきたであろう馬車に向かって歩き始めた。

「あなた!ちょっとどこに行くのよ!まだ話は、、、」

「話は終わりだ。すでに話はついている」

「チッ、ルイドス帰るわよ。早くしなさい」


おいおいおい、このまま帰る気なのか?

僕も悪い部分があったけれども、思い込みで僕が火傷を負わせた張本人だと決めつけあげく、火傷まで治癒したんだ!母に感謝の一言でも無いのかね!!


するとルイドスが、、、

「火傷、治していただきありがとうございます。それと、シエロ僕も悪かった」

「いえいえ、こちらこそよ。後私こう見えて調合師なの、このポーション渡しておくね」

「あ、ありがとうございます」

「このポーションは火傷程度の傷なら治してくれるから、また何かあったら使ってね」


そうか、ルイドスもちゃんと悪気があったと感じたんだな。

しかも、母からポーションまで貰えるとは。羨ましいやつだぜ。

先ほどまで憎たらしく、大嫌いだったが今はなぜか可哀想な奴に見えた。

仕方ない許してやろう。僕は心が広いからな。


それにしてもだ、ルイドスの両親はどうなっているんだ。

確かに僕が悪い分も合ったが、母への治癒のお礼の一つでもあっていいじゃないか。

少し自分の立場が悪くなれば、逃げるとかそっちの方が子供みたいじゃないか!


「ちょっと待ってください!今回の件確かに僕も悪かったです。しかし先ほどのあなたの発言については、語弊がありました。僕にはもう良いので、母にお礼してください!」

「いいのよ、シエロ。これ以上深堀は良くないわ」


母よ、これは僕のプライドなのです.

ルイドスの母親が眉間にしわを寄せ、コツコツと足音を立て僕の目の前に歩いてくる。


「何か文句があって?」

「はい」

「私たちがいつでも学校から追い出せる、あんたの母に感謝しろと?」

「はい」

「そう、それがあんたの答えね」


ルイドスの母親が、鋭い眼差しで僕を睨んでくる。

怖い。なんだこれは怖すぎるだろ。

少し強がり過ぎた。


ずっと睨まれ、ルイドスの母が何か言いかけた時に、後ろから声が聞こえた。


「スカラルト家がうちの弟に何か用でしょうか?」


兄だ!兄が学校から帰宅したのだ。

ナイスタイミングだ!そろそろ僕のやせ我慢も限界だったからな。

ふぅー危ない危ない。


「お兄様!」

「チッ、人が多いわね、、、行くわよルイドス」


そう言うと、ルイドスは母親の後ろに付いて歩き馬車に乗って去っていった。

結局、あの母親から感謝と謝罪の言葉は聞けなかった。

父親なんて僕たちに対して一言も言葉を交わしていない。

僕はあの両親が嫌いだった。


「いったい僕が居ない間に何があったんだ?」

「そ、それは、、、」


僕たちは一旦家に戻り、兄に先ほどの出来事と経緯について話した。

兄曰く、スカラルト家は昔からあのような性格らしい。

今まで色んな人が、学校を辞めさせるぞと脅されていたらしいが、実際に辞めさせられた人は居ないとか。

アカデミーカウンシルという立場を使って、自分たちの駒を作ろとする厄介者らしい。

今回はルイドスを使い、僕たちの所に来たと言うわけだ。


だから僕がルイドスを馬鹿にした時に、皆が青ざめていたのも納得だ。

正直こんなめんどくさい事になるのはもうごめんだ。


それから、ヴィクター・スカラルト。ルイドスの兄らしい。

僕の兄とルイドスの兄は先輩後輩の関係で仲が良く、あの家系で唯一まともな人と兄が言っていた。


それから、母が夕食の支度を終えテーブルにはいつもと変わらない母の手作り料理が並べられていた。

しかし、食卓の雰囲気はいつもより重かった。

それは僕と父が原因だった。


あれから僕は父に口を聞いていない。

別に嫌いになったからではない、いつも魔術などを教えていたり情けないところもあったけれど強く男らしい父だと思っていた。

しかし今回は、僕の言葉を無視して決めつけ、いざ違うと分かれば何も言えず何も出来ずにあの場で立っていただけだからだ。

母がもし居なければ本当に僕は学校に行けなかっただろう。


この少し重たい空気をはじめに切ったのは、やはり母だった。


「いただきます。ほら早く食べないとせっかくのご飯が冷めますよ」

それに続き僕たちも続いた。


「お母さま一つ質問のですが、何故最後にルイドスにポーションを渡されたのでしょうか?あの家系なら魔術やポーションなら困ってないと思いますが」

「そうね。その質問の前にお父さんと仲直りしたら教えるとします」


うっ、、、母は抜かりがないな。

それにしても父はまだヘナヘナしている。

はぁいつもの父はどこに行ったんだ。


「あ、あのお父様、、、その僕はもう気にしていませんから。いつものお父さまに戻ってください」

「その、、、シエロ、、、本当にすまなかった!!!!!お父さんあの時感情的になり過ぎた。許してくれ。」


父が突然、椅子から立ち僕の前で額を床に付けあの謝罪をしてきた。



ルキウス視点


俺は父親失格だった。


いつもの様に狩りから帰り、家でお酒を飲もうとした時見慣れない馬車が家の前で止まったのが窓から見えた。

馬車から降りてくる人物の顔を見るとすぐに分かった。

スカラルト家が、来るのは二回目か。

一回目はソルが向こうの兄と仲が良く、一度だけ家に来たことがあった。

だから今回もシエロに友達が出来て、うちに来たとそう思っていた。


しかし、現実は違った。

玄関の向こうから、威圧的な声が聞こえた。


「ルイドス・スカラルトの母、イザトラ・スカラルトですが。至急表に出てきてください」


俺と母さんは直ぐに玄関を開けて外の出た。

そこにはスカラルト家の両親と、シエロと同い年くらいの子初めて見たが恐らくこの子がルイドス君。この三人が来ていた。


「お久しぶりです。スカラルト家の皆様。今日はどういった御用で、、、」


すると母のイザトラが怒りながら話してきた。


「あなたの息子に今日私の息子がいじめられたと、息子から聞きました。どう責任を取ってくれるのかしら?」


急すぎて頭で理解がすぐにはできなかった。

シエロはイジメ?正直あの子は誰かをイジメるとは考えにくい。


「えっとー。その、何かの間違えでは無いでしょうか?うちの息子が誰かをイジメる事は無いと思いますが、、、」

「そう、、、ではこれを見ても同じこと言えるかしら」


イザトラがルイドス君を前に立たせようとした時、学校から帰ってきたシエロが顔を引きつって突然、俺が母さんに本気で許しを請うときにする額を地面にくっつける謝罪をしたのだ。

その時俺はシエロが、この子をイジメたんだと確信した。


その後ルイドス君の右手に火傷していることが判明した。

最近シエロが火の魔術を練習していたのも知っていたこともあり、よりシエロがやったと思った。

どう怒ってやろうかそんな事も考えた。

そんな時、シエロが反省どころか相手を疑い始めた。


「失礼ですがルイドスさん。この火傷は本当に僕が負わせたものでしょうか?」


俺は自分の息子を信じ切れていなかった。

その時は強い口調でシエロを攻め、腕を強く掴んでしまった。


「おい!シエロそうやってなんでもかんでも決めつけは良くないぞ。シエロのそのすぐに決めつける癖は良くないぞ!!!」


こんな事まで言ってしまった。

正直シエロにあんなに反抗されたのも初めてだった為か、相当自分もムキになてしまっていた。

母さんの仲裁が無ければ俺は、シエロの事を一生悪者だと決めつけていたかもしれない。

ルイドス君が火傷を負ったのは別件と話した時は、身体の底から力が抜けた。


「ぼ、僕は、僕のこの火傷は、、、その僕も火の魔術を使って反撃がしたかった。でも僕は火の魔術を使うのが苦手で、だからこっそり練習をしたら、上手く出せずにそのまま手に火傷を負って、、、」


自分の息子がのせいでは無かった安心感よりも、シエロを犯人と決めつけた自分が情けなかった。

言葉のブーメランが刺さったのだ。

その後母さんの対応とシエロを見ていると、なんて自分は家族の事を信用していないクソ野郎なんだと思った。

シエロは恐らくこんな俺を見て、呆れて口もきいてくれない。

今更なんて声をかければ良いか分からなかった。


そして、どう仲を戻そうかと考えていた時、、、


「あ、あのお父様、、、その僕はもう気にしていませんから。いつものお父さまに戻ってください」


あぁ、なんて優しんだ。息子のこの言葉でより自分が情けなく感じたのと、もっと立派な父親になる。

そんな気持ちが宿った。


「その、、、シエロ、、、本当にすまなかった!!!!!お父さんあの時感情的になり過ぎた。許してくれ。」



シエロ視点


流石に自分の親にこの謝り方をされると、こっちが気まずくなる。


「お、お父様、、、その顔を上げてください。僕も悪い部分はありましたし、今回で僕も成長しましたから!」

「シエロ、、、本当にお前は俺にそっくりだぜ」


父が僕を抱きしめて、髭を顔にこすってきた。

正直痛いけれど、今は何となく嫌では無かった。


「お父様に似てるのは少し勘弁してほしいですが、、、」

「何だと!この生意気がー!」


ふぅーやっといつもの父に戻ってくれた。


「ほーら、二人とも仲直りしたならご飯食べましょ」

「そうだぞ、早く食べないとシエロの好きなエビ俺が全部食べるぜー」


母の言葉と兄のいつもの僕への馬鹿にする言葉と共に、僕たちは席に戻った。


「さて、先ほどの続きなのだけれど」


先ほどの続き、、、あっ何故ポーションを渡したかについてか。


「これは私の仮説だけれど、ルイドス君の火傷を負った理由、、、あれは嘘だと思ったの」

「う、嘘ですか?何故その様なことを?」


ルイドスは確か、魔術の練習でとか言ってたよな。

何か隠さないといけないことでもあったのだろうか。


「実は、あの火傷を見て思ったの。あれは誰かにやられたんじゃないのかなって。あの火傷ね黒い炭のようなものがこびりついていたの」

「黒い炭ですか?僕にはあまり見えませんでした」

「結構薄くなっていたからね、あれは魔術の練習でなる火傷の後では無いし、仮にルイドス君自身が他の事で火傷していたなら嘘を付く必要もないと思うの」


確かに、仮に魔術の練習以外で火傷を負えばそれを説明すればよかったものを、あえて魔術の練習と言ったのは他に言えない何かがあった。

だとするとやはり母の言う通り誰かにやられた、あの場面で嘘を付いた、あの場面で誰かを守ろうとした?

いやいや、ルイドスが即興でそんなことが出来るのか?


「あの母親がやった、か」


それは兄からの言葉だった。


「お、お兄様、、、流石にそれはないのでは?」

「俺はあのスカラルト家がどんな家系なのかは、ヴィクターから良く聞いてる。自分達の為なら、自分の子を使ってでも容赦なくすると」


嘘だ。母親が実の息子に火傷をさせ、それを使って今回僕とルイドス間で起こった事を餌にここに来た。

そんな非常識なことはあってはならない。


「私も考えたくは無かったけれども、ルイドス君を治癒した時にあの子涙を流していたの。でもお母さんの事も好きなんだと思う。だから、嘘をついてお母さんを守ったのだと思う」

「それでまた何かあった時の為にポーションを渡したって事ですか、、。」

「そうよシエロ。でもこれはあくまで私たちの仮説だからね!いきなりルイドス君聞くんじゃないよ!」


もしこの仮説が正しければ、僕はあの親を許せない。

明日もう一度ルイドスに謝って様子を見てみよう。


「はい分かりましたお母様。ところでお兄様そのヴィクターさんは今どうされているのでしょうか?」

「ヴィクターか、いきなりどうしたんだ?」

「いえ、少し気になりまして、、、」


ヴィクターという兄がしっかり者であれば、ルイドスに何かあっても守れるんじゃないか?


「そうか。ヴィクターは俺と同じ都市魔術栄生学校の最高学年で今は学寮に住んでいる。それがどうかしたのか?」


学寮か。家には帰っていないという事か。

それにしても都市魔術栄生学校の最高学年で、特級魔術師ってステータス高すぎるだろ。

僕も頑張らないとな。


「いえ、ルイドスが兄は特級魔術師で優秀と聞いていましたので、、、」

「ルイドスを守れと?」

「いえ、、、そう言ってるわけではないのですが、、、その、、」

「まぁもうヴィクターは家に帰らないと思う。ヴィクターは世界を旅するらしいからな」


そうなのか、、、まぁ人の人生にとやかく言う必要はない。


「ところで、お兄様は学寮に通いはしないのですか?」

「実は、、、その事なんだけれど、、、お父様、お母様。俺も学寮に通いたいと思います」

「えっ!ソルいきなりどうしちゃったの??」

「お父さんは良いと思うぞー!」


母はいきなりの発言で少し戸惑っていたが、父は積極的だった。

兄のその顔は真剣だった。


「すみません突然のご報告で。学寮に通えばいつでも研究や魔術の練習もできます。俺も立派な魔術師になって、この国を守る使命を果たしたいのです!」

「ソルがそういう目標があるならいいんだけど、、、家がさみしくなっちゃうわ」

「大丈夫ですよお母様。月に1回は帰ってきますし手紙も週に一回は送ります。それにシエロが問題を起こした時は戻ってきますよ」


おいおい、少しかっこいい感じに言ってると思ったら、僕がまた問題を起こすだって??

はぁ兄はいつも一言が多い。

しかし兄がいなくなると誰も起こしてくれなくなるじゃないか、、、


「ところでソル。いつから学寮に?」

「はいお父様。来月の五月からと考えております。よろしいでしょうか?」

「ら、来月か。お父さん明日から山に籠らないとな!!」


父の冗談トークも踏まえ母も了承している。

なんやかんだでいつもの和気あいあいとした食卓に戻っていた。

食後はみんないつものルーティーンに戻り、夜を過ごした。


そして次の日の朝いつも通り、兄に起こされて支度し兄と馬車亭まで歩いて向かった。

馬車亭には、昨日同様にセリカが待っていた。


「シエロ、お前もうガールフレンドが出来たのか?」

「ち、違いますよお兄さま!!」

「そうかそうか。じゃ俺はあっちだからー」


くそ兄!いつも僕を馬鹿にして!!!


「おはようシエロ。なんだか朝から顔が赤いけど熱でもあるわけ?」

「こ、これは、、、熱いだけですよ!」

「あんた、、、なんか気持ち悪いるいわよ」


こうしてまた僕の波乱な一日が始まるのであった。

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