第一話 始まり
「おーい、早く起きろー」
「お前、このまま寝ていたら初日から寝坊遅刻魔クソ野郎っていうあだ名がつくぞ」
そう言いながら、僕の愛している布団をまくり上げられた。
朝日が顔に当たり、俺は目を覚ました。
因みに、今僕を起こしに来たのは、兄だ。
僕より歳が六個も離れているからって、いつも馬鹿にしてくる。
それに「クソ」とか余計なものが多いのだよ。それと「遅刻魔」って僕はいつから魔人になったんだよ。
僕はそんなことを思いながらベッドから起き上り、
二階から一階のリビングへと向かった。
「おはよう。シエロ。」
この美しい透き通った声。母だ。
「おはようございます。お母さま。」
「朝食、もう出来ているわよ」
僕はすぐさま椅子に座り、机の上に汲まれていた水を飲んだ。
「おいシエロ、今日から入学式だって言うのにのんびりし過ぎなのじゃないか」
そう言ってきたのが父だった。
僕は自信満々に、どや顔をしながら言ってやった。
「分かっていますよ。お父さま。僕だってもう六歳です。」
「昔の幼稚な僕ではありませんから」
父は僕を馬鹿にして笑っていた。
「はっはっはっはっ!そうかそうか、そりゃー良かった」
すると、階段の方から僕を本格的に馬鹿にする声が聞こえた。
僕はすぐにそれが誰だか分かっていた。
「俺が起こさなければ、寝坊大魔神になっていたやつが良く言えるな」
「僕だってちょうど起きようとした時にお兄さまが・・・」
「お兄さまが服が...」
僕が兄に向って言い訳を・・(ゴホン)説明をしようと兄を見た
すると兄は見たことのない制服を着ていた。
「これはただの服ではない、立派な制服だ。」
「それも、都市魔術栄生学校のな」
兄は自信満々に見せつけてきた。
それもそうだ、都市魔術栄生学校、それは誰もが知る魔術にたけた、エリート学校の一つだ。
「あら、ソルお似合いじゃないの。とても素敵だわ」
「ありがとうございます。お母さま」
兄は俺を馬鹿にしてくるが、ただの生意気な奴ではなかった。
学力も魔術も小さい時から優れていて、都市魔術栄生学校から推薦がきたのだ。
「ソルはもう十二歳で都市魔術栄生学校の生徒か。お父さん嬉しいぞー」
父は兄に抱き寄り、気持ち悪いほど嬉しがっていた。
髭が兄の肌に擦れてとても痛そうだ。
「お父さま・・ありがとうございます。」
兄は頬を手で擦り、痛みを和らげていた。
「こーらお父さん。ソルが困っているでしょ」
「俺は嬉しんだよ。またこの家系から都市魔術栄生学校の生徒が生まれるのをよ」
そうだった、この見た目は一見どこにでもいそう中年男性だが、父もまた
都市魔術栄生学校の卒業生だった。
しかし、今の父は森に魔獣を狩りに行き、夕方にはお酒を飲み、気づいたらソファーでよだれを垂らして寝ている。
魔獣といってもいつも持ち帰ってくるのは、小さな鳥や魚とたまーにどうやって倒したか分からない大きな猪を背負って帰ってくる。
ま、この間は森から帰ってきたと思ったら大量のお酒を顔を赤くしながら持ち帰ってきて、母にこれまでかと言わんばかりに怒られていた。
そんな父だが、森に行かない日は主に兄と魔術や体術の特訓。
僕には森にどんな生き物が居るのかなど教えてくれていた。
「後は、シエロが都市魔術栄生学校に入学できれば、アルランド家全員が入学することになるな。」
父がそう話した。
そう、僕の家系は父も兄もそして先祖代々、都市魔術栄生学校出身らしい。
母は父と出会った時はすでに別の学校の出身だったらしく、免除されている。
僕も、僕だけが入学できない恥ずかしい流れはだけは避けたい。
「はい!お父さまやお兄さまのように立派な人間になります」
俺も都市魔術栄生学校に行く。そう決意した。
「まずは朝一人で起きるところからだな」
兄の言う事は事実過ぎて反論はできなかった。
悔しいが確かに今まで一人で起きたことが指で数えれる程度だった。
「シエロは、これから魔術や学問を学ぶのだから心配しなくても大丈夫よ。」
「きっと立派な男の子になりますよ!」
母上―。母はいつも優しい。後美人。
母は兄が学校に通い、父が出かけている時いつも僕に魔術の本を読んでくれたり、薬草学の本を見せてくれていた。
母は薬草学出身らしく、いつも父が森から採取してきた薬草や。庭で栽培している薬草などを調合したり、料理にも使用しているとか。
おかげでいつも怪我をしても大抵は母がすぐに治してくれた。
まぁ正直どんな薬草があるのかなどは少し分かってきたが、薬草学の本は難しく理解に苦しんでいる。
「はい!ありがとうございます。お母さま。精一杯頑張ってきます。」
そして朝食を食べ終わり、僕も指定の制服へと着替えた。
少し大きいかと思っていたが、着てみるとジャストにフィットだった。
まだ僕は知らなかったけれど、裾や袖に縫い目があり長さが調整されていた。
父も母も制服を着た僕を沢山褒めてくれた。
「よく似合ってるじゃないかーシエロ!」
「昔の父さんを見てるみたいだ!」
「あら、昔のもっとイケてる男に戻る気になったかしら」
母の鋭い視線が父にささる。
父は何か言いたそうだったっが、今の母の前で言葉を発せずにいた。
正直父に似ているは嬉しくは無かった。
そうして、僕と兄は学校に向かう為に家から出た。
兄とは途中の馬車亭まで一緒に歩いた。
僕は、初めて学校で魔術を学ぶことへの不安を抱えていたのか、真剣な表情で質問をした。
「ところで、お兄さま。一つ質問はよろしいでしょうか。」
「なんだ?」
「そ、そのお兄さまは魔術を学校で習う以前から、家でお父さまと練習などをされ、魔術や体術について経験をされておられましたが、やはり学校に来られる皆さんも既に魔術はある程度使えるのでしょうか?」
兄は直ぐに答えた。
「面白い質問だな」
「まぁほとんどが初級魔術は使える。中には中級魔術をすでに使いこなせるやつもいるかもな」
さらに兄は立て続けに答えた。
「魔術自体は基本シエロの歳六歳になって初めて学び、使用が認められている。基本六歳以下の子供の魔術は禁止されている。なぜだか分かるか?」
家で母に何度か聞いたことも、ありすぐに答えれた。
「はい!大昔、四歳くらいの女の子が悪い魔術を他人にかけて多くの人が亡くなった事件が在ったと父上から聞いております。」
しかし、僕は少し疑問に思った。
「しかし、四歳の女の子に悪い魔術が使えるのでしょうか?またなぜ直ぐに止められなかったのでしょうか?」
兄は少しニヤリとした。
「いい質問だ。シロエが言った事は間違ってはいない。諸説あるが、この少女は生まれつき魔女の子だった。または誰かにわざとその魔術を覚えさせられ、四歳の女の子はその魔術の善悪理解せずに使用してしまった、か。」
「本当の事は俺にも分からん」
なるほど、確かに四歳の子が善悪分からず使ってしまうのはあり得ることだ。
だからある程度知能が付いた六歳からっていうルールが付いたのか。
「ところで・・・」
僕が兄に話しかけようとした時、兄から答えてくれた。
「なぜ六歳も満たせていないのに、親は俺たちに魔術を教えていたかだろ?」
俺は真剣な表情で話を聞いた。
「それは、もしもの時の自己防衛の為ともあるがほとんどが、魔術にたけたエリート学校に入学させるためだ。」
「その為に早い段階から魔術を覚えさせ、入学したときには周りより頭抜けて優秀な成績。そしてエリート学校に推薦を貰う。」
エリート学校。それはこの世界に四つ存在する「学力」「体術」そして「魔術」全ての才能がトップレベルに高い魔術学校。十二歳から十八歳まで通えるエリート学校だ。
その中でも最も優秀な魔術師を生んでいるのが、都市魔術栄生学校。
しかし僕は気になった。
何故そこまでしてエリート学校に入りたいのか。
別にエリート学校に行かなくても魔術は覚えれるし、学だって学べる。
兄は僕の質問攻めにも嫌な顔一つせず答えてくれた。
「何故皆さんはエリート学校を目指されるのでしょうか?」
「それは人それぞれだが多くの人は、優秀な魔術師になる為かな。」
「エリート学校と皆呼んでいるが、お金もあり、良い先生に、機材その他諸々が揃っているから皆凄い魔導士になれる!と思いエリート学校って呼ばれている。」
とてもシンプルな理由だった。
ただエリート学校に入ったからといって、簡単に良い魔術師になれるわけもなく、そもそも卒業も難しいとか。
「お父さまもやっぱりエリート学校に入学させるために、魔術を教えてくれたのでしょうか?」
「それが一番の理由だと思うが。後はたしか・・・」
兄が、少しひきつった顔をしていた。
「よーしソル魔術だ!魔術!強くなれば女子からモテモテだぞー」
「ま、とにかくシエロお前も良い魔術学校に入れるように頑張れ」
兄に様子が少しおかしかったけれど、
いつもよく僕を馬鹿にしてくるが、この時は褒めてくれた。
僕は(主に父)と母に魔術について兄の付き添いで教わっていただけで、本格的に学んだことがほぼ無い。
「僕はお兄さまが家で魔術の練習しているところを、見学かたまにお父さまに教わっていただけですけど大丈夫ですかね?」
兄は自信気に話した。
「そんな心配もすることないさ。学校に行けばシエロの魔術の扱いは凄いことにみんな気づくはずさ。」
僕はなぜ兄がそんなことを言って、また褒めてくれたのかは分からなかった。
恐らく、少しでも僕に自信をもって初日を迎えてほしかったのだと思う。
うん。そうだ。兄が二回も褒めるわけが無い。
兄の一言で馬車亭についていることに気が付いた。
「さぁ雑談も終わりだ、馬車亭に着いたぞ!」
そこは沢山の馬車が止まっており沢山の人たちが交差していた。
僕と兄はお互い学校の専用馬車があるので、ここでお別れだ。
「シエロ、頑張ってこいよ!」
朝の兄の発言が嘘のようだった。
「お兄さまありがとうございます。お兄さまこそ頑張ってください!」
兄は歩きながら何も言わず手を振って歩いて行った。
そして僕は自分が乗る馬車場まで向かった。
既にそこは多くの同じ制服の生徒で賑わっていた。
皆初日だからだろうか、一人でいる人が多い。
中にはすでに友達なのか複数人でいるグループもチラホラあった。
すると馬車亭のアナウンスが流れた。
「アルクナ魔導初等学舎 の馬車がまもなく到着します。生徒の皆様はお並びお待ちください。」
ついに来た!僕の初めての学校。アルクナ魔導初等学舎 !!
馬車は一台で最大十名まで乗れる。
僕は最後一台の馬車に乗った。
「まもなく最終、アルクナ魔導初等学舎 行き馬車出発します。」
その時だった、ホームから誰か走ってくるのが見えた。
かなりた息を切らせた声で、全速力でこちらに向かってくる。
「ちょっーーーーと待っっって――」
しかし、馬車の扉はその子を待たずに閉まろうとする。
その時、その子の身体に一瞬だけ何かが纏った。
「えっ」
僕がそんな空言を言っていると
黒髪の長い髪の子が、投げ槍のごとく僕に一直線に突っ込んできた 」
俺は気づいた時には遅かった。
「え、ええええ、えっあぁぁぁーーー」
彼女は激しく僕にぶつかりながら馬車に乗り込んだ。
しかし僕の額と彼女の額は大きく赤く腫れていた。
「っうー痛ってぇ――」
彼女はそういいながら起き上がり俺の顔を見てニヤリと笑った。
「へへっ」
意味が分からなかった。
「は、はい?」
(急に勢いよく乗り込んできて、挙句僕にぶつかってきて、わ、笑った?)
僕が声をかけようとした時だった。
「あ、あのー」
彼女の顔つきが、段々ニヤついた顔から、口の口角が下がりそして
「う、うっ、い、痛いよ――」
彼女は、溢れんばかりの涙を目に抱え、今にも大泣きしそうな顔でこっちを見てくる。
当たり前だった。あの勢いでぶつかればそりゃ痛いに決まっている。
因みに僕も当然痛い。勿論やせ我慢をしている。
なぜか今痛がると負けな気がしたからだ。
しかし僕もそこまで悪魔ではない、彼女の(僕のも)額を見ると可哀想になる。
僕は昔から、外でよく転んでいたから母に治癒魔術を教えて貰っていた。
治癒魔術といっても初級の魔術で、かすり傷程度を治せるくらいだ。
僕はその魔術をこの子にかける。
「サナ・・・」
僕は直ぐに止めた。
兄との会話を思い出した。
魔術は六歳になって初めて習い使用が認められている。今使えば何故使えるのかバレたら終わりだからだ。
しかし、皆六歳なるまでに家で魔術を教わる暗黙の了解がある。
それに、この子だって先ほど身体に何かを纏って僕にぶつかってきた。
あれは完全に魔術だった。
僕も正直このまま赤く腫れたまま、初日を迎えるのは嫌だった。
「癒しの涙サナティオ・ミノル」
僕は僕と彼女の額に、誰にもばれないように治癒魔術をかけた。
赤く傷ついた額は、赤みを引き痛みと腫れを治した。
ふぅー。何気に人に治癒魔術をかけたのは初めてだった。
成功して良かった!
彼女は驚きを隠せなないような大きな声で話した。
「あんた、魔術を。」
「あんた今魔術を!」
僕は直ぐに彼女の口を手でふさぎ込んだ。
「ちょ、ちょっと静かにしてくださいよ!」
すると、馬車内のスピーカーからアナウンスが流れた。それも僕たちに向けて言われていることがすぐに分かった。
「馬車内での迷惑行為は禁止されています。安全運行のため、お静かにご乗車ください。」
御者から注意を受けた。
僕たちは一度落ち着き座りなおした。
彼女は、興味津々で話を続けた。
「あんたも魔術をすでに扱えるのね!」
僕は彼女に対して、小さく話すように注意し話を続けた。
「もう少し声を小さくして下さい!」
「って、あんたもって、やはりあなたの先ほどの・・・」
彼女はお利口なのかすぐに声を少し小さくして話した。
「よく気づいたわね。そうよ魔術を使ったの!」
「で、でもね使わないと乗り遅れちゃうから仕方ないの!」
「初日から遅刻なんてしたら、パパとママに怒られちゃうわ」
まぁ初日から遅刻なんてしたら、遅刻魔クソ野郎なんて呼ばれるかもだしな・・・
しかし、先ほどの魔術は何だろう。
父が使っているところは見たことがない。
身体強化系なのか?
僕がそんなことを考えていると、彼女の自己紹介が始まった。
「私の名前はセリカ・マーガレットよ!セリカでいいわ!」
セリカ・マーガレット...マーガレット家どこかで聞いたことのあるような。
「セリカさんですね。」
「申し遅れました。僕はシエロ・アルランドと申します。」
「シエロね。先ほどはありがとう!これからよろしくね!」
わーお。正直『ママ・パパ』呼びからお嬢様系だと思っていたけれど、案外フレンドリーなのかもしれない。
「こちらこそよろしくお願いします。セリカさん」
「わざわざ「さん」つけなくても良いわよ。私の傷も治してくれたんだから!」
傷を治していなければ恐らく『さん』付けは義務だったな。今の言葉は撤回しておこう。。。
しかし!しかしだ!いきなりお友達が出来たぞー!これは幸先いいのでは。
そんなこんなで、揺られていると遂に到着した。
「お待たせいたしました。まもなく到着いたします。アルクナ魔導初等学舎前。」
ついに来たアルクナ魔導初等学舎!
ここで沢山のお友達を作って、色んな魔術を学んで父や兄の様に立派な魔術師になるのだ!
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